◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

今日の秀句/11月21日~30日

2020-11-22 14:28:23 | Weblog
11月30日(1句)

★輝きをたっぷりつけて万両は/多田有花
寒さが増してくると、万両の実が赤くつやつやとしてくる。年の暮れから雪がちらちらするときにも赤い実は健在だ。「輝きをたっぷりつけて」は上手い。(高橋正子)

11月29日(2句)

★京の寺踏みし落葉は紅重ね/廣田洋一
京都の数ある寺も落葉が降り積もるとき。降り積もった落葉を足元に踏み、気づくと落葉は紅色を重ねている。散ってなお幾重にも紅の色が美しい落葉だ。(高橋正子)

★癌病みし人に紅芯大根やる/古田敬二
紅芯大根は、大根の中が紅色で、サラダや甘酢漬けで食べられることが多いようだ。華やかな紅色は野菜の中でひときわ目立つ。癌を病んだ人は、何かと沈みがちだが、紅色に元気がでるだろう。「やる」が武骨だが、それだけに優しさが伝わる。(高橋正子)

11月28日(1句)

★冬日さす棚田を辿り路線バス/桑本栄太郎
路線バスが棚田を辿って走る路線バス。路線バスとはいいながら、冬日が暖かくさす棚田の小さな旅をさせてくれる。(高橋正子)

11月27日(1句)

★冬星の繋がり見ゆる夜空かな/桑本栄太郎
冬空に星を見ていると、星が繋がってくる。冬の星座があきらかになってくる。塵を吹き払われた冬の夜空はいつまでも見ていたい。(高橋正子)

11月26日(1句)
 
★草虱避けて清水を汲みにけり/古田敬二
草虱はせり科の植物で、藪虱の異称。衣類や猫、犬などにもくっつきやすい。水際だけいに草虱もよく茂っているのだろうから、そこは慎重に避けて、清水を汲んだ。(高橋正子)

11月25日(1句) 

★短日を惜しみて遊ぶ子らの声/多田有花
子供たちは外遊びが好きだ。日が短くなって日暮れの影が迫ってきても夢中で遊んでいる。大人から見れば、「短日を惜しむ」感じだ。(高橋正子)

11月24日(1句)

★散るほどにまた山茶花の咲き始め/多田有花
山茶花は咲き始めてほどなく散るが、散れば散る分だけ花を咲かせている。冬の間元気に花をつけてくれ、寒さに縮かむ人間まで元気づけてくれる。(高橋正子)

11月23日(2句)

★木道のその奥荒れし冬野かな/小口泰與
木道は人が歩いたり、散策できるように、湿地などに渡されている。あたりの植物や昆虫などを楽しめたりする。冬が来れば、木道のその奥は荒れた野となり寒々と広がる。木道を境の荒れように自然の意を見る。(高橋正子)

★裸木となりて隈なく日差し浴ぶ/多田有花
木々が葉をすっかり落とし裸木となると、日差しが枝や幹に隈なく当たる。日差しを受けた枝や幹は輝いて眩しいほどだ。裸身となった木がのびのびと健やかに見える。(高橋正子)

11月22日(1句)

★冬霧や貨物列車の大曲/小口泰與
貨物列車はたくさんの貨車を引く連れて延々と走っている。冬霧に閉ざされたなかを貨車が弧を描いて大きく曲がる。その曲線の美しさには、見惚れる。冬霧が景色を陰影深くしている。(高橋正子)

11月21日(1句)

★冬日背の吾が影長き入日かな/桑本栄太郎
冬日を背に歩く道、自分の影の長さに気づく。入日に照らし出されたわが身への愛おしみ、いや哀愁か。冬の入日なればこそ。(高橋正子)
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7 コメント

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御礼 (小口泰與)
2020-11-24 13:10:07
高橋信之先生、正子先生
11月22日の投句「冬霧」の句と11月23日の投句「冬野」の句をそれぞれの日の秀句にお取り上げ頂き、その上、正子先生にはうれしい句評を賜り厚く感謝申し上げます。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
有難う御座います。
お礼 (多田有花)
2020-11-24 14:16:06
信之先生、正子先生
「裸木となりて隈なく日差し浴ぶ」を11月23日の
秀句にお選びいただきありがとうございます。
まだ色づいた葉が枝に残っている木々もありますが、
桜の仲間は落葉を終えました。
落葉広葉樹の中では最も落葉が早いのが桜だと思います。
御礼 (桑本栄太郎)
2020-11-24 18:07:02
高橋信之先生、正子先生
11月21日の今日の秀句に「冬日背の吾影長き入日かな」の句をお選び頂き、うれしいご句評も頂戴しまして大変有難うございます!!。
午後も夕刻近くになってより、散策に出かけました。勿論俳句メモ帳を持参の上、句材を探しながらです。とある舗道に差し掛かり、自分の黒くて長い影が歩いていることの気づきました。意外なことに自分の長い影は哀愁を帯びていることに気づきました。
御礼 (桑本栄太郎)
2020-11-29 18:03:33
高橋信之先生、正子先生
11月27日の今日の秀句に「冬星の繋がり見ゆる夜空かな」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
朝夕は風も良く吹くせいでしようか?夜空の冬星が綺麗に瞬くようになりました。子供のころより「あれが北斗七星だ」などと言い合い眺めていた事を想い出します。
又、11月28日の今日の秀句に「冬日さす棚田を辿り路線バス」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います。
近在の洛西の田園をいまでも良く散策していますが、洛西はなだらかな丘となって居り、田んぼも棚田の状態となっております。路線バスがその棚田を辿り縫うように走っています。
お礼 (多田有花)
2020-11-29 19:59:42
信之先生、正子先生
「散るほどにまた山茶花の咲き始め」を11月24日の
「短日を惜しみて遊ぶ子らの声」を11月25日の
それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。

夕暮れ時がもっとも早い時期に入ってきました。
午後からはあっという間に日が暮れる印象です。
花の姿も減ってきますが、山茶花はその中で続々と花を咲かせて
目を楽しませてくれます。
御礼 (廣田洋一)
2020-11-30 10:59:53
高橋信之先生
   正子先生
11月29日の「京の寺踏みし落葉は紅重ね」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
お礼 (多田有花)
2020-12-06 18:54:38
信之先生、正子先生
「輝きをたっぷりつけて万両は」を11月30日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
赤い実をつけた植物が目立つ季節になってきました。
万両はぎっしりと実をつけ、日差しをつやつやと反射して美しいです。

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