◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

今日の秀句/3月21日~31日

2019-03-26 10:11:44 | Weblog

3月31日(2句)

★青空やほどけそめたる牡丹の芽/小口泰與
青空と紅の牡丹の芽の色の対比が鮮やかで、生き生きとしている。(高橋正子)

★ライトアップの用意整う花三分/桑本栄太郎
桜が三分咲き。すでにライトアップの用意が整って、満開の時を待つばかり。桜の初初しさが詠まれている。(高橋正子)

3月30日(1句)

★春光や舳先の分ける波頭/小口泰與
船の舳先に立って進む先を見ていると、面白いように水を分けてきらきらと波頭が生れる。春の光があふれている。(高橋正子)

3月29日(2句)

★本堂の甍間近く花馬酔木/多田有花
馬酔木の花は古き大和思わすような雰囲気がある。本堂の甍の鈍色に馬酔木の花がしっとりと似合ている。(高橋正子)

★やや高き音をなびかせ木の芽風/川名ますみ
木の芽風。あまり強い風でもなく、そよ風でもない。やや高き音なのだ。その音が木の芽が芽吹く季節の風をよく表している。音に敏感な耳である。(高橋正子)

3月28日(2句)

★苗札のひらがなばかりあどけなし/廣田洋一
苗札に書かれた名前がひらかなばかり。ほほえましく、あどけなく思う。さぞ可愛らしい花が咲くであろうと。(高橋正子)

★護摩堂に早も躑躅の咲きにけり/多田有花
躑躅というのは、強烈な色で、自身がひたすら燃えているようにも思える。躑躅が早やも咲き護摩堂を彩っている。力強い句だ。(高橋正子)

3月27日(3句)

★朝日いま峰の桜を輝かす/多田有花
朝日と桜。命が触れ合うような取り合わせだが、峰の桜であるので、桜も朝日も落ち着いて清々しい。(高橋正子)

★初蝶来狭庭に光まき散らし/廣田洋一
初蝶が小さな庭にも来た。ひらひらとしばらくは、光をまき散らすように飛んだ。なんと可憐な、初々しい蝶だこと。(高橋正子)

★さまざまの木の芽集めて空青し/川名ますみ
さまざまな木の芽。いろどりどりの淡い緑。濃い緑。そんな木の芽の緑を集めて、青空はなんとすばらしいのだろう。(高橋正子)

3月26日(2句)

★鯵ヶ沢音頭教わる夜半の春/小口泰與
鯵ヶ沢音頭は、大変難しいと聞く。潤んだ春の夜半、練習の鯵ヶ沢音頭が響く。(高橋正子)

★シリウスの海の彼方や誓子の忌/桑本栄太郎
山口誓子の句と風貌を思い起こせば、それは、シリウスに通じるかと思う。(高橋正子)

3月25日(2句)

★野鳥来て河津桜を囃しけり/小口泰與
他の桜に先駆けてさく少し色の濃い河津桜。野鳥が来て、鵯でもあろうか、鳴いて桜を囃し立てている。ともに春を謳歌だ。(高橋正子)

★煤出しの瓦民家や風光る/桑本栄太郎
民家の屋根に煤出しの瓦がある。その瓦を光らせて風が渡る。風は寒いが、明るいひかりがうれしい頃だ。(高橋正子)

3月24日(1句)

★山桜咲き初めたるにこの寒さ/多田有花
山桜が咲き初めた。いよいよ花の季節だと喜んだのもつかの間。この寒さだ。花がかわいそうであるが、春は確かに来ている。(高橋正子)

3月23日(3句)

★街音の遠くに聞こえ躑躅咲く/古田敬二
ここに躑躅が咲き、街の音が遠くに聞こえる。躑躅は躑躅、街は街というような距離感がある。(高橋正子)

★早蕨に入山規制ありにけり/小口泰與
早蕨という、やわらかで、風趣のあるもの。それを採りに山へ入りたいが、入山規制がある。なんとも。(高橋正子)

★離れ屋のピアノ練習白木蓮/桑本栄太郎
白木蓮が咲いている離れ屋。そこからピアノを練習する音が聞こえる。温かみのある句だ。(高橋正子)

3月22日(3句)

★朧夜を飛び行く二機のヘリコプター/多田有花
朧夜の風情を破るように二機のヘリコプターが飛んで行くが、そのヘリコプターの朧夜の景となっていく。そこが面白い。(高橋正子)

★青空にしみじみ白き辛夷かな/廣田洋一
目に痛いほどの青空に辛夷を見上げる。すこし哀しみを含んだ辛夷は、はやりしみじみと見られる花なのであろう。上手な句だ。(高橋正子)

★倒木の透けて見えたり春の沼/桑本栄太郎
自然体で詠まれた写生句であるが、春の沼の静けさ、うごめき出すもの、森の景色など、ぞっとするほどリアルな自然を感じる。(高橋正子)

3月21日(2句)

★草の芽や気球競技の終りける/小口泰與
色とりどりの気球が空に上がり、にぎやかだった空も静かになった。気球競技のあった広場が、やけに広い。よく見れば草の芽がさまざま芽を出している。空と、地面の草の芽を大きく捉えて詠んだのがいい。(高橋正子)

★一尺も丈余も芽吹き始めけり/古田敬二
一尺の木も丈余の木も同時に芽吹き始めた。季節が来れば、小さい木も大きい木も同じ命の木なのだ。(高橋正子)
コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3月21日~31日 | トップ | 自由な投句箱/3月21日~3... »

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御礼 (小口泰與)
2019-04-01 09:23:07
高橋信之先生、正子先生
3月21日の投句「草の芽」の句、3月24日の投句「早蕨」の句、3月25日の投句「河津櫻」の句、3月26日の投句「夜半の春」の句、3月30日の「春光」の句、3月31日の「牡丹の芽」の句をそれぞれの日の秀句にお取り上げいただき、その上、正子先生にはうれしい句評をたまわり有難う御座いました。
今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
お礼 (多田有花)
2019-04-01 11:09:49
信之先生、正子先生

「陽を受けてただひたすらに白き梅」を3月19日の
「朧夜を飛び行く二機のヘリコプター」を3月22日の
「山桜咲き初めたるにこの寒さ」を3月24日の
「朝日いま峰の桜を輝かす」を3月27日の
「護摩堂に早も躑躅の咲きにけり」を3月28日の
「本堂の甍間近く花馬酔木」を3月30日の
それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。

梅から桜へと花の主役が移って行く時期です。
しかし、天候が安定せず、思わぬ寒さが
ぶりかえしたりもします。
どうぞ、ご自愛くださいますように。
Unknown (廣田洋一)
2019-04-01 14:54:48
御礼
いつも懇切にご指導頂き有り難う御座います。
3月22日の投句「青空にしみじみ白き辛夷かな」、3月27日の投句「初蝶来狭庭に光撒き散らし」及び3月28日の投句「苗札のひらがなばかりあどけなし」を秀句にお選びいただき、その上正子先生には素晴らしい句評を賜り、誠に有り難う御座います。今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。
御礼 (桑本栄太郎)
2019-04-01 19:33:27
高橋信之先生、正子先生
3月22日の秀句に
「倒木の透けて見えたり春の沼」
3月23日の
「離れ屋のピアノ練習白木蓮」
3月25日の
「煤出しの瓦民家や風光る」
3月26日の
「シリウスの海の彼方や誓子の忌」
3月31日の
「ライトアップの用意整う花三分」
のそれぞれ秀句にお選び頂き、嬉しいコメントも頂戴しまして大変有難う御座います。
暖かくなり毎日、散歩ウォーキングを行っていますが、日毎に色々な変化がある時季となりました。
お礼 (川名ますみ)
2019-04-26 01:06:39
信之先生、正子先生、いつもあたたかいお導きをありがとうございます。
拙句「さまざまの木の芽集めて空青し」「やや高き音をなびかせ木の芽風」に、選とご講評を賜りまして嬉しく存じます。木の芽の季節は大好きです。お優しいコメントに感謝いたします。少し体調を崩しておりましたが、俳句のおかげで季節の歓びを逃さずに過ごせます。おかげ様で幸せです。

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事