◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

12月11日~20日

2019-12-16 14:53:15 | Weblog

12月20日(4名)

小口泰與
白鳥や沼へ一筋差す夕日★★★
細やかな風の中なる冬至梅★★★★
室咲や祝辞短きほど良かれ★★★

多田有花
冬の薔薇ぽつぽつ人無き薔薇園に★★★
桜枯れ枝すみずみまで陽を浴びる★★★★
桜が枯れて葉がすっかりなくなった。おかげで、枝や幹のすみずみまで陽が届く。枝や幹の樹皮がつやつやしている。(高橋正子)

冬至にと柚子をたっぷりいただきぬ★★★★

廣田洋一
裸木の枝のびのびと昼の月★★★★
裸木となって、枝ぶりがすっかり見えるようになった。葉を付けていた時より、枝はのびのびを昼月の浮かぶ空へ枝を伸ばしているのだ。枝、空、月が配されて、すっきりとした句だ。(高橋正子)

ゲートボール音高く打つ枯木の園★★★
裸木の欅の幹の太きこと★★★

桑本栄太郎
綿虫の翅を確かに見たりけり★★★
来て見れば銀杏枯木やバス通り★★★★
このあたりまでしばらく来なかったが、来てみると、バス通りの銀杏は葉をすっかり落とし、枯木となって立っている。しばらく来なかったことも、季節が進んだことも思い起こさせられるのだ。(高橋正子)

冴え冴えと白き実ありぬ川辺かな★★★

12月19日(4名)

小口泰與
跼る布団の中や真夜の風★★★
畦道の犬を一瞥寒鴉★★★
水鳥や入日ひと筋沼囃す★★★★

多田有花
仲冬の頂に響く鐘の音★★★
枯れてゆく葉に真っ青な空があり★★★★
枯れてゆく葉の色は、褪せた赤い色、緑がかった黄色、朽葉色、枯れそのままの色。どれもいい色。そんな葉には真っ青な空がよく似合う。(高橋正子)

落葉す落羽松の並木道★★★

桑本栄太郎
山膚の赤く凍て居り天王山★★★
嶺の端の明るくなりぬしぐれ止む★★★
枯蘆の白く傾げる中州かな★★★

上島祥子
足場組み越南語響く冬の朝★★★
配送を待つ歳暮倉庫に積み上がる★★★

冬暁や赤光を灯す給湯器★★★★
冬の暁、まだ暗いときに起き出した作者。給湯器には、注意を呼ぶような赤い光がついている。寒く暗いなかに光る赤光に気持ちが引き締まる。冬暁に起きて朝食の準備をする作者の姿が浮かぶ。(高橋正子)

12月18日(4名)

小口泰與
風の無き冬夕焼けの雲と山★★★
新聞紙に包み大根を差し上げし★★★★
引き抜いてすぐの大根だろうか。土がついていれば汚れかねない。洗ったものでも何かに包んで差し上げたい。そのとき、新聞紙が格好のものとなる。あたたかい気持ちがさりげなく伝わる。(高橋正子)

岩ひとつ堰きて綾なす冬の利根川(とね)★★★

多田有花
落葉中地蔵立ちたり六丁峠★★★★
銀杏見上ぐ銀杏落葉に寝転んで★★★
山頂から裏六甲の冬景色★★★

桑本栄太郎
枯蘆の白く傾げる中州かな★★★
生垣の剪られ山茶花のぞきけり★★★
午後四時の高層棟や冬暮色★★★★

川名ますみ
初雪よ嬉しいでしょう三回忌★★★★
母の三回忌がめぐり来て、初雪が降った。亡くなった母に「初雪よ、嬉しいでしょう」と話しかけた。初雪がうれしいのは、もちろん作者。初雪に寄せて三回忌が美しく昇華された。(高橋正子)

青空に黄を揺らしけり冬の蝶★★★★
冬びより鳩の後ゆく車椅子★★★

12月17日(4名)

小口泰與
支流より枯葉利根川(とね)へと急きにけり★★★
夕映えに映ゆる野川や冬の鷺★★★
畑ごとの霜の濃淡朝日かな★★★★
霜の降り具合が畑の条件によって、それぞれ違っている。強く真っ白に霜の降りている畑もあれば、うっすらと降りた畑もある。朝日が差すとその濃淡がはっきりと浮き上がってくる。写真に収めたいような景色だ。(高橋正子)

廣田洋一
セーターの毛玉を摘みて切りもなし★★★
セーターの袖口少しゆるみをり★★★
冬帽子編んであげると言われけり★★★★

多田有花
山に向かう冬の苺を頬張って★★★
気球二機なかぞらを行く十二月★★★★
十二月の空のうららかさを読んだ句。歳晩の忙しさのなかで、ゆったりとなかぞらを行く気球を見ると、時もゆるやかに進むようだ。(高橋正子)

石段と落葉を踏んで山頂へ★★★

桑本栄太郎
はらはらと木の葉舞い散る風一陣★★★
菜園の畝立てらるる冬日かな★★★★
しでもみじ落葉散り敷く昇降機★★★

12月16日(4名)

小口泰與
仏僧の落葉で描く達磨かな★★★
落葉にて赤城山(あかぎ)を描く僧徒かな★★★
寺僧の霊入魂落葉の絵★★★

廣田洋一
事始めまず神棚を浄めけり★★★
事始めコーヒーメーカー新たにす★★★

カラカラと鐘を鳴らして飾り売り★★★★
12月も半ばを過ぎると、年用意の品々が店頭を飾るようになる。昔ながらに境内や道筋の露店で飾りを売るのを見ることはほとんどなくなった昨今である。今も、鐘をカラカラ鳴らして売る飾り売りもいて、正月を迎える風物詩をして、楽しいものだと思う。(高橋正子)

多田有花
シダーローズ拾いし冬の散歩道★★★★
桜枯れただ青空に身をまかす★★★
冬の月いま山の端にかかりおり★★★

桑本栄太郎
医科大を囲む落葉松冬もみじ★★★★
綿虫の確かに翅の煌めける★★★
生駒嶺のうねり遥かに冬ぬくし★★★

12月15日(4名)

小口泰與
寒雷にすは逃げ場なき小犬かな★★★
寒星を統べし大神とおもいけり★★★★
せぐくまる寝床の中や虎落笛★★★

廣田洋一
冴え冴えと光放てる朝の月★★★
木陰をば明るくしたる実万両★★★★
万両は千両と違い日当たりを好むが、築山など木陰にあることもよくある。万両が実を付けると緑に赤が映えて、田有賀明るくなる。自然体で詠んでいるのが好ましい。(高橋正子)

古き家の庭に艶やか実万両★★★

多田有花
冬紅葉まだ赤々とわれを待つ★★★
裸木となりし公孫樹を仰ぎ見る★★★★
金色の葉を付けた公孫樹も素晴らしいが、葉をすっかり落とし裸木となった姿も、すっきりと天に伸びて魅力ある姿だ。下から仰ぎ見るとなおさら、公孫樹は天に伸び行く感が強まる。(高橋正子)
金色の落葉たっぷり大公孫樹★★★

桑本栄太郎
生駒嶺のゆるきうねりや冬ぬくし★★★
一二枚残すばかりや冬紅葉★★★
医科大を囲む銀杏の冬木かな★★★★

12月14日(5名)

石蕗の花続く路杖の父(原句)
石蕗の花の続く路なり杖の父★★★★(正子添削)

冬灯し自転車下校夜学生(原句)
冬灯し自転車下校の夜学生★★★★(正子添削)

球根の鉢は猫の来ぬ位置に★★★

廣田洋一
嚏して慌てて出せるハンカチかな★★★
露天湯の湯気の中より大嚏★★★★
はつはつはとモーションつけて大嚏★★★

小口泰與
火の山の裾廻溶岩道枯すすき★★★
凄まじき一筋の風寒の滝★★★★
冬ばらの咲かずすなおに首傾げ★★★

多田有花
冬ぬくし頂に赤き実の見ゆる★★★★
満月の隈なきを見る師走かな★★★
誘われて新しき道冬うらら★★★

桑本栄太郎
金の鈴つけた猫なり日向ぼこ★★★★
川べりの風の通りや枯尾花★★★
堰水の落つや飛沫の冴え冴えと★★★

12月13日(4名)

廣田洋一
ところどころビルが消えたる冬霞★★★
観音の頭の浮かぶ冬霞★★★
富士の峯ふわりと浮かべ冬霞★★★★

小口泰與
帰り来て炬燵に丸寝致しけり★★★
凄まじき仏間の柱黒光り★★★
雨音をすずろに聞けり置炬燵★★★★

多田有花
ひとり来て頂に会う帰り花★★★★
ひとり登って来た頂。頂は暖かいせいか、帰り花が咲いて迎えてくれた。帰り花は、にっこりと頬をほころばせるように咲き、暖かく迎えてくれたのだ。(高橋正子)

ピラカンサ小春日和の修道院★★★
葉を透かし陽は万両の実に届く★★★★

桑本栄太郎
葉牡丹の渦の淡きや花舗の朝★★★
綿虫の影に日向に寄りそいぬ★★★

日の落つや書斎忽ち冷え来たり★★★★
日が落ちると、たちまちに冷えてくる。火の気も人気のないような書斎は特に冷えてくる。人がいたとしても、冷えは格段にはやく押し寄せてくるのだ。(高橋正子)

12月12日(4名)

小口泰與
冬鷺や石のあふるる利根川原★★★
枯枝に寄り添う二羽の雀かな★★★★
まるまると炬燵に入りて高鼾★★★

桑本栄太郎
しぐるるや鉄塔嶺に天王山★★★
葎枯るグランドネットの襤褸かな★★★
見下ろせば眼下緋色や冬紅葉★★★★

多田有花
一枚の落葉リュックへと入りぬ★★★

人声やすぐに焚火の香の流る★★★★
何気なく歩いてゆくと人声が耳に入る。そう思うと、すぐに焚火をする匂いがしてくる。話声の人たちが焚火を囲んでいたとすぐにわかるが、人と焚火はに懐かしいつながりがある。それを感じさせてくれる句だ。(高橋正子)

落葉積もる藩主の墓の石段に★★★

12月11日(4名)

小口泰與
白壁を背に見る湖や日向ぼこ★★★
野兎の毛皮あります峠茶屋★★★★
寒禽やケートボールの打球音★★★

廣田洋一
青き皿透き通りたる河豚刺身(原句)
河豚刺身青き皿の透き通り★★★★(正子添削)
薄くそいだ河豚の身を花のように皿に並べてある河豚刺し。身を透いて皿の青い色が美しく見える。目に美しい河豚刺身である。(高橋正子)

河豚有りと提灯吊りし割烹店★★★
水槽の河豚生き生きと歌舞伎町★★★

多田有花
冬紅葉冬の大地に寝転んで★★★
風吹くよ残る紅葉を惜しみつつ★★★★
山なみの重なりあいて冬うらら★★★

桑本栄太郎
枯尾花水の干上がる桂川★★★
白きもの微かに落つや冬の京★★★★
猛り鳴き樹間つらぬく冬の鵯★★★
コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自由な投句箱/12月1日~10日 | トップ | 今日の秀句/12月11日~2... »

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御礼 (廣田洋一)
2019-12-13 13:42:02
高橋正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
12月11日の投句「青き皿透き通りたる河豚刺身」を
「 河豚刺身青き皿の透き通り」と添削頂き有難うございます。
中六の字足らずが気にならないほどリズムが良くなりました。今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
お礼 (上島祥子)
2019-12-15 15:32:03
伸之先生 正子先生
14日の投句に添削と星のご指導有り難うございましたあ。
お礼 (上島祥子)
2019-12-22 23:17:57
伸之先生 正子先生
19日の投句に星の御指導有り難うございました。

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事