冬の日の武蔵野の ゆるゆると続く小道に ただ独り来て 錦繍のなかに遊ぶ。 朱に染まった落葉や 焦げ茶色の枯れ葉 虫に食まれたかのような穴開きの病葉 などなどが、己の意志に関わらず、わらわらと地面に折り重なっている。 一歩足を運ぶと、かさっとした音が耳に届く。 ひととせの命を全うした葉たちの吐息であろうか。 また一歩足を運ぶと、ぱきっとした音が耳に届く。 小枝でも踏みしだいたか。 わずかな距離であっても、その音は決して一様ではない事を知る。 自然と寄り添うことでしか知ることの出来ない旋律。 そっと耳を傾け、いつまでも聴いていたいハーモニー。 我が家に帰り着く。 ふと、犬走りに視線を泳がせる。 この時期に、そぐわぬ色が目に飛び込んできた。 サクラタデの、今年最後であろう一花が、その身を横たえながら咲いていた。 ここだけに、春の色が取り残されている。 📷2021/12/5
ここだけに春の色が取り残されていた |