関東薬品・開発部恒例のボウリング大会のさなか、雑賀社長の息子俊夫が急死した。
微量の毒物を長期間服毒していたために引き起こされた心臓麻痺が死因とわかり、病院から七曲署に通報があった。
関東薬品では、研究用にその毒物を扱っており、開発部の人間しか立ち入ることのできない部屋から薬品が盗まれていたことが判明する。
また、俊夫の部屋からトランプのカードが貼られた意味深な手紙がみつかり、スコッチ(沖雅也)が調べると、そのカードには「愛の終わり」「死」という意味があることがわかり、俊夫が脅迫されていたと推測された。
ボウリングに参加していた同僚、雑賀家のお手伝いの女性など、俊夫に毒を飲ませる機会のあった者をしらみつぶしに調べ、そのなかで婚約者の澄子と、それ以前に付き合っていた泰子(片桐夕子)というふたりの女性に容疑が絞られた。
澄子の部屋で現像したまま未開封の写真の袋をみつけ、中から出てきた俊夫との写真を見ようともしていなかった彼女に不審を抱くスコッチ。
彼女の父親の会社が、この婚約を機に経営が持ち直したと知り、意にそわぬ婚約だったのではないかと睨む。
休暇をとり、旅に出ようとしていた澄子に任意同行を求めたスコッチは、取調室で淡々と彼女に問いかける。
「会社にはバスで通ってるんですって?」
「バスは好きですか?電車よりも好きですか?」
・・・不気味です。案の定、澄子も取調室で急に関係ないことを問われて戸惑う。
「答えてください。リンゴは好きですか?」
ミカンは? 犬は? 猫は? ネズミは?
しだいにせりあがる恐怖。
ゴキブリは?の問いに、大っ嫌いですと突っ伏し泣き出す澄子。
「そのゴキブリを手で握りつぶす男がいた」
そう、俊夫は人当たりも良く評判もいい男だったが、虫を素手で平気で殺すのだった。
澄子にはどうしてもそれが受け入れられなかった。
「いなくなればいいのに」そう思うほどになっていた。
澄子を追いつめるスコッチにそこはかとない狂気を感じて、自分が追及されているかのような怖さを感じました。
しかし、澄子は殺してはいなかった。それが分かった瞬間、スコッチの表情が急に憑き物が落ちたように弱々しくすら見え、「良い旅行をしてください」と時刻表を返す姿は、容疑者を追いつめる刑事の顔ではなく、ひとりの女性を傷つけたことに自分も傷ついてしまった男の顔でした。
澄子がシロだったことから、泰子に捜査の的が絞られる。
スコッチとドック(神田正輝)が泰子の隣人に聞き込みをしていると本人が帰ってきて、疑っているなら私に直接聞けばいいと部屋に通す。
本のあいだからトランプを見つけたスコッチに、手紙を送った証拠にはなるが、殺人の証拠にはならないと自信たっぷりに言い放つ泰子。
山さん(露口茂)は、泰子の同僚から、彼女が研究室の薬を盗む機会があったことを聞き出してきた。
あとは俊夫に毒をもった手口さえわかれば・・・。
スコッチは、ゴリさん(竜雷太)、ドック、スニーカーに協力をしてもらい、死亡当日の様子を再現。
ついに俊夫が投球前に指を舐める癖を利用し、ボールの穴に毒を仕込んでいたという推理にいきつく。
しかし証拠はない。スコッチは、ある仕掛けを用意しボウリング場で泰子に勝負を挑む。
婚約者の澄子と違って、泰子は自信満々で警察との駆け引きを楽しんですらいる印象。
そんな泰子もスコッチの巧みな揺さぶりに動揺し、とうとう自白に追い込まれる。
ボウリングのゲームと、捜査上の駆け引きがうまくリンクして、澄子の取り調べとはまた違った緊張感がありました。
いずれの勝負も、終わった後のスコッチはなんだか悲しそう。
冷静さ、激しさ、優しさ、悲しさ・・・スコッチがもっている複雑な要素がそれぞれ丁寧に描かれ、あらためて沖雅也の演技の懐の深さを堪能しました。
そんなお疲れ気味のスコッチを元気づけるため・・・では絶対ないと思うんですが、ドックがさきほどからやけに集中して何かを仕込んでます。
いや、あかんやろw しかもボスの机で!
生真面目なスニーカーがすかさずたしなめる。
スコッチは案外ノリノリで時計を玉に見立ててボウリング。
うしろで長さん(下川辰平)は楽しそうに笑ってる。
あれですね、俺天組はふざけてますねw
今ならネットで叩かれちゃったりするんでしょうか。
当時も眉を顰める人はいたんでしょう。
でも、ボス(石原裕次郎)が「バカもん!」と一喝することでそれらの批判を収められたんじゃないでしょうか。
やっぱりいろんな意味でボスは大きかったと思います。