上野駅でとある事件の容疑者である暴力団組員が現れるのを待っていた中林(青木義朗)と沢木(神田正輝)両刑事。
そこで偶然ガラの悪い男に絡まれている若い女性(吉村彩子)をみかけた沢木は、中林に断り女性を助けにいく。
女性に忠告し、ちょっとした言い合いになってしまった沢木。
その間に組員が若い男と一緒に現れ、中林が追いかけるのをみつけた沢木が合流したが、
若い男には逃げられ、組員はたまたま居合わせた四機捜・下條班が捕らえてしまう。
自分が持ち場を離れたばかりに容疑者の仲間を逃がしてしまい、責任を感じて自分の手で捕まえようと
いつになくカッカしている沢木に対し、「誰かさん(加納主任)に似てきた」とぼやく隊長(山内明)。
当の加納(杉良太郎)は、そんな沢木をたしなめつつも自分に似てきたと言われまんざらでもない様子。
目をかけている後輩が自分に似てきたというのは、先輩としては悪い気はしないでしょう。
そんなある日、沢木は加納班行きつけの小料理屋で、先日上野駅で助けた女性と再会した。
彼女は女将さんの姪っ子だった。女将の夫は元刑事で10年前に殉職していて、
その時の叔母の悲しみようを知る彼女は刑事の仕事が好きになれないという。
最初は反発しあっていたものの、翌日捜査の途中で店に立ち寄り非礼を詫びる沢木に彼女も好意をもち、
故郷に戻る前に沢木に会いに来る。
刑事を辞めようと思ったことはないと彼女に話す沢木ですが、#9で「刑事なんて辞めてやる~」と泣いていたことを
忘れたんでしょうか。
これからつきあいが始まりそうな良い雰囲気だったのに、数時間後まさか永遠の別れがくるなんて。
上野で組員から裏金を預かった若い男がそれを着服し、そのために恋人を連れ去られてしまう。
その恋人のアパートに踏み込み男から事情を聞いた沢木は、四機捜に連絡を入れ、男とともに彼女が捕らえられている工場へ急ぐ。
制止も聞かず男が飛び出して行ってしまい、やむなく追いかける沢木。
あっというまにヤクザに囲まれ、拳銃を抜いたところを後ろから撃たれる。
2発、3発と至近距離から銃弾を受け、それでもなんとか立ち続けたものの、
残る力をふりしぼって引金を引いたと同時についに倒れてしまう…。
そこに加納主任登場!
沢木が倒れたあたりを勢いよく覆面車で走り抜けてる気がするのですが、踏んじゃってないですよね??
いつになく透けたシャツなどを着てワイルドな主任が、1人であっというまにその場を制します。
そして、ふりかえると変わり果てた沢木の姿が!
中林と水野(赤塚真人)の沈痛な表情にすべてを察し、加納は茫然と歩み寄り沢木を抱き上げて連れて帰る。
最初に見た時は、あまりにあっけない最期にびっくりしました。
主任たちが駆けつけたタイミングからして、若者が暴走しないであとちょっと待っていれば
沢木が命を落とすこともなかったでしょう。
いや、沢木も応援が来るのを待てばよかった。若者だけならその場ですぐに殺されることはなかった気がします。
でも、彼は見過ごせなかった。
「俺が死んだら、故郷(くに)のお袋が悲しむだろうな。やだなぁ」
かつてそう呟いていた沢木刑事。
倒れる瞬間、なにか思ったことはあったのか。そんな暇もなく息絶えてしまったのか…。
故郷がどこかはわかりませんが、なんとなく首都圏ではない感じがします。
彼の母親や家族が知らせを受け、どんな気持ちで上京するかと思うと胸が痛みます。
悲しみに包まれる刑事部屋で、ひとり窓辺に佇み涙を流す加納主任。
自分の片腕に育ちつつあった後輩を失った喪失感は日に日に大きくなりそうです。
そこに流れるのが『君は人のために死ねるか』!!
途中からゆるめの歌謡曲に変わっていたエンディングが、今回はもとに戻りました。
最初は笑っちゃったこの曲ですが、このタイミングで聴くと泣けます。
歌詞がいちいち沁みます。
ひょっとしてこのために途中エンディングを変えてたんでしょうか?
だとしたら、「太陽にほえろ!」に移る神田さんに対して、「大捜査線」チームと杉サマからの
最高のはなむけだと思います。
【本日の妄想】
沢木刑事の殉職場面は、神田さんが監督と相談して考えたそうですね。
「太陽」では希望は出したものの殉職できなかったとのこと。
ドックが番組最後までいてくれて私としては良かったですが、
一方で神田さんがドックの最期をどのように演じたかったのかも気になります。
歴代の新人刑事が殉職し、ついには中堅・ベテラン刑事も殉職していった七曲署。
それぞれの最期が印象的なだけに、後になればなるほど死に方に困るんじゃないかと思っていました。
それでもドックという個性的なキャラクターを作り上げ変化させてきた神田さんなら、
殉職もきっと他の人とは違ったものになったと思います。
「太陽」スタッフがどのようにそれを演出し、仲間がどう見送るのか。
一番観たくないけど、一番観てみたかったのは他ならぬドックの殉職でした。