人気のない道を歩き、海へと向かった。あの日通った道のはずだが、人がいないせいなのか、あまり記憶がない。その時、壊れかけたようなタバコの自動販売機が目に入ってきた。
全てを憶えていることはできないが、あの販売機でタバコを買ったことは憶えていた。
-タバコ、吸うんだ?
-まあね。かっこつけるためにね。
-私に、かっこつけてるの?
-最初は、かっこつけのために、はじめたんだけど、
やめられなくなった。
-苦しくない?練習?
-よく知ってるね。走るのがきつい。
タバコに火をつけた。
-私にも、1本、ちょうだい。
-えっ、吸うの?
-いけない?
-いや、吸うとは思ってなかったんで。
-そうなんだ。
僕は、君に1本渡そうとした。
-冗談よ。タバコは吸わないわ。驚いた?
-ああ、ちょっとね。でも、自分も吸ってるんだし、驚くことでもないか。
君は、少し考えたあと、ためらいながら、僕に聞いてきた。
-ひょっとして、噂、聞いたことないの?
-噂って?
-私のこと。
-ホシの噂?聞いたことないよ。
-なら、いいわ。
-どんな噂?
-知りたいの?
-気になる。
-知らないほうがいいわよ。あまりいい噂じゃないし。
-ホシは、その噂、気にしてないのか?
-どうでもいいわ。全部が全部、嘘って訳でもないし。
いいたい人には言わせておけば。
-なら、俺も気にしない。
-ありがとう。
君は、何かに怯えた少女のような微笑みを浮かべて言った。
噂。実は、僕は知っていた。
僕が、ベランダで君と話しているところ見ていた友人が教えてくれた。
ホシには、近づかないほうがいいと。
中学時代、妊娠して、子供を堕したとか。
変な男と夜中遊びまわっているとか。
援交をしているとか。
そんなことだった。
友人も本当のことは知らないらしく、ただ噂を聞いただけだった。
でも、噂になるくらいだから、まんざら嘘というわけではないだろうと言った。
君も、全てが嘘ではないと言った。
どれが嘘で、どれが本当なのか、知りたかった。
でも聞けるはずはなかった。聞けば、君との関係は終わってしまう。
君が話す時まで待っているしかないと思った。
つづく
ランキング参加中
←良かったら、押して下さい
全てを憶えていることはできないが、あの販売機でタバコを買ったことは憶えていた。
-タバコ、吸うんだ?
-まあね。かっこつけるためにね。
-私に、かっこつけてるの?
-最初は、かっこつけのために、はじめたんだけど、
やめられなくなった。
-苦しくない?練習?
-よく知ってるね。走るのがきつい。
タバコに火をつけた。
-私にも、1本、ちょうだい。
-えっ、吸うの?
-いけない?
-いや、吸うとは思ってなかったんで。
-そうなんだ。
僕は、君に1本渡そうとした。
-冗談よ。タバコは吸わないわ。驚いた?
-ああ、ちょっとね。でも、自分も吸ってるんだし、驚くことでもないか。
君は、少し考えたあと、ためらいながら、僕に聞いてきた。
-ひょっとして、噂、聞いたことないの?
-噂って?
-私のこと。
-ホシの噂?聞いたことないよ。
-なら、いいわ。
-どんな噂?
-知りたいの?
-気になる。
-知らないほうがいいわよ。あまりいい噂じゃないし。
-ホシは、その噂、気にしてないのか?
-どうでもいいわ。全部が全部、嘘って訳でもないし。
いいたい人には言わせておけば。
-なら、俺も気にしない。
-ありがとう。
君は、何かに怯えた少女のような微笑みを浮かべて言った。
噂。実は、僕は知っていた。
僕が、ベランダで君と話しているところ見ていた友人が教えてくれた。
ホシには、近づかないほうがいいと。
中学時代、妊娠して、子供を堕したとか。
変な男と夜中遊びまわっているとか。
援交をしているとか。
そんなことだった。
友人も本当のことは知らないらしく、ただ噂を聞いただけだった。
でも、噂になるくらいだから、まんざら嘘というわけではないだろうと言った。
君も、全てが嘘ではないと言った。
どれが嘘で、どれが本当なのか、知りたかった。
でも聞けるはずはなかった。聞けば、君との関係は終わってしまう。
君が話す時まで待っているしかないと思った。
つづく
ランキング参加中
←良かったら、押して下さい
今後の展開、どうしましょう。あらすじをもとに、書きながら更新してますが、当初考えていたのとは違う方向に向かってしまったようで、自分でも心配です。
次回は週末に、更新すると思います。
期待?してくれるとうれしいです。
また、コメント、お願いします。