Sea side memory (7)

2006-10-22 | 自作小説:Sea side memory
人気のない道を歩き、海へと向かった。あの日通った道のはずだが、人がいないせいなのか、あまり記憶がない。その時、壊れかけたようなタバコの自動販売機が目に入ってきた。
全てを憶えていることはできないが、あの販売機でタバコを買ったことは憶えていた。

 -タバコ、吸うんだ?
 -まあね。かっこつけるためにね。
 -私に、かっこつけてるの?
 -最初は、かっこつけのために、はじめたんだけど、
  やめられなくなった。
 -苦しくない?練習?
 -よく知ってるね。走るのがきつい。

タバコに火をつけた。

 -私にも、1本、ちょうだい。
 -えっ、吸うの?
 -いけない?
 -いや、吸うとは思ってなかったんで。
 -そうなんだ。
僕は、君に1本渡そうとした。
 -冗談よ。タバコは吸わないわ。驚いた?
 -ああ、ちょっとね。でも、自分も吸ってるんだし、驚くことでもないか。
君は、少し考えたあと、ためらいながら、僕に聞いてきた。
 -ひょっとして、噂、聞いたことないの?
 -噂って?
 -私のこと。
 -ホシの噂?聞いたことないよ。
 -なら、いいわ。
 -どんな噂?
 -知りたいの?
 -気になる。
 -知らないほうがいいわよ。あまりいい噂じゃないし。
 -ホシは、その噂、気にしてないのか?
 -どうでもいいわ。全部が全部、嘘って訳でもないし。
  いいたい人には言わせておけば。
 -なら、俺も気にしない。
 -ありがとう。
君は、何かに怯えた少女のような微笑みを浮かべて言った。

噂。実は、僕は知っていた。
僕が、ベランダで君と話しているところ見ていた友人が教えてくれた。
ホシには、近づかないほうがいいと。
中学時代、妊娠して、子供を堕したとか。
変な男と夜中遊びまわっているとか。
援交をしているとか。
そんなことだった。
友人も本当のことは知らないらしく、ただ噂を聞いただけだった。
でも、噂になるくらいだから、まんざら嘘というわけではないだろうと言った。
君も、全てが嘘ではないと言った。 
どれが嘘で、どれが本当なのか、知りたかった。
でも聞けるはずはなかった。聞けば、君との関係は終わってしまう。
君が話す時まで待っているしかないと思った。

                        つづく

ランキング参加中
←良かったら、押して下さい

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 変態村 | トップ | 永遠 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
大丈夫ですか? (もどき)
2006-10-25 18:27:34
この後の展開はどうなるのですか?
返信する
コメント、ありがとうございます。 (サボリ魔ジョニー)
2006-10-26 01:29:11
昨日は、お酒を飲んで、更新できませんでした。帰りが午前様でした。

今後の展開、どうしましょう。あらすじをもとに、書きながら更新してますが、当初考えていたのとは違う方向に向かってしまったようで、自分でも心配です。

次回は週末に、更新すると思います。

期待?してくれるとうれしいです。

また、コメント、お願いします。
返信する

コメントを投稿

自作小説:Sea side memory」カテゴリの最新記事