JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

男子の世界標準バレーの先にあるもの ロシア男子

2013-03-21 13:21:13 | 用語解説
まずは、ロンドンの金メダルチームのロシア男子を取り上げます。

・スーパーエースがサーブレシーブ
ロシア男子不動(ではなかったが)のスーパーエース、ミハイロフ選手は、なんとサーブレシーブに参加します。参加するのは、ミハイロフ選手が前衛ライトと後衛ライトとなるS5とS4ローテが主です。レシーブフォーメーションは、以下のようになります。

S5
C ①l ④R
S ②L ③c

S4
S C ①l
②L ③c ④R

この2ローテでは、ミハイロフ選手が他の選手と入れ替わる必要がありません。入れ替わらないなら、スーパーエースも、ずしりと構えてサーブレシーブに参加すればいい、という考え方です。やろうと思えば、S1でも可能ではないかと思います。

この形は、ロシア男子の代表チームだけではなく、ミハイロフ選手所属のゼニト・カザンでも取り入れられています。

・土壇場でポジションチェンジ
これには驚き、岡山シーガルズか!と思ってしまいました。なんと、ロンドンの金メダルマッチで2セットを失ったロシア男子は、こんなポジションチェンジをしたのです。

ムセルスキー選手:センター→スーパーエース
ミハイロフ選手:スーパーエース→表レフト

そして、ムセルスキー選手が好き放題に右から打ち込み、ミハイロフ選手は全ローテでサーブレシーブに参加。S1では、表レフトに入っているミハイロフ選手が本来のライトから打ち込む形になるので、問題なし。ほとんどバックセンターは使わず、ブラジルに勝って金メダルです。よく、センターやレフトの表裏をセット間に変えることはありますが、これほど大胆なポジションチェンジで世界最高峰の試合を征したのには驚きです。

・何がロシア男子のオリジナルを可能にしたか?
それは、ズバリ言って、選手が複数ポジションを経験していることです。サーブレシーブに参加したり表レフトもこなしてしまうスーパーエースのミハイロフ選手、実は1年間レフトを経験していました。スーパーエースとしてもライトから打てるムセルスキー選手、彼にもスーパーエースの経験があります。このように、選手が複数ポジションをこなして、枠にとらわれない起用が可能だったことが、ロシア男子の金メダルの原動力となりました。

男子の世界標準バレーは時代遅れ!

2013-03-21 00:18:27 | 用語解説
挑戦的な記事タイトルですが、是非最後までお読みください。

男子の世界標準バレーは、日本から見れば最先端のバレーに見えます。全日本男子は、特に山本隆弘選手の全日本復帰後からは、世界標準バレーを目指したチーム作りが行われています。左利きにこだわったスーパーエース山本隆弘選手や清水邦広選手の選出、サイドへのトスが速い宇佐美大輔選手の選出、身長は無くても速いトスが打てる越川優選手や福澤達哉選手の選出など、メンバーも世界標準バレーを意識した登録になっています。そんな中、北京では、旧世代バレーにフラッと回帰したりしましたが、北京後はまた世界標準バレーにシフト。しかし、追いかけても追いかけても追い付かず、強豪との差が広がるばかりで、ロンドンの出場権を逃しました。

では、その強豪は一体どんなバレーをしているのでしょうか?実は、強豪チームにとっては、既に世界標準バレーは目標ではなく出発点。いかに世界標準バレーを土台として、各チームのオリジナリティを出すかが勝負の分かれ目になっています。例えばスーパーエースのサーブレシーブ参加。例えばスーパーエースとレフトの後衛でのポジションチェンジ。例えば遅いクイック。例えばセンターからのバッククイックとライトからのパイプ。それにCクイックやDクイック。さらにブロードもどきまで。これは、全て世界の強豪チームが取り入れ、得点源にしているプレーです。

世界標準バレーとは相容れない単語が並びましたね。ブロードなんて、女子とタイ男子だけと思っていたら大間違い。強豪が似たことをやっているのです。では、次回記事からは強豪チームを1つずつ取り上げ、それぞれのチームがどんな驚きのバレーを展開しているかを明らかにしていきます。強豪と言えるかは別として、日本のトップチームについても取り上げますので、お楽しみに。

この連載の中に、全日本男子復活のヒントが隠されているはずです。