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JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

男子の世界標準バレーその2

2013-01-06 01:11:22 | 用語解説
今回は、それぞれの攻撃を、組み立ての中で解説します。

・常に3方向から攻撃参加→ライトにはスーパーエースを配置
男子バレーでは、常にレフト・センター・ライトにアタッカーを配置することが基本的な戦略になります。そのため、ライトには、前衛後衛関係なく攻撃参加できるスーパーエース、多くは長身左利きの選手を置きます。そのため、センターはライトにブロードする必要がありません。

・「バンチ」リードブロックをレフト平行で引き裂く
男子バレーで主流なバンチリードブロックとは、3人のブロッカーが中央付近にいて(バンチ)、トスが上がってからブロックに行く(リード)ブロックシステムです。バンチを引き裂くために、サイドブロッカーさえ追い付かないような高速レフト平行が多用されます。

・バンチ「リード」ブロックをAクイックとBクイックで引き裂く
バンチを引き裂いて中央への警戒を薄めたところで、センターのAクイックやBクイックで「これはコミットしないと止められないな」と思わせます。

・引き裂いたバンチリードブロックの上から、バックセンターを打つ
真ん中でセンターのブロッカーが一人クイックにコミットする状態が作れれば、その落ち際を狙う、高速のバックセンターを使います。

・苦しい時にはスーパーエース頼り
上記はA~Bパスが前提です。それが崩れたら、ハイセットをスーパーエースに託します。

・スーパーエースも高速攻撃に参加
ハイセットしか打たないように思わせておき、A~Bパスでもスーパーエースに高速攻撃に参加させると、相手のブロッカーはかなり惑わされます。

大体のセッターは、このような組み立てを考えますが、それは相手チームも承知のこと。この組み立ては、セオリーであるがゆえに、読まれているのです。このセオリーを理解しつつ、常に意表を突けるかどうかが、セッターの腕の見せ所です。特に、縦のBクイックを使えるかどうか、また高速レフト平行とレフトへのハイセットを戦略的に使い分けられるか、がセッターの技量に関わってきます。

さらに避けて通れないのは以下。

・リベロのセカンドセッター化
セッターがレシーブした際には、アタックラインより後ろに上げて、リベロがオーバーでトスを上げます。

これは、ブラジルのセルジオ選手が第一人者です。彼が上げるパイプや縦のBクイックのトス、惚れますね!

男子の世界標準バレーその1

2013-01-06 01:10:47 | 用語解説
全日本男女ともに、2013年には新たなチーム作りが始まります。新たなチームを見据えるときに、やはり気になるのは「世界標準」を目指すのか「日本オリジナル」を目指すのか、という選択です。今回は、男子の世界標準バレー解説その1になります。

・オーダー
バックオーダーを採用します。S1に難がないチームは、前衛3枚ローテを増やすためにS1スタートになるので、
S1---------
R c ③L
①l ②C S
で試合開始になります。

S1に難があるチームは、S1ローテを減らすためにS6スタートになるので、
S6---------
①l R c
②C S ③L
が試合開始のオーダーになります。

その後は以下のようになります。

S5---------
C ①l R
S ②L ③c

S4---------
S C ①l
②L ③c R
(レフトのレシーブの左右は入れ替わることもある)

S3---------
①L S C
②c R ③l

S2---------
c ①L S
R ②l ③C

・サーブレシーブ
サーブレシーブは、常にレフトの2人とリベロが行います。S1以外は、前衛レフトが左側でレシーブ出来るように配置され、後衛2人で真ん中と右を守ります。弱いサーブに対しては、リベロと後衛レフトの2枚レシーブで対応することもあります。

表レフト…フロントレフト2ローテ、フロントライト1ローテ、バックレフト2ローテ、バックライト1ローテ
裏レフト…フロントレフト3ローテ、バックレフト1ローテ、バックセンター1ローテ、バックライト1ローテ
リベロ…バックセンター3ローテ、バックライト3ローテ

・レセプションアタックの位置
表レフト…レフト打ち2ローテ、ライト打ち1ローテ、バックセンター3ローテ
裏レフト…レフト打ち3ローテ、バックセンター3ローテ
表センター…左から走り込むクイック2ローテ、真ん中から入るクイック1ローテ、バックアタック無し
裏センター…左から張り付きクイック1ローテ、真ん中から入るクイック1ローテ、右から走り込むクイック1ローテ、バックアタック無し
ライト…レフト打ち1ローテ、ライト打ち2ローテ、バックライト3ローテ

次回は、攻撃の組み立てなどについて書きます。

S1対策 全日本女子ロンドンのロシア戦等の場合

2012-09-18 16:28:33 | 用語解説
全日本女子のS1は、山口舞選手というセンター系ライトの存在でかなりの危機になる、ということを以前解説しました。詳しくは過去記事をご覧ください。

私も、山口舞選手が出るなら、ロンドンでもS1はかなり厳しくなると思っていました。しかし、ロシア戦では、全く新しいS1対策を全日本女子が展開し、本当にびっくりしました。

S1では、
-----
R C L
L C S
と並んでいる中で、前衛ライトがレフト側、後衛センターに替わったリベロが中央、前衛レフトがライト側でサーブレシーブをします。そのため、レフトとライトが前衛で逆転するのです。

それをなんと、山口舞選手をサーブレシーブから外して、前衛レフトをレフト側、後衛センターに替わったリベロがライト側、という2人だけでサーブレシーブをしたのです!これにはびっくりです。そして、レフトの端に固まっていたセンターの井上香織選手はL、山口舞選手はCワイドのダブルブロード、そしてサーブレシーブした木村沙織選手はそのままレフト打ちに入ったのです。女子では珍しい2枚レシーブ隊形にし、ブロードで山口舞選手をライト側に戻す、これは予想すらしていませんでした。

この形、実はアルジェリア戦で1回、ドミニカ戦でも1回試していました。秘密兵器として、ずっと開発してきたのでしょうね。

このS1対策は、言わば他を犠牲にしてまで山口舞選手を最大限に活かすためのもの。それを予選リーグで強豪相手に見せたわけです。その次の格下のイギリス戦では新鍋理沙選手を起用して、山口舞選手は出番なし。この状況から、対戦国は、山口舞選手が決勝リーグのスタメンに入ると予想したはずです。しかしそれもカモフラージュに過ぎなかった!決勝リーグでは新鍋理沙選手を主力として戦い、データの裏をかきました。そして韓国戦では、その新鍋理沙選手を全く異なる使い方で起用してストレート勝ち。決勝リーグの勝利の背景には、こんなに緻密なデータ攪乱計画があったのですね。これについても、今後詳細な解説記事を予定しています。

S1対策 韓国男子の場合

2012-09-18 13:19:03 | 用語解説
韓国男子は、韓国女子と同じく、フロントオーダーです。ライトには守備免除で左利きのパクチョルウ選手を入れているので、韓国女子でファンヨンジュ選手をライトで起用したのと同じ形になっています。

つまり、

S1
-----
R L C
C L S

S6
-----
C R L
L S C

の2回のローテで、レフトとライトが反転してしまいます。

・S1の問題点
レフトとライトが入れ替わり、さらにライトは左利きでレフト打ちが無いため、ライトに戻らざるを得ません。また、レフトはサーブレシーブに入るため、動きを封じられることがあります。

・解決策1 ライトのパクチョルウ選手のダッシュと助走
ライトのパクチョルウ選手は、サーブレシーブ免除なので、サーブが打たれた瞬間にライトにダッシュします。S1でも前衛レフトはセンターでサーブレシーブするため、パクチョルウ選手もセンター付近にいます。そのため、走る距離は4.5mです。無理な距離ではありません。また、パクチョルウ選手は、長い助走で体重を乗せるタイプではないため、十分に開かなくてもブロックを利用した打ち方をできます。

・解決策2 前衛レフトのセンターセミや時間差
本来なら前衛レフトはサーブレシーブ後にレフトの端までダッシュして戻るものですが、S1とS6では前衛レフトはセンターセミに入ります。打つ場所は、ロングBセミ、Bセミ、Aセミ、Cセミの4箇所もあり、ブロッカーからすると絞りにくくなります。それが、センターのクイックとうまく時間差になっています。

・解決策3 S6ではバックレフトも使う
前衛レフトがセンターセミに入ってレフトが空になるので、その時には後衛レフトがバックレフトを打ちます。これは全日本女子のS1で裏レフトがバックレフトを打つのと同じです。ただ、このバックレフトの効果率には疑問もあります。

韓国男子の試合はあまり見ていないので、もしかすると他にも対策をしているかも知れません。その場合はお知らせください。

まとめると、フロントオーダーはごちゃごちゃした動きの原因になる悪いオーダーだが、それを逆手に取った時間差などで相手を攪乱できる、ということです。韓国女子の場合、キムヨンギョン選手という大砲がいるので、その他の選手はごちゃごちゃ動いても有効な攻撃になります。ただ、韓国男子は大砲が不在なので、ごちゃごちゃ動きすぎると全員が苦しくなることもあるようです。

S1対策 全日本女子2008の場合

2012-09-16 14:22:58 | 用語解説
全日本女子2008は、フロントオーダーでした。すると、レフトとライトが入れ替わるローテが2回も出現します。これを逆手に取り、ライトにはレフト平行が得意な高橋みゆき選手、裏レフトにはライト平行が得意な木村沙織選手、表レフトにはレフト打ち専門の栗原恵選手を入れたのです。そして、ライトの高橋みゆき選手を実質的にレフト、裏レフトの木村沙織選手を実質的にライトとして運用しました。

つまり、S1は危機でも何でもなく、理想的フォーメーションのなったのです。このフロントオーダーの背後には、高橋みゆき選手の低身長もあるでしょう。高橋みゆき選手をレフトに入れると、どこかで竹下佳江選手と高橋みゆき選手が同時に前衛に上がってしまい、低い2人が前衛なのでブロックが破綻します。そのため、低い2人を対角に配置し、低いブロッカーは高々1人しか前衛に上がらないようにしたのです。

また、これによってS1を回避しなくてすむため、試合をS1スタートにできます。すると、低い竹下佳江選手が前衛に上がる回数を1回減らせるため、ここにもメリットがあります。

逆にイレギュラーとなるローテは、S5です。前衛レフトに栗原恵選手、前衛ライトに高橋みゆき選手が来ます。しかし、栗原恵選手はもともとレフト専門ですし、高橋みゆき選手のライト打ちも問題ありません。高橋みゆき選手はライトの経験もありましたから。そのため、イレギュラーローテも危機にはならないのです。

このシステムは、かなりよく考えられたものです。同じフロントオーダーでも、選手の特性や配置によって、全日本女子2008や韓国女子など、本当に様々な形が作れるのですね。