エベン・アレクサンダー氏は入院して七日目に奇跡的に意識を取り戻しました。しかし直ぐに回復した訳では無く、退院後を含めてリハビリには少しの時間を要したとの事です。入院したのは2008年11月10日で退院してきたのが11月25日。何時に2週間以上入院した後に退院する事が出来ました。
帰宅後にアレクサンダー氏は、自身が経験した臨死体験をどの様に扱ったら良いか悩みました。ただこの経験のリアル感がとても大きかった事から、まずは自分自身の状態を確認すべく、カルテ類などを取り寄せて分析を始めました。
「私は自分が昏睡状態にあった期間の医療記録を調べてみた。そこには実質的に当初からの詳細な記録が記されていたが、患者を診察する様に脳のスキャン画像を点検し、自分がどれほどみごとなまでに重症であったかを知る事が出来た。
ほかの疾患と比較した場合の細菌性髄膜炎の特異性は、より深い構造部分は無傷のまま、最初に脳の表面が攻撃をうけるところにある。最近は人間的な機能を司る部位をまずは破壊し、最終的にはその奥にあり、動物の共通のハウスキーピング機能を担う部分に致命傷を与える。頭部損傷、脳卒中、脳出血、脳腫瘍などその外の疾患も、新皮質を破壊し、昏睡を誘発するが、完全に大脳新皮質全体を破壊する効率性は細菌性髄膜炎には及ばない。これらは多くの場合、新皮質に部分的損傷を与えるだけにとどまり、それ以外の部位は機能が損なわれないまま無傷で残される。細菌性髄膜炎は大脳新皮質を破壊するだけでなく、脳のより深い原始的部分にも損傷を与える傾向が強いのだ。こうした背景を踏まえれば、死に至らずにその疑似体験をしたいと思う場合には、恐らく考えられる中で最適な病気が細菌性髄膜炎だろう。」
アレクサンダー氏の病状は、簡単に言えば脳髄全般に炎症を起こし、頭蓋骨内には膿がまんべんなく貯留した状況であり、脳が機能的に動いていない状況であったと言うのです。にも拘わらず、とても現実味のある臨死体験をしたという事が、自身の医学的な知識や経験からは説明できない状況であったという結論でした。
この事からアレクサンダー氏は、自身の医者としての経験から、今回の臨死体験は脳内が生み出した幻覚という事では説明できないと認識し、レイモンド・ムーディ氏(アメリカの医師であり心理学者、臨死体験の研究家)の書籍などを読み始め、臨死体験について正面から取り組み始めたと言います。
彼も医師であった事から、自分が受け持った患者の中でも、臨死体験について語る患者が居たそうです。しかしそれは脳外科の専門家という立場から「脳内が作り出した幻覚である」としてきたと言いますが、自身が臨死体験を経験し、またその時の自分の病状を確認した結果、単なる脳内の活動の結果だけとは言い切れなかったのでしょう。
またアレクサンダー氏は、この臨死体験の中で出会った女性についても気になっていて、調べたところ、実は会った事が無い、生き別れた妹が居た事が判明したというのです。
アレクサンダー氏は幼少の頃に、養子として法律家や医者を輩出する今の両親の一家に迎えられ、その後に医者へとなったのですが、アレクサンダー氏が養子としてもらわれて以降、実は産みの親の家庭で彼の妹が生まれていたと言います。しかしその妹は、アレクサンダー氏が今回の臨死体験をする以前に事故死している事が、後にアレクサンダー氏が産みの両親と再会した際に発覚。そこで見せられた妹の写真を見た時、妹がその女性であった事に大変驚きを憶えたと言います。
以上が簡単ではありますが、エベン・アレキサンダー氏の臨死体験の概要です。
アレキサンダー氏は、臨死体験後に「プルーフ・オブ・ヘブン」を著作、医学界の中で様々な批判を受けながらも、自身が体験した事に対する検証や講演活動を続けていると言います。
現役で最前線にいた脳外科医が経験した臨死体験。これは世界の中でとても反響を読んだ話だったのです。
(続く)