尾張廼家苞 四之上
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身をしれば人のとがともおもはぬにうらみがほにもぬるゝ袖かな
かこちがほなる我涙かな なげゝとて月やは
物をおもはする。といへる歌とお
なじさま也。下句の似たるをいはるれど、歌の主意は上句にある故、清く別義也。
一首の意は、我を人がいとへど、それは我身の数ならぬ故の事としれば、
人のとがとはおもはずうらみはせぬを、彼の涙は、
わけもしらず人うらみがほにぬるゝるとなり。
女につかはしける 俊成卿
よしさらば後の世とだにたのめおけつらさにたへぬ身ともこそなれ
我は君がつらさにえ堪ずて死ぬる事もあるべければ、よし
や此世にてはつれなくとも、さらば後の世にあはんとだに契おけ
と也。すでにあひたる女のさはりありて、
あひがたげにしたるをうらみたる哥也。
かへし 定家朝臣母
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たのめおかむたゞさばかりを契にてうき世の中の夢になしてよ
然らば、後の世を契置べきほどに、たゞそればかりを此世にて
の縁にはして、今まで逢みし事は夢に思ひなして、今逢が
たき事を恨給ふなと也。契は俗にいふ縁の意也。哥により
てみれば、思ながら逢事のなりがたかりし中と聞えてえ哀なり。
※かこちがほなる 千載集 月前恋といへる心をよめる 円位(西行)法師
なけげとて月やは物をおもはするかこちがほなるわが涙かな
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萬葉集略解目録 全二冊 尾州名古屋本町七丁目 永樂屋東四郎