新古今和歌集の部屋

歌論 無名抄 代々戀歌秀歌事



俊惠語云
故左京大夫顯輔語りて云、
後拾遺の戀の哥の中に
夕暮は待たれし物を今はたゝ行くらん方を思ひこそやれ
(詞花集 恋歌下 269 相模 後拾遺は詞花集の間違い)
是をおもて哥と思へり。金葉集に云
待ちし夜の更けしをなにゝ歎きけん思ひ絶えてもあられける身を
(金葉集二度本 恋歌上 402 白河女御越後)
これを優れたる戀とせり。我撰べる詞花集には、
忘らるゝ人め斗を歎にて戀しき事のなからましかば
(詞花集 恋歌下 270 読人不知)
此哥を彼類にせんとなん思う給ふる。いとかれらにも劣らず、けしうはあらずこそ侍れ。
といはれけり。
しかるを、俊惠が哥苑抄の中には、
一夜とて夜離れし床の小筵にやがても塵の積りぬる哉
(千載集 恋歌四 878 二条院讃岐)
是をなんおもて哥と思ひ給ふるは、いかゝ侍らん
とぞ

今、これらに心付きて新古今を見れば、わが心に優れたる哥三首見ゆ。いづれとも分き難し。後人定むべし。

かくてさは命や限徒らに寝ぬ夜の月の影をのみ見て(不詳)


野邊の露は色もなくてやこぼれつる袖より過ぐる荻の上風
(恋歌五 1338 慈円)

帰るさのものとや人の眺むらん待つ夜ながらの有明の月
(恋歌三 1206 定家)



○俊惠
(1113年~?)源俊頼の子。東大寺の歌林苑の月次、臨時の歌会を主催。鴨長明は弟子にあたる。
○左京大夫顯輔
藤原顕輔(1090~1155年)正三位左京大夫。詞花和歌集の撰者。
○かくてさは
無名抄だけに見られ、新古今には見あたらない歌。後に切り出されたものと考えられている。
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