新古今和歌集の部屋

哀傷歌 菖蒲 筆者不明断簡コレクション

新古今和歌集 巻第八 哀傷歌

稚き子の失せにけるが植ゑ置きたりけるを見てよみ侍りける
       高陽院木綿四手

あやめ草誰しのべとや裁置きてよもぎが本の露と消えけむ

 歎事侍ける比五月五日人の許へ申し遣はしける
        上西門院兵衛
けふ来れどあやめもしらぬ袂かな昔をこふるねのみかヽりて

 近衞院かくれさせ給ひにければ世を背きて後五月五日皇嘉門院にたてまつられけ
           九条院
あやめ草引きたがへる袂にはむかしをこふるねぞかヽりける

 かへし
          皇嘉門院
さもこそはおなじ袂の色ならめかはらぬねをもかけてけるかな


読み:あやめぐさたれしのべとやうえおきてよもぎがもとのつゆときえけむ 隠
意味:あやめ草は誰を偲べと植えて置いたのでしょうか。幼い子は蓬の露と消えてしまったのに。
作者:こうよういんのゆうしで。平安後期の女流歌人。鳥羽皇后藤原泰子に仕える。

読み:きょうくれどあやめもしらぬたもとかなむかしをこうるねのみかかりて 隠
意味:五月五日となっても文目も分からない袂です。昔ばかりを恋しく思って泣く音ばかり根に懸かっています。
作者:じょうさいもんいんのひょうえ。平安後期の女流歌人。源顕仲女で待賢門院堀河の妹。鳥羽天皇皇女統子内親王に仕える。
備考:続詞花集の詞書によると、「故一品宮かくれさせ給ひての頃」と有り、上西門院の同母姉の禧子内親王(1122-1133 賀茂斎院)が、薨去された長承二年の翌年の五月五日と思われる。
本歌:郭公鳴くや五月の菖蒲草文目も知らぬ恋をするかな(古今集恋歌一読み人知らず)墨染の袂に懸かる根を見れば文目も知らぬ涙なりけり(千載集哀傷歌 俊忠)
菖蒲と文目、根と音の掛詞

読み:あやめぐさひきたがえるたもとにはむかしをこうるねぞかかりける 隠
意味:端午の節句に飾る為に、菖蒲草を引き抜いて来た袂には、近衞院の居られた昔を恋しく思う根が懸かっています。
作者:くじょういん 1131-1176藤原伊通女 近衞天皇中宮

読み:さもこそはおなじたもとのいろならめかわらぬねをもかけてけるかな隠
意味:本当にそうですね。同じ袂の色になりますね。変わらない根を掛けています。
作者:こうかもんいん 1121-1181 崇徳院皇后 藤原聖子 藤原忠通女。保元の乱で出家。

平成27年3月25日 點七

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