新古今和歌集の部屋

湖月抄 藤袴 夕霧のナンパ失敗 蔵書

                    源氏より玉かづらへの消息也
人づてならで有けり。殿の御せうそこ
     冷泉院也。                夕霧
にて、内より仰ごとあるさま、やがて此君
                      玉鬘源への返事
のかけ給はり給へるなりけり。御かへりおほ
 
どかなるものから、いとめやすく、聞えな
    夕霧の心に玉かづらのさまを思ひやる心也
し給、けはひのらう/\じくなつかしき
          玉鬘を夕霧み給ひし事也。
につけても、彼野分のあしたの御朝が
 
ほは、心にかゝりて戀しきをうたてある
            実の兄弟ならぬよしを也
すぢに思ひしを聞あきらめて後には、
夕霧の吾身もあらぬ心のつくと也 玉かづらの内侍のかみの事也
程もあらぬ心ちそひて、此宮づかへを、大
        源の也            と両説
かたにしも覚しはなたじかし。さばかりみ
 
どころある御あはひどもにておかしきさま
         物ねたみの事也
なることの、わづらはしきはた、かならず
 
 
頭注
今あらざりけりとて
今更にうと/\しく
し給ふべきも如何と也。
内よりおほせ
内より夕霧を御使と
して源へ申されしその
由を頓て玉鬘の御方へ
申給ふ也。内よりの仰せ
を源の夕霧して玉かづら
への給ふ也。
あさがほ 朝面万葉
㐧一㐧八巻。何も人顔の
事にいへり。
うたてあるすぢに 兄弟
と思ひしかば心にはかゝり
ながらあるまじき事に
思ひしと也。
此宮づかへを大かたにしも
是は源の心中を夕霧
の推量して思ふ心也。只今
宮仕の事をの給ふ御使なれば也。
さばかりみどころある みかどゝ
よき御あはいなるべしと也。源氏と玉かづらとの愚案哢の説にしたがはゞおか
しきさまなる事のわづらはしきとは、玉を源寵し給はゞ紫上などのそねみ
あるべき心なるべし。
おかしきさまなる 中宮女御の御為にはわづらはしき事のあるべき也。
                    夕霧も何とやらん心がゝり也
出きなんかしと思ふに、たゞならずむねふた
 
がる心ちすれと、つれなくすくよかにて、人に
 
きかすまじと侍ることを、聞えさせんに、いか
                    玉かづらの女房達など也
が侍べきとけしきだてば、ちかくさぶらふ人
 
もすこししりぞきつゝ、御木丁のうしろ
                 源の御せうそこにてもなき事
などにそばみあへり。そらせうそこをつ
をいふなり
き/"\しうとりつゞけて、こまやかに聞え
 
給。うへの御けしきのたゞならぬすぢを、さる
                         玉かづらの体也。
御心し給へなどやうのすぢなり。いらへ給は
の躰を見て夕霧の弥思給ふ也
んこともなく、うちなげき給へるほど、し
 
 
頭注
人にきかすまじ
夕霧のつくり事にかくの
給ふ也。是は源氏の御
ことづてあるを人のきか
ぬ所にて申せと侍るよ
し、夕霧の申給ふ也。
 
 
上の御氣色の 前に人
にきかすまじきと侍つる
といへる事の子細を訓尺
する也。抄夕霧の近く参
よらんための昨り事を
の給ふ也。其申やうは帝の
御心かゝるほどに其御心
頭注
用ひあれなど源のの給ふといひ
なす也。
 
 
 

人伝てならで有けり。殿の御消息にて、内より仰せ言ある樣、

やがて此君のかけ給はり給へるなりけり。御返り、おほどかなるも

のから、いとめやすく、聞こえなし給ふ気配のらうらうじく懐かし

きに付けても、彼の野分のあしたの御朝顔は、心にかかりて戀しき

を、うたてある筋に思ひしを、聞きあきらめて後には、程もあらぬ

心地添ひて、この宮仕へを、大方にしも覚し放たじかし。さばかり

見所ある御あはひ共にて、おかしき樣なる事の、煩しきはた、必ず

出きなんかしと思ふに、ただならず胸ふたがる心地すれと、つれな

くすくよかにて、人に聞かすまじと侍る事を、聞えさせんに、いか

が侍るべきと気色だてば、近く侍ふ人も少し退きつつ、御几帳の後

ろなどにそばみあへり。そら消息をつきづきしうとり続けて、細や

かに聞え給ふ。上の御気色のただならぬ筋を、さる御心し給へなど

やうの筋なり。いらへ給はん事もなく、うち歎き給へるほど、忍

 

※朝面万葉集第一第八
万葉集巻第八 1538(秋の七草歌)
萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花

略語
※奥入 源氏奥入 藤原伊行
※孟 孟律抄  九条禅閣植通
※河 河海抄  四辻左大臣善成
※細 細流抄  西三条右大臣公条
※花 花鳥余情 一条禅閣兼良
※哢 哢花抄  牡丹花肖柏
※和 和秘抄  一条禅閣兼良
※明 明星抄  西三条右大臣公条
※珉 珉江入楚の一説 西三条実澄の説
※師 師(簑形如庵)の説
※拾 源注拾遺
 
 
湖月抄  藤ばかま


 



 
 
 
源氏物語 三十帖 藤袴
 
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