新古今和歌集の部屋

絵入自讚歌注 家隆2

絵入自讚歌註 宗祇





思ひいるところのふかきよし也。されども草のつゆ
をいへる。つらきよせひあるにや。こゝろは人のつれ
なくてさま/"\たのめしすゑもかれはてゝはげ
しき風のごとくなれば我身のつゆたえが
たきよしにや。なをたづぬべし。
  おもひ出よたがかねごとのすゑならん
   きのふの雲のあとのやまかぜ
心はきのふの雲の山かぜにあともなくなり
たり。誰いひしこと葉にか君がちぎりしことのは
こそ此雲のごとくあともなく侍れ。思ひも出て
このことはりをしれと人をうらむるよし也。



ある註に鬼とりひしぐ躰となり雲のあとなきを
みてちぎりし事の其跡もなきを思出よといへり。
  あけば又こゆべき山のみねなれや
   そらゆく月のすゑのしら雲
こゝろはこえんと思ふ山のはにしら雲のみえ
ぬるをかくよめり。そらゆく月のといへるさま。方
角都にあづまなどよりゆくさまにや侍らん。
ある註に山家に旅ねしてそら行月をみてう
らむ心也。明ば我もこゆべき嶺を先雲のこゆると也。
  わかのうらやおきつしほあひにうかび出る
   あはれわが身のよるべしらせよ



こゝろはたゞこの道に名をかけながら出身おもふ
やうにならぬをなげくよしなり。よるべしらせよ
はめぐみをしたふ儀なり。
  その山とちぎらぬ月も秋かぜも
   すゝむる袖に露こぼれつゝ
心は世をのがれていたらんとおもふ山を月も
秋かぜもいづれその山をちぎらねどわれをす
すむるにやと思ふなり。すゝむるとは月をみれば
月も物あはれにていとふこゝろのつくをすゝ
むるといへり。秋かぜをも又おなじことはり也。







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