新古今和歌集の部屋

八雲御抄 正義部 物名 蔵書

八雲抄巻第一 正義部

 

 

 

 物名

是は、かくし歌也。物の名をかくしてよむ哥也。

くきも葉もみなみどりなるふかぜりは

あらふねのみやしろくみゆらん

藤六が、多詠が中に是は、尤得躰。あら舟の御社と

かくせり。此外は五文字上下は、むげにやすし。六字

七字もすこしやすくも聞えず。是は、九字のよくかく

れたるなり。三四字をかくして、よくよみたるは多

けれども、あまたの字は、すぐなる事かたし。登蓮が

「かさぎのいはや」七文字ぞちかくなにとも聞えぬ。是猶

は、よくかくしたる也。「蕨」を「藁火」とかへしたるなどは、

聲こそかはりたれども同物名也。これなどは、かく

したるといふべきに非ず。「かつらの宮」を「月のか

つら」とかへしたるも、いたくかくしたりともみえず。

惣て古今・拾遺などにも小々かくれぬも有也。古今な

どには、かくすものをやがて題にて、おほくは其心を

よめり。「うくひずとのみ鳥のなくらん」といふ樣也。

 

※読めない部分は、国文研鵜飼文庫を参照した。

※くきも葉も 拾遺和歌集巻第七 物名 あらふねのみやしろ 藤原輔相 384
茎も葉もみな緑なるふか芹は洗ふ根のみや白く見ゆらん

※蕨を藁火と 古今和歌集巻第十 物名 わらび 素性法師 453
煙たち燃ゆとも見えぬ草の葉を誰かわらびと名付け初めけん

※かさぎのいはや 千載和歌集巻第十九 雑歌下 かさぎのいはや 登蓮 1179
名にしおはば常はゆるきのもりにしもいかでかさきのいはやすくぬる

※かつらのみや 古今和歌集巻第十 物名 かつらのみや 源恵 463
秋来れど月の桂の実やは成る光を花と散らすばかりを

※うくひず 古今和歌集巻第十 物名 うぐひす 藤原敏行 422
心から花のしづくにそぼちつゝうくひずとのみ鳥のなく覧

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