きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

8月21日の日本民話 てんとうさんと金のくさり

2009-08-21 07:19:12 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 8月の日本民話


8月21日の日本民話


てんとうさんと金のくさり



てんとうさんと金のくさり
佐賀県の民話佐賀県情報


 むかしむかし、あるところに、お母さんと三人の子どもがいました。
 ある日の事、お母さんはいつものように庄屋(しょうや)さんの家へ、手伝いに出かけました。
 お母さんは一日中、庄屋さんの家ではたらいて、かえりにおにぎりを三つもらってきました。
「おいしそう。子どもたちが喜ぶだろうなあ。さあ、はやくかえろう」
 お母さんが山道をいそいでいると、大変なことに、やまんばと出くわしてしまったのです。
「い、いのちだけはおたすけを。そのかわり、このおにぎりをさしあげますから」
 そう言って、おにぎりを全部さし出すと、やまんばはペロリと食べてしまいました。
 そしてお母さんまでも、一口で食べらてしまったのです。
 さて、子どもたちが家で留守番(るすばん)をしていると、
「トントントン」
と、戸をたたく音が聞こえてきました。
「お母さんだよ、開けておくれえ」
 でもその声は、おそろしくガラガラな声でした。
「お母さんは、そんなへんな声じゃない。お前はやまんばだろう」
 子どもたちに正体を見やぶられたやまんばは、声のよくなる木の実を食べました。
「お母さんだよ、あけておくれえ」
 声はお母さんに似ていますが、子どもたちは用心(ようじん)して言いました。
「じゃあ、手を見せておくれよ」
 子どもたちに言われて、やまんばは戸のすき間から手を差し入れました。
 するとその手は、毛むくじゃらです。
「お母さんの手は、そんな毛むくじゃらじゃない。お前はやまんばだろう」
 また正体を見やぶられたやまんばは、畑に行って、山イモを手にぬりつけました。
「今度こそ、本当のお母さんだよ。あけておくれえ」
 やまんばは、戸のすきまから手をさし入れました。
 山イモをぬりつけたので、まっ白ですべすべの手です。
「すべすべの手だ。わーい、本当のお母さんがかえって来たんだ」
 子どもたちは、戸を開けました。
 するとお母さんに化けたやまんばは、一番小さな弟をだきかかえると、さっと、寝る部屋に入ってしまいました。
 しばらくして上の二人の兄弟は、お腹が空いたので、お母さんに声をかけました。
「お母さん、ごはんはまだ?」
 すると、こんな答えが返ってきました。
「わしはもう、お腹がいっぱい。お前たちの弟は、うまかったよ」
 これを聞いて、二人の兄弟はビックリ。
「あれは、お母さんじゃない。やまんばだったんだ。かわいそうに弟は、食べられてしまったんだ」
 兄弟はそっと家を抜け出すと、いちもくさんに逃げだしました。
 兄弟が逃げだした事に気がついたやまんばは、すごい速さで追いかけてきました。
「まてまてえ、逃がしてなるものか!」
「もうだめだ、このままでは追いつかれてしまう」
 ふと前を見ると、すぐ先に大きな木があります。
 兄弟は持っていたナタで木に切れ目をつけて、のぼっていきました。
 やまんばは、木の下からどなりました。
「やいお前たち、どうやって、この木にのぼったんだ?」
 すると、上の兄が言いました。
「簡単さ。手につばをつけてのぼるんだよ」
 やまんはは言われたとおりに、手につばをつけてのぼろうとしましたが、ツルツルとすべってのぼれません。
 それを見ていた二番目の兄弟が、
「バカだな。ナタで切れ目をつけてのぼればいいのに」
と、言ってしまったのです。
「そうかい、それはいい事を聞いたよ」
 やまんばはナタで木に切れ目を入れながら、どんどんとのぼっていきました。
 兄弟はあわてて上へのぼっていきますが、やまんばにはかないません。
 もう少しで追いつかれそうになったとき、兄弟は空にむかっておいのりしました。
「おてんとうさま、おてんとうさま。ぼくらを助けてください。助けてくれるなら、金のくさりを下ろしてください」
 すると空から、金のくさりがするすると下りて来たのです。
「ありがとう、おてんとうさま」
 兄弟がこのくさりにつかまると、くさりはひとりでに、ガラガラと空にまき上げられていきました。
 それを見ていたやまんばも、兄弟のまねをして言いました。
「おてんとうさま。こっちにもくさりを下ろしてくれえ」
 すると今度は、くさったなわが下りて来ました。
 やまんばがくさったなわにつかまると、くさったなわはプッツリと切れてしまい、やまんばは地面へと、まっさかさまにおちて行ったのです。
 こうして助かった兄弟は、夜空にかがやく兄弟星になったと言う事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 献血記念日
きょうの誕生花 → とけいそう
きょうの誕生日 → 1953年 関根勤(タレント)


きょうの新作昔話 → 人食い鬼の娘
きょうの日本昔話 → 二つ目のおばけ
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 月へオノを取りに行く話
きょうの日本民話 → てんとうさんと金のくさり
きょうのイソップ童話 → 腹のふくれたキツネ
きょうの江戸小話 → かさ売り


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8月20日の日本民話 ろくろっ首

2009-08-20 06:57:06 | Weblog

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8月20日の日本民話


ろくろっ首



ろくろっ首
静岡県の民話静岡県情報


 むかしむかし、旅から旅を続ける一人の男がいました。
 ある日の事、日がくれてきたので、男は浜松(はままつ→静岡県南西部)の近くにある村の宿屋にとまることにしました。
 その夜はあいにく、とまり客がたくさんいました。
 そこで男は美しい女の旅人と一緒に、一つの部屋のまん中にびょうぶをたてて、一夜をすごすことになりました。
 夏の夜だったので、いつまでたってもむし暑く、ねむたくてもなかなかねむれません。
 男は夜ふけになって、やっと、うとうとしはじめました。
 びょうぶの向こうでねている女の人も、やはりねむれないのでしょうか。
 いつまでもモゾモゾしていましたが、そのうちに急に起き上がる気配がしました。
(はて。便所にでもいくのかな?)
 男はそう思いましたが、けれども、となりはすぐに静かになりました。
 ところがしばらくすると、びょうぶの向こう側から、生あたたかい風が吹いてきました。
 そして女の人の白い顔がびょうぶの上にのびあがって、フワフワと部屋の中を動き始めたのです。
 男はビックリして、ゴクリと息を飲み込みました。
(さては、となりの女はろくろっ首だな)
 男はねたふりをしながら、くらい部屋の中を動きまわる女の白い首を見ていました。
 女の首は男の足もとの方へいったかとおもうと、びょうぶの上をつたわって、天井の方へものぼっていきます。
 細くなった白い首が、クネクネとのびていきます。
 男はろくろっ首が少しでも悪さをしたら、飛びかかっていって長い首をひきちぎってやろうと思いましたが、けれどもろくろっ首は、何も悪さをしません。
 ただフワフワと、楽しそうに部屋の中を動きまわっているだけでした。
 だけどそのうちに、女の白い首は半分開いた雨戸(あまど)の間から、するりと外へ抜け出していきました。
(はて。どこへいくのだろう?)
 どうせねむれないので、男は頭をあげると、ろくろっ首がのびていくあとを追って、雨戸の間から外へ出て行きました。
 美しいろくろっ首は、宿屋の前のとおりをよこぎって、お地蔵(じぞう)さんのたっている林の中へ入っていきました。
 そして林の奥にある池のほとりまでフワフワのびていくと、ヘビのように長い舌を出して、池の水をペロペロとなめはじめたのです。
(なんだ、水を探していたのか。のどがかわいていたので、こんなところへ水を飲みにきたのだな。そういえば、おれものどがかわいたな)
 そっとあとをつけてきた男は、木のかげにかくれてゴクリとのどをならしました。
 そのとき、水を飲んでいたろくろっ首が男の方を向いて、ニヤリと笑ったのです。
(しまった。見つかったかもしれん)
 男は急いで宿屋へもどり、また雨戸の間から部屋の中に入ると、なにくわぬ顔をしてねむってしまいました。
 さて、次の日の朝の事です。
 男より早く目を覚ました女が、びょうぶのかげから男に声をかけてきました。
「昨日の晩は、ずいぶんむし暑かったですねえ。よくねむれましたか?」
「まったく。本当に、むし暑かったですなあ」
 男はそう答えながら、ふとんをかたづけて、びょうぶをとりのぞきました。
 女の人はカガミに向かって、髪の毛をととのえていました。
「暑かったけれど、昨日は疲れていたのか、わたしはぐっすりとねむって、夢一つ見ませんでした」
 男はわざと、とぼけた事をいいました。
「あら、そうでしょうか? あなたさまは不思議な事をなさいましたが」
 女の人は口もとに手をあてて、笑いをおさえながらいいました。
「はて。わたしが不思議な事を? それは、どういうことですか? 不思議な事をしたのは、むしろあなたではないですか」
 男が少し怖い顔で言い返すと、
「あら、わたしが不思議な事? わたしがいったい、何をしました?」
と、いうのです。
「それなら、いってやりましょう。あなたは美しい顔をしているが、じつはろくろっ首で、この部屋の雨戸から抜け出して、むかいの林の中にある池へ水を飲みにいったではないですか!」
 すると女の人が、ケラケラと笑いながらいいました。
「あなたさまは、ご自分の事に気づいてないのですか?」
「なにをです!」
「この部屋は、二階ですよ」
「・・・あっ!」
「ようやく気がついたのですね。あなたさまが首をどんどんと長くのばして、ずっとわたしのあとをつけてきたことを。夜中にこっそり女のあとをつけるなんて、あまりいいご趣味とはいえませんね」
「・・・・・・」
 男はこの時はじめて、自分もろくろっ首であることに気づきました。
 女のろくろっ首はニコニコ笑いながら、男のろくろっ首にいいました。
「ここでこうして出会ったのも何かの縁。どうです。似た者同士、これから旅を続けませんか?」
「・・・いえ、せっかくの申し出ですが」
 男は急いで旅のしたくをすると、どこへともなく去っていったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 交通信号の日
きょうの誕生花 → クロトン
きょうの誕生日 → 1955年 アグネス・チャン(歌手)



きょうの日本昔話 → なまけ弁当
きょうの世界昔話 → 岩じいさん
きょうの日本民話 → ろくろっ首
きょうのイソップ童話 → シカとほらあなのライオン
きょうの江戸小話 → あせ


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8月19日の日本民話 長すぎたわらぞうり

2009-08-19 06:26:16 | Weblog

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8月19日の日本民話


長すぎたわらぞうり



長すぎたわらぞうり
高知県の民話高知県情報


 むかしむかし、ある大きな屋敷に、万六(まんろく)というお百姓(ひゃくしょう)さんが働いていました。
 ところが、この屋敷の主人はひどいわがままで、少しでも気にいらないことがあると、すぐどなりつけるのです。
 ある時、主人が万六を呼んで、
「明日の朝、早くに出かけるから、お城までのわらぞうりをつくっておくように」、
と、言いました。
 万六は、さっそくワラを山ほど持ってきて、やわらかく打ちはじめました。
「あんなにたくさんワラを打って、どうしようというのだろう?」
 主人は、不思議に思いましたが、
「まあいい。きっと、たくさん作るつもりだろう」
と、そのままにしておきました。
 ところが万六は仕事場にこもって、夜も寝ないでわらぞうりをあんでいます。
「うむ、なかなかの働き者じゃ」
 主人は感心して、寝床に入りました。
 次の日の朝早く起きてみると、万六はまだ仕事をつづけています。
「万六、そろそろ出かけるから、わらぞうりを持ってきてくれ」
 主人が言うと、万六がこまったように言いました。
だんなさま、きのうから寝ないでわらぞうりをあんでいますが、まだできません」
「そんなバカな。三足もあれば、たくさんなんだぞ」
 主人は仕事場にきてみてビックリ。
 万六は、まるでおびのように長いわらぞうりをつくっていて、後ろにうず高くもりあげているのです。
「万六、そりゃなんだ?」
 すると万六さんは、いよいよこまって、
「すみません。お城までのわらぞうりと言われたので、いっしょうけんめいつくりましたが、まだこれだけで」
と、言って、あみつづけのわらぞうりの先をふって見せました。
「城まで続くわらぞうりなど、誰がつくれと言った!」
 だんなさんは、すっかり腹を立てましたが、いまさらどうすることもできません。
「しかたがない。わらぞうりはどこかで買うとしよう」
と、言って、古いわらぞうりをはいて出かけていきました。
 万六はそれを見て、ニヤリと笑いました。
「ふん、からかわれているとも知らずに」
 イタズラでも一生懸命する、万六でした。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → バイクの日
きょうの誕生花 → カンナ
きょうの誕生日 → 1974年 ふかわりょう(コメディアン)


きょうの新作昔話 → 雪女の恩返し
きょうの日本昔話 → 刀のごちそう
きょうの世界昔話 → 大きなスイカ
きょうの日本民話 → 長すぎたわらぞうり
きょうのイソップ童話 → 馬とウシとイヌと人間
きょうの江戸小話 → ひょうさつ


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8月18日の日本民話 おしゃかさまとオニ

2009-08-18 06:08:44 | Weblog

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8月18日の日本民話


おしゃかさまとオニ



おしゃかさまとオニ
山形県の民話山形県情報


 むかしむかし、あるところに、こわいが人をさらっては食べてしまうので、人々はたいへんこまっていました。
 その鬼の事を知ったお釈迦(しゃか)さまは、鬼たちを呼びつけると、まっ黒くなるまでいったマメを渡して、
「このマメを畑にまき、マメから芽(め)が出るまでは、決して人を食べてはいかんぞ」
と、言いました。
 鬼たちは毎日畑に行っては、マメに水をかけ続けました。
 いったマメからは芽が出るはずはありませんが、なんと1ヶ月後、いったマメから芽が出てきたのです。
 鬼たちは喜んで、その事をお釈迦さまに知らせに行きましたが、こまったお釈迦さまは、
「あいにくと、今日はいそがしくて見に行かれない、明日必ず行くから待っておれ!」
と、鬼たちをひとまず帰しました。
「それにしても、いったマメから芽が出てくるとはな。さて、今晩中にマメの芽をなくさなければ」
と、お釈迦さまはネズミたちを呼ぶと、
「お前たち、今すぐ鬼の畑に行って、マメの芽を根っこから食べてこい」
と、いいつけました。
 次の日、お釈迦さまは鬼の家に行き、
「先ほど、お前たちの畑に出かけたが、畑には一本の芽も出ていないぞ。さては、人を食べたくて嘘(うそ)をついたな!」
と、鬼をしかりつけました。
「おかしいな。たしかに、マメから芽が出たはずだが・・・」
 鬼たちが畑に確かめに行くと、近くの木に止まっていたカラスが、
「さっき、お釈迦さまのネズミが来て、マメの芽を食べて行ったよ」
と、話してしまったのです。
 それを聞くと、怒った鬼たちは、
「お釈迦さまがネズミを出してマメの芽を食べさせたなら、俺たちはネコを出してネズミを食わしてやる」
と、ネコを出してネズミを食べさせてしまいました。
 それからというもの、ネズミはネコを見るとすぐに逃げるようになったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 北海道清酒の日
きょうの誕生花 → むらさきおもと
きょうの誕生日 → 1972年 中居正広(歌手)



きょうの日本昔話 → 約束の日
きょうの世界昔話 → 白鳥の王子
きょうの日本民話 → おしゃかさまとオニ
きょうのイソップ童話 → 年をとった馬
きょうの江戸小話 → 化け物べい


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8月17日の日本民話 はじを知れ

2009-08-17 07:11:54 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 8月の日本民話


8月17日の日本民話


はじを知れ



はじを知れ
愛媛県の民話愛媛県情報


 むかしむかし、あるところに、貧乏なおじいさんとおばあさんがいました。
 明日は正月だというのに、貧乏(びんぼう)なので何の用意も出来ていません。
 しかたがないのでふとんに寝ていたら、夜中にドロボウがしのびこんできました。
 ですが、ひどい貧乏なので、家のどこを探しても、金になるようなものは何一つありません。
 ドロボウがあきらめて帰ろうとすると、おじいさんが言いました。
「ばあさんや、さっきからドロボウがきているようだが、どうするね?」
 すると、おばあさんが言いました。
「なあに、かまうもんですか。取る物なんて、なんにもありゃしませんよ。こんな家にしのびこむなんて、よっぽどまぬけなドロボウですね」
「そうだな、本当にまぬけなドロボウだ。あはははは」
 それを聞いて、ドロボウが腹を立てました。
 二人の寝ている枕もとへいくと、枕をけとばしてどなりました。
「やいやい! 人をバカにするのもいいかげんにしろ! 取る物もないような家に住んでいる、お前たちの方こそはじを知れ!」
 すると、おばあさんが言いました。
「それは、すまんことで。でも、その何もない家にしのびこむなんて、お前さんは、わたしらよりも貧乏なんですね」
「あっ・・・・」
 たしかにそのとおりだと思い、ドロボウは急に恥ずかしくなって、あわてて逃げていったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → パイナップルの日
きょうの誕生花 → ダツラ
きょうの誕生日 → 1959年 赤井英和(俳優)


きょうの新作昔話 → ヘビダコ
きょうの日本昔話 → 亡霊の果たしあい
きょうの世界昔話 → 食いしん坊の女
きょうの日本民話 → はじを知れ
きょうのイソップ童話 → ヤギと番人
きょうの江戸小話 → 化け物退治


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