きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

7月26日の日本民話 あやしい火の行列

2009-07-26 07:02:20 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 7月の日本民話


7月26日の日本民話


あやしい火の行列



あやしい火の行列
滋賀県の民話滋賀県情報


 むかしむかし、琵琶湖(びわこ)のほとりの村で、不思議なさわぎがおこりました。
 大雨があがった、ある夜ふけの事、琵琶湖の中から大入道(おおにゅうどう)のようなものたちがつぎつぎと現れたのです。
 そして大入道たちは松明(たいまつ)のような火をつらねて、伊吹山(いぶきやま)へのぼっていくのです。
 大入道たちはおしだまったままですが、その足音がものすごい地ひびきとなって、村の家々をゆすりました。
 寝しずまった人たちは、
「地震だ!」
と、さけんでとびおきましたが、いち早く外へとびだした者たちが、
「これは地震ではない! 大入道の行列だ!」
と、ゆれる家の中へ逃げかえっていきました。
 家の中でふるえていると、大入道たちは伊吹山の頂上までのぼりつめたのか、やがて地ひびきも消えていきました。
 次の日の朝、大入道たちが歩いたあとには、三十センチをこえる大きな足跡が、五、六メートルの歩幅(ほはば)でつづいていました。
 その足でふまれた草や畑の作物は、みな松明の火で焼かれたように、足跡の形にこげています。
 こんな不思議な事、五、六十年に一度くらいおこるのです。
 子どものころ出会って、今度が二度目という村のあるおじいさんが、
「あのときもたしか、大雨があがった夜ふけの事だった。大入道の行列だというが、あれは琵琶湖の底にある竜宮城へまねかれていた伊吹山の明神(みきょうじん)さまが、山へ帰るときの行列じゃよ」
と、言ったという事です。


おしまい


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7月25日の日本民話 産女のゆうれい

2009-07-25 06:55:11 | Weblog

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7月25日の日本民話


産女のゆうれい



産女のゆうれい
長崎県の民話長崎県情報


 そのむかしむかし、麹屋町(こうじやまち)という所に、一軒のアメ屋がありました。
 ある夏の夜の事、戸をトントンたたく者があるので、アメ屋の主人が戸をあけると、青白い顔をした姿の若い女が力のない声で、
「夜ぶん、まことにすみません。アメをわけてください」
と、一文(いちもん→30円ほど)をさし出したのです。
 アメ屋の主人がアメを手わたすと、女は無言で立ちさって行きました。
 この不思議な女は、次の日もその次の日も、きまって夜おそくやってきました。
 さて、ある晩、アメ屋の主人は、このあやしげな女の後をつけて行くことにしました。
 麹屋町をぬけて、光源寺(こうげんじ)の門の前までくると、女の姿が門の中へ消えてしまいました。
 あたりはぶきみに静まりかえっています。
(おっかねえな。帰ろうかな)
と、アメ屋が思っていると、突然に暗やみから、
「オギャー、オギャー」
と、赤ん坊の泣き声がひびいてきました。
「ヒェーー! た、たすけてくれー!」
 アメ屋の主人は寺の本堂にかけこみ、和尚(おしょう)さんを起こしました。
 さっそく和尚さんは、声のする墓(はか)を掘りおこすと、先日うめたばかりの女の死体から、赤ん坊が生まれていたのです。
 赤ん坊を抱きあげてみると、アメ屋の主人が女に売ったアメをしゃぶっているではありませんか。
 あの女は、この子の母親の幽霊(ゆうれい)だったのです。
 赤ん坊は和尚さんに引きとられ、母親の供養(くよう)もすませたある晩のこと、
「ありがとうございました。子どもを助けていただいたお礼に、あなたさまの願いをなんでもかなえてあげましょう」
と、アメ屋の主人のまくらもとに、女の幽霊が現れたのです。
 麹屋町では水不足でこまっていましたので、アメ屋の主人は、
「水がほしい」
と、たのみました。
 女の幽霊は静かにうなずいて、
「女物のクシが落ちているところを、ほってください」
と、言って、消えてしまいました。
 それからしばらくたったある日、アメ屋の主人が麹屋町で、一本の赤いクシをひろいました。
 そこをほりはじめると、にわかに水がわき出したのです。
 そのわき水はつきることなく、町の人はとても喜んだという事です。


おしまい


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きょうの誕生日 → 1964年 高島礼子(俳優)



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7月24日の日本民話 こぼし石

2009-07-24 06:51:12 | Weblog

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7月24日の日本民話


こぼし石



こぼし石
三重県の民話三重県情報


 むかしむかし、普門寺(ふもんじ)という寺に、カッパが住んでいました。
 このカッパはお寺の小坊主よりもずっと小さかったので、「こぼし」という名前が付けられていました。
 このこぼしは髪を長くのばし、頭の上の部分だけはげになっているので、誰が見ても一目でわかります。
 カッパは頭のはげの部分がぬれていて、もしこの頭の水がなくなってしまうと死んでしまうので、いつも海や川に行って泳いでいました。
 さて、この村にはウマを飼っている家が一軒しかありません。
 村の人たちはこの一頭のウマをめずらしがって、たくさんの人が見に来ていました。
 ある日の事、こぼしもウマを見に行きましたが、ウマはこぼしのほうに尻をむけて知らぬ顔をしています。
 そこで、こぼしは、
「なんだ、おれが来たのに知らん顔をするとは、けしからんではないか!」
と、いって怒ると、ウマは、
「なんだ、普門寺に住むカッパか」
と、尻をむけたままいいました。
「そうだ、おれはこぼしだ。少しはこちらをむいたらどうだ」
と、いうなり、ウマのしっぽをつかんで
「このウマのやつめ!」
と、引っぱったので、おこったウマは後ろ足でこぼしをけりつけたのです。
 けられたこぼしは転んだひょうしに、たいせつな頭を地面にぶつけてしまいました。
 するとたちまち、水がポタポタと流れおちます。
 こぼしはあわててお寺へ帰りましたが、頭のくぼみはすっかりこわれてしまい、自分ではなおすことができません。
 こぼしはどうしたらよいだろうと考えているうちに、海岸の遊び場にある、二つの石の事を思いだしました。
 こぼしはこの石をお寺の前まで運んで来て、この石をこわれたくぼみの上に重ねておきますと、たちまち傷はなおって、すっかりもとの頭になっていました。
 これを見ていた、お寺のお坊さんが、
「なんともけっこうな石じゃなあ。これはきっと万病(まんびょう)にきくから、ぜひ一つ残していってくれ」
と、いいました。
 そこでこぼしは、一つはお寺に、もう一つはもとの海岸にかえしました。
 さて、お寺に残された石は、水がなくなりそうになると不思議な事に、
「水がほしい、水がほしい」
と、いうのです。
 この石に頭から水をかけてやると、喜んでお礼をいいました。
 お寺に一つ、海岸に一つあるこの石を、いつの頃からか「こぼし石」と呼ぶようになり、水難よけの守り神として、人々は毎年お礼をいただくようになりました。
 それは、このカッパが石となって、いつまでも生きているからだという事です。


おしまい


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7月23日の日本民話 竜女おすわ

2009-07-23 08:47:19 | Weblog

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7月23日の日本民話


竜女おすわ



竜女おすわ
長崎県の民話長崎県情報


 そのむかしむかし、島原(しまばら)のご城下に、杏庵(きょうあん)という若い医者がいました。
 たいへんな親孝行で、母親と二人きりで暮しています。
 ある日、杏庵は薬草をとりに、霊仙岳(うんぜんだけ)のふもとの諏訪(すわ)の池に出かけますと、五、六人のイタズラ小僧が、一匹の大きな白ヘビをいじめています。
 これを見ていた杏庵は、イタズラ小僧をおいはらって、白ヘビを池の中へ逃がしてやりました。
 ある雨の夜、一人の若い娘が、びしょぬれになって杏庵の家ののき下に立っていました。
 杏庵は親切にその娘を家の中に入れて、事情を聞きました。
 すると娘は、シクシク泣きながら、
「長い旅の途中、足にケガをしてしまいました。傷の手当てをしていただけないでしょうか?」
と、たのみました。
 杏庵はさっそく傷の手当てをしてやりましたが、娘はすっかり疲れきった様子です。
 杏庵は母親に相談して、足の傷が治るまで家にとめてやることにしました。
 それから、半月ばかりがすぎました。
 娘はすっかり元気をとりもどし、足の傷も治りました。
 そんなある日の事、
「すっかりお世話になりました。おかげさまで、こんなに元気になりました。このご恩は一生わすれません。事情があって薬代も持ち合わせません。でも、必ずお返しにあがります。わたしの名は、おすわと申します」
と、おすわは帰って行きました。
 その後、杏庵が急な病気でねこんでしまいました。
 母の必死の看病(かんびょう)にも、よくなりません。
 母も、すっかり疲れはてました。
 そこへ、おすわがたずねてきたのです。
 おすわが母親にかわって杏庵の看病をしますと、病気は急によくなり、杏庵は元気になりました。
「あなたはわたしの命の恩人じゃ。よければ、うちにいてくだされ」
 杏庵も母も、美しくて気だてのよいおすわをすっかり気にいりました。
 やがて二人は結婚し、男の子が生まれました。
 その子は、幸太郎(こうたろう)と名づけられました。
 さて、ある夏の暑い日の事です。
 杏庵が外からもどって来ると、とぐろを巻いた(りゅう)が幸太郎におっぱいをのませているのです。
 そして竜は、おすわの姿にかわりました。
 本当の姿を知られたおすわは、幸太郎を残して立ち去って行ったのです。
 幸太郎の手には、キラキラ光る玉がにぎられていました。
 その夜から、諏訪(すわ)の池に地鳴りが続き、ある日とつぜん、雲仙岳(うんぜんだけ)が大爆発を起こしました。
 この地震で外へ飛び出した杏庵は、大空へ苦しげに飛び去る片目の竜を見ました。
 この竜はおすわで、片目は幸太郎の持つ光った玉だったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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きょうの誕生日 → 1787年 二宮金次郎



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7月22日の日本民話 美しい竜の娘

2009-07-22 08:12:44 | Weblog

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7月22日の日本民話


美しい竜の娘



美しい竜の娘
愛知県の民話愛知県情報


 むかしむかし、知多湾(ちたわん→愛知県西部)の海の底に、親子三匹のがすんでいました。
 天気のいい静かな日の夕方などは、沖へでた漁師(りょうし)の舟が岬(みさき)をまわってくると、白い波がうちよせる岩の上に竜の親子がいるのが見られました。
 上半身だけ人間に姿をかえた竜の両親と、長い髪を腰のあたりまでたらした娘が、夕日の中で仲むつまじく語りあっているのです。
 ある年の、月の美しい日の事です。
 この日は豊石神社(とよいしじんじゃ)のお祭りで、夜になると村や町からたくさんの若者たちが集まってきました。
 若い男たちは海に入って身を清めたあと、ふんどし一丁で花火を夜空にうちあげて、お祭りをもりあげるのでした。
 長い髪を腰までたらした竜の娘も、お祭りが見たくて姿を人間の娘にかえて神社へやってきました。
 そして時のたつのも忘れて、うちあげ花火や祭りばやしをたのしんでいましたが、そのあいだに海の水は、はるか沖合いまでひいてしまったのです。
 竜の娘は帰る道がわからなくなってしまい、とほうにくれて砂の上でうつむいたまま泣いていました。
 その声をききつけたのか、一人の若い(さむらい)がやってきて、やさしい声でたずねました。
「なぜ、こんなところで泣いているのですか?」
 竜の娘はだまって顔をふせていましたが、若い侍は心配して、竜の娘をいたわりながら自分の屋敷へつれていったのです。
 若い侍はお城の家老(かろう)の息子で、作之進(さくのしん)という青年でした。
 竜の娘は人間の姿のまま、何日も屋敷にいました。
 そして、やさしいもてなしを受けているうちに、作之進とふかく愛しあうようになりました。
 竜の娘は小夜衣(さよぎぬ)とよばれて、屋敷のだれからもやさしくされていました。
 けれども心の中では、いつも両親の事が心配でなりません。
 月の美しい夜など、小夜衣は海辺にいって波の音に耳をかたむけると、元の竜にもどって両親のいる海の底へ帰ろうか、それともこのまま人間の姿で恋しい作之進と生きようかと、なやみつづけていました。
 けれど小夜衣は、作之進と別れることはできないと思いました。
「このままの姿で、いつまでも作之進さまのそばにいたい」
 小夜衣は、強くそう思いました。
 それから何日かたった、ある朝の事です。
 漁師が神社の近くの海辺に、下半身は竜で上半身が髪の長い、美しい女の人の死体が流れついているのを見つけました。
 それは、かわりはてた小夜衣の姿だったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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きょうの誕生日 → 1959年 森公美子(オペラ歌手)


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きょうの日本民話 → 美しい竜の娘
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