きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

3月26日の日本民話 大ムカデ退治

2008-03-26 05:16:23 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月26日の日本民話

大ムカデ退治

大ムカデ退治
滋賀県の民話滋賀県情報

 むかしむかし、近江の国(おうみのくに→滋賀県)に、俵藤太(たわらとうた)という弓の名人がいました。
 あるの事、琵琶湖(びわこ)にかかっている橋を渡っていると、人間の五倍もある大蛇(だいじゃ)が、橋のまん中に横たわっていました。
 二つの目をランランと光らせて、口から炎をはきだしています。
 たいていの者ならこれを見て逃げだすでしょうが、さすがは弓の名人、
「こんなところに寝そべるとは、じゃまなやつだ」
と、いいながら、藤太は大蛇の背中をゆうゆうとふみしめながらのりこえていったのです。
 すると、うしろから、
「もし、もし」
と、呼びとめる者がいます。
(さては大蛇め、背中をふまれて腹をたてたか)
 そう思ってふりむいてみると、そこには大蛇の姿はなく、美しい女が立っていました。
「なにか用か?」
「はい、あなたさまにぜひお願いしたいことがございます」
 美しい女は、ていねいに頭をさげました。
「正直に申しあげます。こんな姿に化けてはおりますが、わたくしはこの橋の下に住むでございます。あなたがとても強い(さむらい)と聞いて、大蛇に化けて橋の上に寝ておりました。うわさどおりあなたは勇気のあるおかたで、大蛇を見ても顔色一つ変えませんでした」
「なるほど、それにしても美しい女に化けたものだ」
「ありがとうございます。それで、じつはむこうに見えます三上山(みかみやま)に住む大ムカデが、ときどきこの湖に来て、わたくしどもの仲間をさらっていくのです。このままでは竜の一族はほろんでしまいます」
「なるほど、しかしあいてはたかがムカデであろう。竜ならムカデなど」
「いいえ。なにしろ相手は三上山を七巻き半も巻くという大ムカデ。とてもわたくしどもの手におよびません。お願いです。どうか大ムカデを退治してください」
 女に化けた竜は、手を合わさんばかりに頼みこみました。
 そこまで頼まれれば、藤太もあとへはひけません。
「わかった。そんなにこまっているなら、わしが助けてあげよう」
「ありがとうございます。では、こちらへ」
 女は藤太の前に立って、歩きはじめました。
 いつのまにできたのか、湖の上に道が続いていて、その上を女はどんどん進んでいきます。
 しばらく行くと、むこうに竜宮城が見えてきました。
 金銀をちりばめた御殿(ごてん)は、目のさめるような美しさです。
(ほう。これが竜宮城というものか)
 藤太がうっとりながめていると、竜王(りゅうおう)が家来をつれて迎えに出てきました。
「さあ、どうぞどうぞ」
 藤太の案内された部屋は、水晶をしきつめた大広間です。
 おぜんの上には山のようにごちそうがならべられ、金のかめには上等の酒がなみなみと入っています。
 やがて美しい女たちが現れ、笛や鐘(かね→小形の叩いて鳴らす楽器)の音にあわせて踊りはじめました。
 藤太はまるで夢の中にいるような気分で、時間のたつのも忘れていました。
 そのうちに、大広間がきゅうに暗くなりました。
「藤太さま、大ムカデがやってきました」
 藤太を竜宮城へ案内した女がふるえる声でいうと、われにかえった藤太は弓と矢を持って立ちあがりました。
「よし、みんなかくれろ」
 三上山の空がにわかに赤くなったかと思うと、何百もの火の玉が飛びかって、それがこっちへとむかってきます。
「あれは、大ムカデの目にちがいない」
 藤太は弓に矢をつがえると、いちだんと光っている二つの火の玉のまん中をめがけて矢を放ちました。
 ガチン!
 矢が岩にあたったような音をたてて、はねかえりました。
 藤太はすばやく、二本目の矢を放ちますが、
 ガチン!
 この二本目の矢も、はじきとばされてしまいました。
 矢はもう、あと一本しか残っていません。
 大ムカデはうなり声をあげながら、どんどん近づいてきます。
「これは弱った、どうしたものか」
 さすがの藤太も、少しあわてました。
「ああ、どうしたらいいのだ? なにか弱点でもあればいいまだが・・・」
 竜王は、藤太の横でおろおろするばかりです。
「弱点。・・・うむ。そうだ、忘れていた」
 藤太は三本目の矢の先を口に入れると、たっぷりと魔よけのつばをつけました。
 魔物というものは、人間のつばが大きらいなのです。
 その矢を弓につがえると、力いっぱい引きしぼり、
「これでもくらえ!」
と、放ちました。
 矢はうなりをあげて飛んでいき、大ムカデの額(ひたい)へと食い込みます。
「ウギャーーー!」
 大ムカデは地響きのような叫び声をあげました。
 それと同時に、何百という火の玉が一度に消えたかと思うと、ものすごい水しぶきがあがります。
 ふと見ると、湖の水がまっ赤で、額に矢を射られて死んだ大ムカデのからだが、ゆらゆらとゆれていました。
「ありがとうございました。これで安心して暮らせます」
 竜王は何度も頭をさげて、お礼を言いました。
 それから家来に命じて、米を一俵と絹を一反(いったん→幅二十七センチ、長さ九メートルの布)、そして釣り鐘を一つを運んでこさせて、
「これはお礼のしるしです。どうかお持ちください」
と、言いました。
 藤太は喜んで贈り物を受けとり、竜王の家来たちに運ばせながら家へ持って帰りました。
 不思議な事に、米俵の米はいくら出してもへることがなく、絹の反物(たんもの)も切れば切るほどふえていきました。
 おかげで藤太は、なに不自由なく暮らすことができました。
 そして釣り鐘は、近くの三井寺に奉納(ほうのう→寺や神社にものを納めること)したのです。
 その美しい鐘の音は、琵琶湖を渡り近江の国のすみずみまで鳴りひびくと言われています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → カチューシャの歌の日
きょうの誕生花 → しゅんらん
きょうの誕生日 → 1975年 石塚義之 (芸人)

きょうの日本昔話 → 八匹のウシ
きょうの世界昔話 → 月の見ていた話 二夜
きょうの日本民話 → 大ムカデ退治
きょうのイソップ童話 → ガチョウとまちがえられた白鳥
きょうの江戸小話 → 入りにくい

hukumusume.com サイト一覧


3月25日の日本民話 昆布買い

2008-03-25 05:11:21 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月25日の日本民話

昆布買い

昆布買い
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、あるところに、男の子がいました。
  ある日の事、お母さんが男の子をよんで言いました。
「おみそ汁に入れるから、昆布(こんぶ)を買ってきておくれ」
「うんいいよ。昆布だね」
  男の子は忘れないように、口の中で、
「昆布、昆布」
と、言いながら、歩いていきました。
  すると、小さな溝(みぞ)がありました。
  男の子は、
「ピントコショ」
と、言って、溝をとびこえました。
  そのとたん、昆布がピントコショにかわってしまいました。
「ピントコショ、ピントコショ」
と、言いながら、男の子は昆布を売っているお店へいきました。
「ピントコショおくれ」
「なに、ピントコショだって? さて、そんなもの聞いたことがないな。いい子だから、もう一度お家に帰って聞いておいで」
  男の子は、また、
「ピントコショ、ピントコショ」
と、言いながら、うちへ帰ってきました。
「お母さん、ピントコショないよ」
「バカだね、この子は。そんなものあるわけがないだろう。ピントコショじゃなくて昆布だよ。昆布」
「そうか、昆布だったのか」
  男の子は、口の中で、
「昆布、昆布」
と、言いながら、お店のほうへ歩いていきました。
  ところがまた、溝をとびこえるとき、
「ピントコショ」
と、言ってしまいました。
「ピントコショおくれ」
  それを聞いたお店の人は、あきれた顔で言いました。
「さっきも言ったが、ピントコショじゃわからんだろう」
  男の子は、またまた、
「ピントコショ、ピントコショ」
と、言いながら、うちへ帰ってきました。
「やっぱり、ピントコショはないよ」
「ああ、本当にダメな子だねえ。昆布ぐらい言えなくてどうするの!」
  お母さんは腹を立てて、男の子の頭をげんこつでなぐりつけました。
  するとポコンと、たんこぶが出来ました。
「昆布! 昆布! 昆布! さあ、言ってみな!」
「昆布、昆布、昆布」
  男の子は、頭のこぶをおさえながら言いました。
「ちゃんと言えるじゃないの。さあ、もう一度いっておいで」
  男の子は、
「昆布、昆布」
と、言いながら、さっきの溝のところまできました。
「そうだ、ここを飛ぶときに、ピントコショと言うからいけないんだ」
  そして溝を飛ばずに、ゆっくりと渡ると、
「やったー。ピントコショと言わなかったぞ」
と、言ったとたん、またまた昆布がピントコショにかわってしまいました。
「ピントコショ、ピントコショ」
  男の子はお店にやってくると、いいました。
「ピントコショおくれ」
「ああ、やっぱりだめだ。こっちはいそがしくて、とてもお前の相手はしておれん。とっとと帰っておくれ」
  そう言って、お店の人がふと男の子の頭を見ると、大きなたんこぶができています。
「どうした、そのこぶは?」
  すると男の子は、ニッコリ笑って、
「ああ、そのこぶ(昆布)を買いにきた」
と、言いました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 電気記念日
きょうの誕生花 → おうれん
きょうの誕生日 → 1959年 嘉門達夫 (シンガー)

きょうの日本昔話 → 酒を買いに行くネコ
きょうの世界昔話 → アイリーのかけぶとん
きょうの日本民話 → 昆布買い
きょうのイソップ童話 → 人とサチュロス
きょうの江戸小話 → 自分であがる

hukumusume.com サイト一覧


3月24日の日本民話 じゃんじゃん

2008-03-24 06:26:40 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月24日の日本民話

じゃんじゃん

じゃんじゃん
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、あるところに森がありました。
 村人の年寄りたちは、
「この森の下には海が広がっていて、森をほると塩水が出てくるんじゃ」
と、いっていました。
 そこで村の若者たちは、海までほってみようということになり、長い竹筒(たけづつ)を何本も何本もつないで地面につきさしてみました。
 ところが何本つないでみても、いっこうに水が出ません。
「年寄りの話は、うそじゃったんじゃ」
 あきらめて帰ろうとしているところへ、一人の(さむらい)がやってきて、
「ここですもうをとろう。そうすれば負けたものがドスン、ドスンと尻もちをつくから、その重みで水が出るかもしれん」
と、いいました。
 そしてまた、
「それから負けたものは、を一本づつこの竹筒の中へ投げこもう、そうすると海の井戸の神さまが怒って、水を出すかもしれんぞ」
と、いったのです。
 村人はすもうをとりはじめ、負けたものが刀を竹筒の中へ落すと、竹筒の底の方から、
♪じゃんじゃん
と、何かが鳴りひびきました。
 そしてしばらくすると、底から水がふき出して、尻もちのくぼみに水がたまりはじめたのです。
 そのくぼ地は池になり、村の井戸からは水がどんどんふき出しました。
 水は今でも竹の筒から、
♪じゃんじゃん
と、つきることなくふき出しているそうです。
 これは、地面の下が海底になっているからだという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → マネキン記念日
きょうの誕生花 → かたくり
きょうの誕生日 → 1970年 原田泰造 (芸人)

きょうの日本昔話 → だまされたどろぼう
きょうの世界昔話 → 銅の国、銀の国、金の国
きょうの日本民話 → じゃんじゃん
きょうのイソップ童話 → いっしょに狩りにいったライオンとロバ
きょうの江戸小話 → なりたてのどろぼう

hukumusume.com サイト一覧


3月23日の日本民話 スズメとキツツキ

2008-03-23 06:47:04 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月23日の日本民話

スズメとキツツキ

スズメとキツツキ
福井県の民話福井県情報

 むかしむかし、スズメのお母さんが重い病気になって、今にも死にそうだという知らせがありました。
「そりゃ、たいへんだ!」
 ビックリした息子のスズメは、普段着のままで、大あわてでお母さんのところへかけつけました。
 仕事の途中で来たので、顔はドロだらけです。
 でも、元気な息子の顔を見たお母さんは、
「よくきてくれたね。ありがとう」
と、言ってよろこび、死にそうだった病気までよくなったのです。
 このことを知った神さまは、
「なんて、感心なスズメだ」
と、言って、虫のほかにも、人間と同じお米を食べることを許してくれたのです。
 そればかりか、人間の住んでいる近くでも、くらせるようにしてくれました。
 さて今度は、キツツキのお母さんが重い病気になり、今にも死にそうだという知らせがありました。
 でもキツツキはとってもおしゃれな娘で、毎日毎日遊んでばかりいます。
 ですから、その知らせを聞いたのも夜になってからでした。
(ふーん、そうなの。でもまあ、まだ死んだわけではないから大丈夫ね。それよりも、きっと近所の鳥たちもお見まいに来ているから、わたしのきれいなところを見せなくちゃ)
 キツツキは、おしろいをつけたり、べにをつけたりと、いつもよりていねいにおけしょうして、一番上等の着物を着て出かけました。
 でも気の毒に、お母さんは娘が来るのが待ちきれずに、死んでしまいました。
 さて、それを知った神さまはカンカンに怒りました。
「母親よりも自分が大事だなんて、なんてひどい娘だ!」
 そしてバツとして、木の中の虫しか食べられないようにしたのです。
 そればかりか、山の中でしかくらせなくしました。
 だからスズメは今でも自由にどこへでも飛んでいき、おいしいお米まで食べられるのに、キツツキは山の中にいて、木に穴を開けなければ虫を食べることができず、夜になるとくちばしが痛いと言って、ないているという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界気象の日
きょうの誕生花 → ベルゲニア(ヒマラヤゆきのした)
きょうの誕生日 → 1967年 七瀬なつみ (俳優)

きょうの日本昔話 → ほんとうの母親
きょうの世界昔話 → おじいさんとまご
きょうの日本民話 → スズメとキツツキ
きょうのイソップ童話 → サヨナドリとツバメ
きょうの江戸小話 → やぶ先生のぐち

hukumusume.com サイト一覧


3月22日の日本民話 キツネがついた幸助

2008-03-22 06:59:47 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月22日の日本民話

キツネがついた幸助

キツネがついた幸助
静岡県の民話静岡県情報

 むかしむかし、東海道(とうかいどう)ぞいのある村に、幸助(こうすけ)という、まじめで働き者のお百姓(ひゃくしょう)が住んでいました。
  この幸助が五十五歳になった、ある日の事です。
  どうしたことか、幸助がきゅうにおかしくなったので、奥さんはおどろいて近所の人たちを呼んできました。
  幸助は掛け軸(かけじく)がかかった床の間(とこのま)を背にしてきちんとすわり、こんなことをいいだしたのです。
「われは、大友(おおとも)の白ギツネである。このたび豊川(とよかわ)の稲荷(いなり)さまのつかいとして、江戸までいくことになった。江戸からもどるときも、またこの家を宿(やど)にかりたい。世話(せわ)になったな」
  そういって、幸助は旅のしたくをはじめたのです。
  奥さんと近所の人たちは、幸助をあわてて引き止めると、ふとんに寝かせてしまいました。
「これは、キツネがついたんじゃ」
  みんなが心配していると、幸助はふとんから起きあがりました。
  そして、きょとんとした顔つきで、
「おや? なんで、みんなここにおるんだ?」
と、いうのでした。
  正気(しょうき)にかえった幸助にいろいろたずねると、幸助はそれまでの事を、全くおぼえていないというのです。
  何日かたつと、幸助はまたおかしなことをいいました。
「われは、さきに宿を借りた大友の白ギツネである。いま江戸からもどってきた。また世話になるぞ。われはいま、五百歳になる。ここは日本一の富士の山も近くにながめられて、とてもよいところじゃ。社(やしろ)をつくって、われをまつれ」
  しばらくして正気にもどった幸助にこの話をすると、幸助はまじめな顔つきで、
「これも何かの縁(えん)だ。その大友の白ギツネとかの頼みをきいてやろう」
と、いって、家の敷地(しきち)に小さなお稲荷(いなり)さんの社をつくり、自分は白い衣をまとって神主(かんぬし)になりました。
  神主になった幸助は、病気や大漁(たいりょう)のおいのりをたのまれると、あちこちにでかけていって一心(いっしん)にお祈りをしました。
  すると、どんな願いでもすぐにかなえられるのでした。
  けれども、つかれはてて家に帰ってくると、それまでの事はすっかり忘れてしまい、自分がどこへいって何をしてきたのかも、いっさい思い出すことが出来ないのです。
  また幸助は、これまで絵をかいたことなど一度もありませんでしたが、それなのに突然、名人がかくような見事な絵をかくようになったのです。
  特に富士山の絵はすばらしく、もらっていった人たちは、家の宝にして床の間にかけていました。
  この幸助にキツネがつくようになってから四年後、「富士景色」と名づけたりっぱな画集(がしゅう)を二冊を残して、幸助はこの世をさったとの事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 放送記念日
きょうの誕生花 → れんぎょう
きょうの誕生日 → 1977年 松本リカ (タレント)

きょうの日本昔話 → まゆにつば
きょうの世界昔話 → オオカミになった弟
きょうの日本民話 → キツネがついた幸助
きょうのイソップ童話 → オオカミとヒツジ飼い
きょうの江戸小話 → 剣術指南

hukumusume.com サイト一覧