12月7日の日本民話
踊るネコ
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むかしむかし、隠岐島(おきのしま)のある村で、盆踊り(ぼんおどり)がおこなわれました。
となり村の若者たちが五、六人やってきて、夜中までたのしく踊って帰っていきました。
その若者たちが村ざかいの峠(とうげ)の道にさしかかったとき、どこからともなく、盆踊りのにぎやかな歌声がきこえてきました。
「おい。こんな山の中で盆踊りをやっとるぞ。どこでやっとるんだ?」
若者たちは不思議に思いながら、歌声がきこえるほうへ近づいていきました。
すると林の中の草地で月の光をあびながら、ネコが七、八匹集まって、手ぬぐいでほおかぶりをして踊りを踊っていました。
若者たちは杉の木のかげにかくれて、ジッと様子を見ていました。
やがて、一匹のネコが、
「トラどん、まだか? トラどん、まだか?」
と、いってはやしだすと、ほかのネコたちもすぐにつづけて、
「トラどん、まだか? トラどん、まだか?」
と、手ぶりも上手に、はやしたてるのです。
トラとよばれているネコは、峠をおりた自分たちの村の入口にある、お百姓(ひゃくしょう)の家のネコの事です。
もう十四、五年も生きている大きなトラネコで、若者たちもよく知っているネコでした。
踊っているネコたちは、おなかに手をあてたりしながら、
「トラどん、まだか? トラどん、まだか?」
と、はやしたてていました。
「これは、人間が見てはならん事になっておるネコの踊りじゃ。なんだか、気持ちがわるくなってきた」
「たたられたら大変じゃ。はやく帰ろう」
若者たちは小さな声でいいあうと、その場からはなれようとしましたが、けれども村へ帰るには、ネコたちが踊っている方向へ行かなくてはなりません。
すると、その気配(けはい)に気づいたのか、
「人間に見られた。人間に見られた」
と、ネコたちは次々と、むこうのやぶの中へ逃げていったという事です。
おしまい
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