土曜日。カズ念願の家族旅行の日。早起きしておにぎりをにぎって出発。
九重“夢”大吊橋や
やまなみハイウェイをドライブして城島高原パークで遊び、別府の温泉ホテルに宿泊、が、私が立てたスケジュール。
が、九重IC近くのトンネルを高速で走行中、突然エンジンがプスンプスンと嫌な音を立て、その音に合わせて車がガックンガックンと前後に揺れた。最初、私はダーがふざけてやっているのかと思ったのだが、彼が「あ、止まりそう…!」と珍しく焦っているのを見て、車の異常を知った。
怖い!
どうにか高速だけでも無事走り終えられますよう! いつ止まってもいいように、左に寄せながらゆっくり走ってもらい、なんとか高速を降りることができた。その後、いちおう車は普通に走っているので、心配する私をよそに、楽観的なカズとダーは「無かったことにしよう!」などとふざけたことを言っている。泣きそうな私。昨日事故を立て続けに見たのはこの予兆だったのかしらと思ったり。
焦げクサイし! やっぱりどう考えてもおかしい!
ガソリンスタンドが見えたので、ダーに給油をしよう見てもらおうと止まってもらうよう頼む。「こんなところで?」と不満気である。信じられない! このまま様子を見てもらわずに山を登り、目的地の橋を目指そうというのか。どこまでポジティブ、いや無謀なんだか…
で、即GSの人に相談すると、自分は詳しくはわからないので、ここからすぐのところにある自動車工場に行って見てもらったほうがいいと言われた。念のため、その人とは違う別の人がボンネットを開けて確認したところ、茶色い液体が吹き出していて、尋常じゃない状態であることは素人目にもすぐにわかった。「触ったら危ない! ◯◯(動揺していてよく聞こえなかった)が爆発するかも…!」とのこと。言われた通り、工場へ向かう。
家族経営の工場。息子さんが作業中の手をとめ、すぐに見てくれた。茶色い液体は恐らく劣化によるサビで、そのサビが原因となりエンジンを冷やす経路が詰まり、冷却液が熱せられて吹き出したのだろうとのこと。つまりオーバーヒート寸前。いつどこで止まってもおかしくない状態だったのだ。
内部を洗浄してもらっただけでなく、エンジンが冷えるまで待ったのでかなり時間はかかったが、なんとか旅は継続できる程度に修復してもらった。心配性だから「もう橋は諦めます」という私に、「せっかく来たんだから行ってらっしゃい」とダンナさん。「さっき私、試しに坂を走ってみたけど平気だったわ、大丈夫だから」と奥さん。「大丈夫ですよ。もし途中で何かあったら、電話ください」と名刺まで渡してくれた息子さん。なんていい人たちなんだ!
でも私は山道を登るのが怖くてたまらない。とにかく目的地、せめて遊園地に早く着きたい。ダーには、橋には行かないのかせっかくのあの人たちの好意を無にするのかと散々責められたが、もう私はパニックで気が狂いそうだったので、絶対に譲らなかった。
で、遊園地。家族で旅行したがったのは自分のくせに、カズは迷路と宝石探し以外ほとんど興味を示さず、「早くホテルに着いてゲームしたい」などと抜かし、もう絶対遊園地にはこいつは連れてこないと誓った。あっくんはなんでも乗りたいやりたいと積極的なのだが、こちらは身長が足りず乗ることができない。結局、私一人で、6万本の米松で組み上げたという日本初の木製コースター「ジュピター」に乗った(これは最高に楽しかった! 途中、偽オッパイが飛ぶかと思ったくらいの揺れとスピード、高低差なのだった。しかも長いから余計に怖い)。
暑さもあり、早々に切り上げて、ホテルにチェックイン。
子どもたちがベッドを飛び跳ねたり、ダーが一服している間、私だけ早速屋上露天へ。全摘してから実は初めての公衆浴場なのだけれど、もう別に誰にどう思われてもいいかと割り切りができた。別に悪いことをしたわけじゃなし、もともと人に見られるのは全然構わないと思っていたが、見た人がショックを受けるのではないかとそちらのほうを私はずっと気にしていたのだった。馬鹿みたい。
というわけで、適当にタオルでぺたんこの胸を隠しながら、普通に入浴を堪能した。ある意味、画期的な出来事だった。
ダーは子どもたちを連れて、唯一館内でWi-Fiがつながるロビーへモンストをしにいった。再び一人になったので少しベッドで休んだ後、車のことがどうしても気になってSBI損保へ電話して故障時の対応を尋ねたり、ネットで調べたホテル近隣の修理工場へ電話して、明日日曜日に見て修理してもらえないか尋ねたり。
夕食は、子どもらが喜ぶだろうとホテルのバイキングを予約してあった。申し訳ないが、刺身以外はハズレ。料金同じくらいの、以前抗がん剤中に子どもたちと来た隣のホテルのバイキングのほうが数段美味しかった。日本酒小瓶一本飲んで早々に退散。
満腹でだらだらした後、男たちは入浴。私も酔いが覚めたのを確認して、再び風呂へ。あっくんも来たがったので一緒に女湯へ連れて行った。
車の異常を感じたのがIC近くじゃなかったら、もし高速の途中で止まってしまっていたら、あの場所にガソリンスタンドがなかったら、自動車工場にすぐ修理してもらえなかったら、人っ子ひとりいない山道で止まっていたら…と考えると、本当にラッキー以外の何者でもなく、誰かに助けられていると神に感謝するしかなかった。なのに、そう言って道中拝む私を「全然ラッキーじゃない。相容れないすね、その考え方が」と蔑んだダー。先日、カズのことで責められたときもそうだったけれど、今回も、車の故障よりも、彼との諍いのほうが精神的に参った。
しかし、旅は続く…