風の音が聞こえませんか
小笠原 慧 著 角川書店 / 2007.9
川村美知は、保健福祉センターの障害保健福祉課で働く新人ケースワーカー。
統合失調症を抱え、通院も服薬も途絶えたまま一人暮らしのアパートにひきこもっている
杉浦晃の母親から相談を受けた彼女は、晃の訪問指導を引き受ける。
何度も厚い壁に跳ね返される美知だったが、しだいに彼女のひたむきさが晃の心を開いていく。
美知は、晃との間に些細な共通点を見つけては喜び、二人でいると素直な気持ちになれるのだった。
だが、晃の回復に取り組む中、美知は、晃の主治医・佐伯にも惹かれていく・・・・・・。
面白いという表現が適切かどうかは判りませんが、う~ん、面白かったです。
そうなんですよぉ~、面白かったんですよね~。
晃が魅力的に描かれていたことや、美知のひた向きさにハラハラさせられたりと、どこか目が離せない雰囲気がありました。
美知が佐伯を選んだ段階で、失速しちゃったな~と、それまでの面白みが半減しそうだったのですが、納得のラストだったので、総じてとても惹き込まれる小説でした。
晃がジュンちゃんと結婚したことは、正直、ちょっと驚いたのですが、このお話を終わらせる為には必要だと思われるので、これでよかったんだろうなと思います。
佐伯も、本当は美知とやり直したいのでしょうが、でも、美知はそれを選ばなかったところも、ある意味、晃や佐伯などたくさんの人達に迷惑をかけたことを考えると、正解だっただろうと思います。
結果、みんな苦しんだけれど、苦しんだ挙句、気持ち良く成長できたので、よかったんだと思います。