石野真琴のなんでもあり?

多趣味な石野真琴が、普段感じている事、将棋、祭り、甲冑等々、趣味の内容を描きます

外れ馬券は「必要経費」か?

2013-05-30 23:59:59 | 趣味
 「競馬で儲けた28億8000万円の一時所得を申告しなかった」――。巨額の「競馬脱税事件」として注目を浴びている裁判の判決が5月23日、大阪地裁で下される。週末には、競馬の祭典・日本ダービーが予定されているが、競馬ファンはこちらの結果も気になるはずだ。
 報道によると、被告人の男性(39)は100万円を元手に、当たり馬券の払戻金を次々につぎ込む形で馬券を購入。自作の予想システムを駆使し、2009年までの3年間で合計約28億7000万円分の馬券を買い、トータルで約30億1000万円の払い戻しを得た。つまり、差し引きして約1億4000万円の「黒字」となった。
 単純に考えると、この黒字分の約1億4000万円が「所得」であり、税金がかかるとしたら、この部分だと思うだろう。ところが、男性が確定申告しなかったために所得税法違反で起訴された際に、検察が「所得」と主張したのは、なんと28億8000万円という途方もない金額だった。
 なぜかといえば、検察は「外れ馬券の購入費」を無視して、「当たり馬券の購入費」のみを「必要経費」と評価しているからだ。検察は、約30億1000万円の「払戻金」から、約1億3000万円の「当たり馬券購入費」を引いた28億8000万円を「所得」と主張し、男性が約5億7000万円を脱税したと言っている。つまり男性は「儲けた金額」をはるかに上回る税金を納めろと要求されているのだ。
 競馬ファンからすれば、「外れ馬券の購入費」も含めてコストと考えるのが常識であり、「検察官は競馬をやったことがないんだろう」「もし検察の主張が通るようなら、馬券を買うのがアホらしくなる」といった声も聞かれる。裁判所がどんな判決を出すか注目されるが、裁判のポイントはどこにあるのか、競馬に詳しい奥山倫行弁護士に聞いた。
●馬券購入費は「必要経費」にあたるのか?
 今回の事件で、最大の争点となっているのは、外れ馬券の購入費が「必要経費」として認められるかどうか、だ。その点について、奥山弁護士は次のように説明する。
 「所得税法37条1項により、被告人の男性の馬券購入費が『必要経費』として認められるためには、次の2つのどちらかに該当しなければならないとされています。
(1)売上原価など、総収入金額を得るために直接要した費用
(2)販売費や一般管理費など、所得を生ずべき業務についての費用」
 では、今回の事件の場合は、どうなのだろうか。
 「まず、(1)の『直接に要した費用』についてですが、競馬における収入である『払戻金』を得るために『直接に要した費用』は、当たり馬券の購入費です。当たり馬券の購入があったからこそ収入を得ることができた、という関係にあります。これに対して、外れ馬券の購入費は収入とは『直接』の関係はありませんので、(1)の『直接に要した費用』には該当しないのではないかと考えられます」
 では、(2)の『販売費や一般管理費など、所得を生ずべき業務についての費用』については、どうだろう?
 「この点については、問題の費用が『所得を生ずべき業務』に必要不可欠だったかどうか、という観点で判断されます。競馬では、馬券を1枚しか購入しなくても当たる人もいれば、馬券を100枚購入しても全て外れる人もいますので、外れ馬券の購入費が『所得を生ずべき業務』(当たり馬券の購入)に必要不可欠であったとまではいえないのではないか、と思われます」
 このように奥山弁護士は述べるが、「しかし」と言って、次のように続ける。
 「被告人の男性は、過去のレースデータを基に独自の競馬予想ソフトを開発したということです。オッズに対して掛け金の配分を変える方式で、レースごとに黒字になるシステムをつくりあげて、多数の馬券を購入していたとのことですので、一定の割合で外れ馬券が生じることも、織り込み済みのシステムだった可能性もあるのではないかと思います。
 詳細な主張立証の状況はわかりませんが、被告人の男性が利用していたシステムでは、払戻金を得るためには、必ず外れ馬券も発生するシステムのようにも思えます。そう考えると、外れ馬券の購入費も『所得を生ずべき業務について生じた費用』に該当する、という解釈も成り立つ可能性もあるのではないかと思います」
 つまり、外れ馬券の購入費が「必要経費」として認められる余地がないわけではない、ということだ。
●馬券購入は、先物取引やFXと似ているのではないか?
 さらに、奥山弁護士は、先物取引やFXと馬券購入の類似性にも注目する。
 「先物取引やFXによる所得については、年間を通じて『得した額』から『損した額』を引いた純利益に対して課税されることになっています。弁護側は、競馬による所得についても先物取引やFXによる所得と同様に考えてほしい、といった主張をしているとのことです。
 先物取引やFXによる所得は税法上、一般的には『雑所得』とされていますが、競馬による取得は『一時所得』とされています。したがって、先物取引やFXと全く同じように考えることができるわけではありません。しかし被告人の男性は、競馬ソフトや計算式を利用したシステムに基づいて、馬券を購入して投資効率を高めていたとのことですので、証券取引と類似する側面がないわけではないと思います」
 奥山弁護士はこのように述べ、「男性の所得が『何所得』に該当すると判断されるのかも気になるところです」と話している。
●「結論の座り」や「担税力」の観点から疑問がある
 では、この競馬脱税事件、どのような判決が出ることが予想されるだろうか。
 「これまで見てきたように、解釈によって、被告人の男性に有利な判断がでる余地がないわけではありません。しかし、法律を淡々と解釈していくと、有罪判決が出る可能性は高いように思われます」
 このように奥山弁護士は語るが、その一方で、「有罪判決という結論に至った場合は、いかにも『座り』の悪い結論になってしまうことは間違いありません」と指摘する。
 「誰に聞いたって、自分が稼いだ分の5倍もの税金を払えと言われるのは、明らかに納得できないと感じるのではないでしょうか。このような結論になるのであれば、多くの競馬ファンは、怖くて競馬を楽しめなくなるのではないかと思います。
 実際に受け持つことができない額の税金の負担を強いるのは、租税制度の根底にある『担税力』(税金を負担する能力)の観点からも疑問があります。仮に、検察の主張どおりの判決が出るのであれば、今回の事件は、租税制度の根幹にかかわる重大な欠陥を露呈することになると思います」
 法律論としては正しいが、常識感覚からすれば、どこかおかしい。そんな判決が出るのかどうか。それとも、裁判所が常識を働かせて、競馬ファンが納得できるような結論を示すのか。大阪地裁の判決が注目される。

 この裁判結果において、公営ギャンブルにおいて高額当選を当てても、高額の税金が請求されるとなれば、馬券などの券を買う人が激減する可能性があるだけに、この裁判結果が注目されます。
 もともと馬券などの払い戻しには、主催者側の経費や取り分が差し引かれており、理論上、幾らつぎ込んでも・・・掛けている側は、絶対に儲からない仕組みになっているのです。
 しかし、一攫千金の夢があって買っているので、どうやっても儲からないとなれば、つまり勝って払い戻しが多くても、税金で持って行かれるとなれば、誰も買わなくなるかも知れません。
 公営ギャンブルは一大産業で、係わっている人数は決して少なくないので、この裁判結果により、公営ギャンブルが衰退するのは避けて欲しいところです。

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