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最近はフィギュアスケートと歌舞伎鑑賞記録が主流でござります

ヴェニスの商人

2007年09月23日 | 舞台・コンサート
金曜日に観てきました。銀河劇場(元アートスフィア)は5年ぶりぐらいに行きましたが、こんなに音響悪かったかなとびっくり。丸っこい作りのせいなのかよくわかりませんが、同じくらいの規模のパブリックシアターやコクーンなんかと比べると、音の反響が悪すぎなのです。役者が後ろ向いちゃうと音が篭ってたちまち小さくなっちゃう。反響板とか置いてもダメなのかしら?? 劇場としてはちょっと致命的のような気もしますが…。
それはさておき、シャイロックに市村正親さん、バサーニオに藤原竜也君、アントーニオに西岡徳馬さん、ポーシャに寺島しのぶさん、そして演出は本場イギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのグレゴリー・ドーラン氏という、とても豪華なキャスト・スタッフ達でした。そのうえ、市村さんと藤原君の共演といえば、昨年の「ライフ・イン・ザ・シアター」以来。あの舞台とても好きだったので、今回も二人の共演が楽しみでした。

「ヴェニスの商人」は、昔、小学生の時に、学校の体育館で地元の劇団の人達がやってくれたのを観たことがあり、私が初めて触れたシェイクスピア作品です。あの時は、有名な肉1ポンドを担保にした裁判シーンが面白かった印象しか無くて、今回改めてその内容の残酷さにびっくりしたのが正直なところです。面白かったんだけど、素直に面白がって良いのかどうか…? 観終った後はシャイロックが憐れで、キリスト教徒によるユダヤ人差別に不快感すら残りました。宗教観の違いなんて、正月もクリスマスも楽しいことは何でもやっちゃえな国にいるとわからないものですね。
カーテンコールでの市村さんが笑顔で手振ってくれて、少し救われた気もしました。シャイロックって、一人除け者にされて、罵られて、財産も奪われ、娘にも裏切られ、あげくにキリスト教への改宗までされて、何の救いもなく、やっていてさぞかし辛いだろうなあと思ったんですが、パンフレットのコメントを読んだら、市村さんってば孤独で酷い目に遭う役が好きなんだそうです。マゾ?(笑) まあ好きじゃなきゃやれないですけどね。
しかし、舞台上の市村さんってば、やっぱり存在感が別格。出てくると舞台の空気が一変しますね。役のせいもあるだろうけど、不思議な緊張感がそこに芽生える感じです。カーテンコールでは普通のお茶目なおじさんって感じなのにねえ。
竜也君は今回のバサーニオは至って普通の役。いや、普段と比べてという意味で、バサーニオ自身は自分の色恋のために金借りたり、変装までして彼女をモノにしちゃうような小狡い男なんですが、竜也君が演じていると、まあこの子のためには何でもやってあげたくなっちゃうよね、という説得力があります(笑) 天真爛漫なバサーニオだったな。
変装姿は本当に面白かった。変な黒人と変なじい様(笑) でもこの場面があるから、3時間ちょっとの長時間の舞台のテンポが緩まずに観れるという、結構重要なところなんですよね。ひとりでとんでもなく弾けてる竜也君が楽しそうでした。あんなにコメディができるとは、留学してやっぱり一皮剥けましたかね。
西岡さんは何といっても最初の登場シーンに度肝を抜かれ(笑)、しばらく笑いが止まらなかったほどです。今回、アントーニオはバサーニオと同性愛的な感情があるという設定なのですよね。確かに友情を超えた愛が無ければあそこまでしてやれないかもしれませんね。
ハタから見ていると親子愛にも見えなくもなかったですが(^^; でもアントーニオは一途でいい奴だなと思いました。
ポーシャの寺島さんも世間知らずなお嬢様ぶりが結構板についてたと思います。竜也君よりも年齢は上ですけど、結構可愛らしかった。裁判シーンはポーシャの見せ場ですが、ここも良かったですね。あと旦那の愛情を必死で確かめようとするところも。
声が時々、菊之助君に似ているなと思いました。姉弟でもやっぱり似てるもんですね。

ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの演出はもちろん初めて観ましたが、蜷川さんと比べるととてもシンプルだなと感じました。余計な物はそぎ落として、役者の力で作らせる舞台という印象です。セットも本当にシンプルだし、場面転換もありません。まあホリゾントを使って屋外と屋内の差は明確につけていましたが。
あと、きっとそれがお決まりなんだろうけど、唾吐きシーンが多々あるのは観ていていい気はしないですね。ユダヤって口にするだけで、皆ペッペッしまくりなんだもん。そこまでユダヤ人嫌いなのかよと(苦笑) それでもヴェニスはまだユダヤ人にとってはマシで住みやすい国だったみたいです。なぜそこまで彼らが迫害を受けなきゃいけないのか、理解に苦しみますけどね。
下の写真は開演前のロビーにて、劇場入った瞬間からヴェネツィアン・カーニバルの空気でしたよ。開演ブザーは鳴らずに、その空気のまま自然と舞台が始まる演出は素敵でした。


それからパンフレットで知ったんですが、ヴェニスの商人の話を元にした歌舞伎もあるのですね。タイトルは「何櫻彼櫻銭世中(さくらどきぜにのよのなか)」。これが上演されたのは明治18年で、日本で初めて上演されたシェイクスピア作品みたいです。アントーニオが大阪の船問屋伝二郎になってます(笑)シャイロックの日本名も知りたかった。

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3 コメント

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さすがです! (チェルシー)
2007-09-23 21:10:54
お久しぶりです!

「ヴェニス~」観に行かれたのですね♪
さすが!!毎回そうなんですけど、今回も私が感じていたことが全部綴られていて、嬉しかったのでコメントしちゃいました(笑)。
1回の観劇で、そこまでわかるなんて・・・すごいです!私は一体、1回1回何を見ているのか・・・
(竜也さんの顔ばっかり見ているという揺るがぬ証拠ですね・・・汗;)

(^_-)-☆



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Unknown (ゆき)
2007-09-24 16:30:58
こんにちは。
「ヴェニスの商人」の元ネタの物語では、アントーニオとバサーニオは、義理の親子だそうです。
アントーニオが名付け親で、バサーニオの実の両親が亡くなってしまったので、引き取って息子にしたのです。
それならば、あの親密さも理解できます(^_^;)
法律を勉強している友人に肉1ポンドの裁判の話をしたら、「証文書く時に気づきなさいよ」と、バッサリ言われました。
それを言っちゃあ、おしまいよ!(笑)
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Unknown (isako)
2007-09-24 22:48:30
>チェルシーさん
こんにちは。はい、やっと観てきましたよ!
私は一度しか行かない予定の舞台はなるべく全体を観ようとしてるのですが、でもやっぱり細部までいろいろ観ようと思うと、何回か観ないとわからないですね。でも、今回はすっきりした演出だったせいか、すごくストレートに伝わってくるものは多かったです。それをストレートに受け止めてよいのかどうかは、かなり悩みましたけど…。

>ゆきさん
義理の親子ですか~。それもしっくりきますね。今回のキャストなら特に(笑)
肉1ポンドの話は小学生の時は素直に驚いて感動したんですけど、大人になるといろいろ屁理屈やツッコミもでてきちゃいますよね
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