投資の科学
マイケル・J・モーブッシン
本屋でタイトルに惹かれて購入した。
投資の科学的分析についての本かと思ったが、
実際にはどっかの天才投資家のエッセー。
けれども非常に知的好奇心をくすぐられる内容だった。
・株価の変動は正規分布とはずれがある。
小規模な変動が生じる回数が正規分布より大きく、0.5から2σにおける変動が少なく、両端に分布するデータが大きい。
たしかにブラック・ショールズ方程式における株価の計算式も、正規分布を仮定しており、これでは現実の変動を捉えられていないことになる。
するとこの本で示されている分布関数で修正すればより現実にフィッティングできるということになる。
物理統計でもボルツマン分布からフェルミ・ディラック分布関数やボース・アインシュタイン分布関数が現れたように
新しい分布関数で理論が再構築されていくのだと思う。
・ラプラスの悪魔
もしこの世界がニュートン力学のような決定論で支配されていれば、
すべての物体、すべての粒子の運動は理論的には予測できる。
この考えを延長すると、自分の運命というのはすべて定められたものであり、
予測できることになってしまう。
自分の意思、思考とは自由ものではないのだろうか。
著者は複雑系という概念を持ち出し、非線形な世界であり単純な計算では説明できないと解説している。
複雑系という考え方はよくは知らないけれど、ラプラスの悪魔を退けるのは、
微小世界は量子力学が支配しているという通念である。
微視的な世界は、決定論では語れない。
それがマクロの世界にも影響しているということだ。
物理における微視的な存在とは電子レベルの話であるけれども、
マーケットにおける微視的な存在とは何なのだろうか?
それは人間だろう。
人の振る舞いは互いに独立している時もあれば、互いに影響を及ぼしあう時もある。
正規分布が成立するのは「お互いに独立な確率変数」を仮定した場合である。
人は互いに独立しているのだろうか。
マーケットを理解するには人を理解しなければならない。
この著者は、アリやミツバチの行動との類推や心理学などを用いていた。
半導体中の電子の振る舞いはフェルミディラック分布関数に従う。
人の意思決定を説明する分布関数は?
プロスペクト理論だっけ?