つぎはぎだらけの脳と心
ディビット・j・リンデン
人間の脳がどれほど優れた存在か。
これほど複雑な処理こなす脳はきっとすばらしい設計なのだろう。
この本の深層には、こんな考えを払拭したいという著者の思いがあるのではないか。
そう思いながら読んでいました。
脳は決して優れたものではない。
非常に非効率な設計で、間に合わせで新たな機能を付加していき
まるでアイスクリームをひとやま、ふたやまと積み重ねていったようなもの。
信号の伝達速度も遅く、そのやりとりにも時間がかかる。
そのため脳はこんなに巨大化し、人間に至っては出産の邪魔にもなる。
気まぐれに進化したようなもの。
だけれども、その気まぐれが記憶だとか愛だとか宗教をつくるに至った要因であり、
人間を人間らしく、これほどユニークな存在にした由来にもなっている。
そして、インテリジェント・デザインに対する鋭い批判。
これほど、非効率で気まぐれな機関である脳は本当に知的な設計者が生み出したものなのだろうか。
進化の中で気まぐれに形成してきたと考えるほうが説明がつく。
そして反証不可能なインテリジェント・デザインの理論は科学ではないという批判。
著者のインテリジェント・デザインに対する拒否感と、インテリジェント・デザイン説に対する反証のために前半部が存在しているのではないかとも思えた。
前半部は、科学的事実を冗長に語っていて非常に退屈だったが、後半部にかけて面白くなっていった。
著者の考察や思想がぎっしり詰まった後半部を楽しむためにも、前半部を我慢して読んでよかったかなと思った。