12月の応用物理学会誌のブレークスルーのイノベーション理論という記事が面白いです。まえがきとして、日本のエレクトロニクス産業の停滞を指摘し、その原因として第一に、
”産業と雇用の担い手が「単調で少数の大企業」から「多様で多数のクリエイティブ企業の動的なネットワーク統合体」になったことに気づくことなく、新陳代謝能力を失った古い産業構造の上を10十年以上も足踏みし続けているかなにほかならない”
と述べられている。記事は続き、香港やガザ地区(これってパレスティナのガザ地区だよね!?)を含めた54の国と地域における18歳から54歳人口に占める起業家の割合が最低となった調査や、別の調査において日本だけが他の社会的条件を同じにした場合、サラリーマンの方が自営業者よりも幸福度が高かったという結果を示している。
確かに、日本のエレクトロニクス産業の大企業ってずっと同じ名前を聞いている印象があるけど、多様で多数のクリエイティブ企業の動的なネットワーク統合体になったってどういう事なんだろう?
僕の理解では、これまで日本で慣例となっていな企業間の系列取引が、ある時点でメリットからデメリットに代り、日本の競争力を落とす方向に働いたってことかな?
Ipodが、様々なメーカーから優れた部品を買い付けてきて作られたというのは有名な話だし、そうゆう文脈で捉えていけば、多様で多数のクリエイティブ企業の動的なネットワークという記述も理解できる気がする。
筆者は、日本の停滞をイノベーション・ドリブン型経済という形態に日本の産業構造が転換出来ていないために起業活動が最低位の水準で、そのため古い産業構造が温存され新陳代謝が進まないと考えているようだ。
第二の原因として、
”日本のエレクトロニクス大企業が1990年中葉以後、基礎研究のアクティビティを大幅に縮小してしまったこと”
と述べられている。
そして、これを裏付ける結果として、応用物理学会への主要10企業からの全発表数に占める割合が、全発表件数はそれほど変化していない中で、25%から5%以下にまで減少したという事実を示している。
筆者は、イノベーション・ドリブン型経済に不向きな社会構造に留まっており、さらにその社会構造において主役である大企業の技術イノベーションを引き起こす力の低下という危機を指摘している。
そのあと、ブレークスルーのタイプについて解説をしてくんだけど、この前書きが面白かった。
ここを読んでいて思ったのが、先日の学会でのエピソード
ある大企業の研究者が、招待講演で自分の関わっている分野の先進的な結果を発表していた。
発表後の質疑応答で、東京大学のお偉い大先生が
「経営者のプレッシャーもあるかもしれませんが、頑張ってください!」
というコメント。
こんなこともあるのかというのが面白かったけど、事業化できるかどうか怪しい研究。
けれど、事業化できたらイノベーションを引き起こすインパクトのある研究結果。
経営側としては、先行きに大してそれほど良い印象を持っていないのかもな~とかそのときは思ってたけど、
この記事を読んでいたときに、企業としても資本を投入する余力もあまりないのかな~とかと感じたり。
そんな時に、余力のない企業に変わって、リスクをとって新規参入した企業が事業化したら、
その企業が利益を獲得できるんだろうけど・・・。
今の日本の大企業ってリスクを取らないイメージだし、守りに入っているっていうイメージがある。
こういった場面で、新規参入役、イノベーターとして活躍するのがベンチャー企業だったりするのかもしれないけど、
日本にはそんな土壌もないってこと。
この研究に関わっている学生も、研究を続けたいと思えば、大企業に入るかドクターへ行くか。
企業しようなんてリスク高すぎるし、そんなモチベーションもないもんな。
みんなリスクを取ることを恐れているなぁ。もちろん自分を含めて。
なにかの記事を読んだ時に、今の高校生(だっけ?)のなりたい職業のトップが公務員で、次に大企業の社員
っていう話があった気がするんだけど、このリスクを取りたくないって姿勢が高校生だとか子供をも支配している気がする。
この話を、研究室の後輩としたときに
「日本やばいねー」って笑ってたけど。
確かに、このままシステムが変わらなければ、日本はどんどん地盤沈下しちゃうんじゃないかと・・・。
大丈夫かな・・・。