goo blog サービス終了のお知らせ 

一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

都議選で大敗北した自民、参院選勝利に賃上げ可能な成長プランが必須 

2025-06-23 13:54:55 | 政治

 22日に投開票された東京都議選は、自民党が史上最低の21議席にとどまり、全勝を目指した公明党も現職3人が落選し、国政で与党の自公両党には大逆風となった。多くのメディアは7月20日投開票の参院選は都議選における自公敗北の影響が色濃く反映されると予想するが、筆者は石破茂首相が低成長を打破する日本経済の成長プランを明確に打ち出し、経済成長と賃上げで所得を増強する具体性のある政策体系を打ち出せば、流れが変わる可能性があると指摘したい。

 特に小泉進次郎農相がコメ価格の引き下げを提起したことで、今まで農政に関心のなかった大都市圏の有権者が日本の農業の将来性と食料自給率の引き上げに注目し出し、既得権益に切り込む「改革」を打ち出したことへの影響力は大きく、改革によって日本経済の成長率を高める道筋を明確にできるかどうかが大きなポイントになりそうだ。

 

 <自民は結党以来の大敗北、都民ファーストに水道料金無償化が追い風>

 自民党は追加公認した無所属の3人を含めても、過去最低だった2017年の23人を下回り、結党以来の大敗北を喫した。

 特徴的なのは、自民支持者の自民党離れだ。朝日新聞の調査によると、今回の都議選で自民党支持層は前回2021年の28%から21%に低下したが、その細った支持層のうち自民党候補に投票したのは53%にとどまった。

 多くのメディアは31議席を獲得して第1党になった都民ファーストやゼロから9議席に躍進した国民民主党、同じく3議席を得た参政党に票が流れたとみている。

 特に都民ファーストは、小池百合子都知事が6月から9月、または7月から10月の夏場の4カ月間に限って水道料金の基本料金を無償化することを決めたことで、物価高に対して柔軟に対応する政策を推進する「小池与党」のカラーを打ち出したことが大きく影響したと指摘したい。

 国民民主党も「手取りの増加」を国政同様に打ち出し、若い世代の支持を集めたことが躍進の大きなパワーになったとみられている。

 

 <自民党に物価高に対応できない硬直したイメージ>

 これに対して自民党は同じ小池与党の立場ながら、物価高に対応する的確な政策を打ち出していない、というイメージが強まり、裏金問題で多数の候補者が非公認になったことも合わせ、古い体質と物価高に対応できない硬直した政党とのイメージを払拭することができなかった。 

 また、前回比でマイナス4議席の19議席にとどまった公明党だけでなく、日本共産党がマイナス5議席の14議席、日本維新の会がマイナス1議席のゼロとなったことなど、既存政党のイメージが強い政党の議席減が目立った。

 つまり、現状を変えていく期待感の強弱が、今回の都議選の結果で大きなファクターになったと指摘したい。

 

 <都議選の結果が参院選に連動しない3つの理由>

 都議選における自公への大逆風をみて、多くの識者は参院選での与党劣勢を強調し、中には参院選で与党が過半数を割り込むと予想する見方も出てきた。

 だが、12年に1度となる参院選と都議選の重なる年における2つの選挙の共通性をあまり強調すると、トレンドを見誤る可能性があると筆者は指摘したい。

 まず、1つ目の理由は都議選で躍進した都民ファーストが、参院選で候補者を擁立しておらず、自民批判票の受け皿が分散する可能性が高いことだ。

 2つ目は、物価高対策として参院選では消費税率の引き下げを主張している野党が多い中で、各種の世論調査で将来の社会保障関係費用の財源となる消費税の税率引き下げに対し、反対している割合がじわじわと上がっている傾向があることだ。

 3つ目は、小泉農相がリーダーシップを発揮しているコメ価格の引き下げ問題に関連し、日本のコメ生産が生産調整で抑制されてきた現実にも多くの国民の関心が集まり、農政を改革していく必要性について都市部の有権者の関心が高まっているという現象が生じている点だ。

 

 <地政学的リスクと地球環境問題、国民の食料安保への関心高める>

 筆者は、世界的な地政学的リスクの高まりと地球規模の環境変化の下で、日本の食料自給率の引き上げと安全保障が切っても切れない関係であることを多くの国民が気づき始めていると指摘したい。

 ところが、今の日本の農業の現状では、担い手の高齢化に歯止めがかからず、100%の自給が可能なはずのコメ生産においても、特に零細農家が多い西日本では安定的なコメ生産ができなくなる可能性が出てきている。

 農業の現状を改革し、生産性の向上に欠かせない農地の集約化に大ナタをふるう改革への強い決意がなければ、日本の農業は衰退の道から逃れることはできないだろう。

 

 <40年に1000兆円のGDP、具体化へ手段明示なければ参院選も赤信号点滅へ>

 こうした改革の旗印を農業だけでなく、日本経済の各方面で掲げ、潜在成長率を高める具体策を示し、その成長戦略の結果、賃金が上がっていく姿を国民に示すべきだ。

 石破首相は名目国内総生産(GDP)を2040年に1000兆円とし、平均所得を現在から5割以上増加させるとの目標を参院選の「1番目の公約」に掲げるよう自民党幹部に指示したが、具体的な手段を明示しなければ、だれも信用しないだろう。

 日本経済の構造改革を実行に移していく「グランドデザイン」を示すことができれば、給付偏重の野党との間で大きな違いを主張することができる。

 それができなければ、2万円の給付は「ばらまき」という野党やエコノミストの主張に対して明確な反論ができず、都議選と同様に「目玉政策なき選挙」を強いられて、参院でも与野党が逆転する事態を生み出す可能性が高まることになる、と予想する。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 5月に加速した日本のコアCP... | トップ | 米軍のイラン攻撃、被害実態... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

政治」カテゴリの最新記事