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一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

米のイラン攻撃決断で懸念されるテロ頻発と放射能漏れ、世界的な株価暴落に発展も

2025-06-19 15:28:08 | 経済

 19日の日経平均株価は前日比396円81銭(1.02%)安の3万8488円34銭と4日ぶりに反落したが、中東情勢に潜む2つの大きなリスクについてはほとんど織り込んでいないと指摘したい。それはトランプ米大統領が対イラン参戦を決断することによって生じる米国へのテロ攻撃の激化と、イランの核施設を破壊することによって生じる放射能漏れだ。

 特に後者は水資源が限られているペルシャ湾岸諸国における水源の汚染に発展し、中東における反米感情をかき立てるリスクがある。ハメネイ師を頂点とするイランの現体制を崩壊させた後にやってくるのは、想定を超えた混乱の可能性があり、マーケットが2つのリスクを意識する展開になれば、世界的に強烈なリスクオフ心理が台頭し、米株を筆頭に主要国の株価が軒並み大幅下落に直面する危険性が高まる。

 

 <市場は米国のイラン攻撃可能性で楽観的>

 この日の日経平均株価の下落は、直近で上がっていた半導体関連銘柄への利益確定売りの影響が大きかったとの見方が多く、ブルームバーグが「米当局者らは、数日以内にイランに攻撃する可能性に備えている」と報じても3万8000円台を維持した。

 背景には、英仏独の3国とイランが20日にスイスでイラン核問題を巡る協議を開催すると伝えられ、この協議は米国とも調整済みとロイターが報道し、すぐには米国の対イラン攻撃が始まるわけではない、という楽観的な見方が市場を覆っているということがありそうだ。

 また、トランプ大統領は米国が対イラン攻撃に参加し、核施設を地中貫通弾(バンカーバスター弾)で破壊する攻撃計画を承認するのではないかとの観測も米国メディアでは報道されているが、これもイランに対して核開発計画の完全放棄を飲ませるため、カードとしてその威力を誇示しているとの見方がマーケットでは多く語られている。つまり、市場は直ちに米国がイラン攻撃をする決断した、とは見ていないということだ。

 

 <米がイラン攻撃決断なら、反米テロの頻発リスクも>

 だが、仮にトランプ大統領が対イラン攻撃の決断を下した場合、すでにイスラエルがテヘラン上空の制空権を支配していると表明した現状では、ハメネイ師の隠れている場所を突き止めて空爆の上で殺害するということも容易に想定される。

 ハメネイ師を失ったイランの現体制は崩壊し、イランに親米政権が樹立される可能性もゼロではないが、イラン国内の強硬派が冒険的な行動に出て、ペルシャ湾岸地域にある米軍基地が攻撃される可能性が出てくる。バーレーンには米中央海軍司令部があり、そうした基地が攻撃の対象になった場合、米国は中東地域で「出口」の見えない紛争に突入することになりかねない。

 さらに警戒されているのが、米国本土を含めた中東以外での反米テロを誘発するリスクだ。正規軍同士の衝突とは異なり、市民になりすましたイスラム系過激派を含めた集団によるテロが頻発するようになれば、これを制圧するのは容易なことではない。

 

 <核施設攻撃で懸念される放射能漏れ、湾岸地域の水資源に致命的打撃>

 2つ目は、バンカーバスター弾を使用してイランの地下深くにある核施設を攻撃して破壊した場合、放射能漏れが発生して深刻な環境汚染が発生する危険性がある。

 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は13日、イラン中部ナタンズのウラン濃縮施設への攻撃を強めた場合に「国内外に重大な結果をもたらす放射性物質の放出につながる可能性がある」と警戒感を強めていた。

 CNNはバーレーン在住にしているハーバード大学ケネディ校の中東問題研究員、エルハム・ファクロ氏にインタビューし、イラン・ブシェールにある原子力発電所が破壊されるケースを想定し、米国の同盟国である湾岸諸国の中で「水の共有に関して環境汚染の不安が強まっている」と指摘した。

 水資源の希少な中東地域で水源が汚染されることになると、住民にパニックが広がって大きな動揺が短時間に広がる危険性が高まる。

 

 <2つのリスク顕在化なら、リスクオフ相場からドル建て資産のトリプル安に>

 上記で指摘した2つのリスクについて、米国はじめ世界のマーケットではほとんど織り込みが進んでいない。もし、2つのリスクのうちの1つでも実際に顕在化したなら、市場は「想定外」と認識して株価の大幅な下落にとどまらず、米国が紛争の当事者になったことでドルと米国債も時間をおいて売り込まれ、トランプ大統領とベッセント米財務長官が最も恐れていたドル建て資産のトリプル安が再現されることになる。

 リーマンブラザーズの破綻が引き金を引いた2008年の世界金融危機(リーマンショック)も、その直前まで「まさか米当局はリーマンを破綻させない」という楽観的な見方が支配的で、もし、破綻したら想像を超えるクラッシュが発生すると真剣に想定していた参加者は極めて少数だった。

 したがって今回、もしもトランプ大統領が目の上のこぶのハメネイ師をトップとするイランの現体制転覆の絶好のチャンスと捉え、軍事介入にかじを切った場合、上記の2つのリスクに関する分析が甘ければ、最終的に経済的な崩壊を招くという結果にならないとも限らない、と筆者は懸念する。

 テロの頻発と放射能汚染の深刻化が、現実に起きないことを祈らないわけにはいかない。


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