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一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

物価上昇のうねりと円安、参院選で与党逆風に 世論調査が示す激変の予兆

2025-03-24 14:28:55 | 経済

 物価上昇に対する国民の不満が蓄積され、今夏の参院選比例区での投票先に「激変」の兆しが出てきている。自民党はトップを維持しているものの日本経済新聞の調査では30%を割り込み、産経新聞では19.3%にとどまった。一方、「手取りを増やす」を看板に掲げる国民民主党は日経の調査で2位の14%を獲得。野党第1党の立憲民主党の13%を上回った。このままでは比例で自民、公明の連立与党が大幅に議席を減らし、目標の過半数維持が微妙になる可能性も出てきた。

 だが、政府の物価高対策は焦点が定まっておらず、電気・ガス料金への補助は今年3月で打ち切られエネルギー価格の上昇が見込まれるほか、足元でドル/円が再び150円台をうかがう円安傾向を示し、物価上昇圧力が加速する動きも出始めている。物価上昇率が高止まりするほど内閣支持率、与党への投票行動が落ち込むという「反比例」の動きがさらに鮮明になるだろう。政府・与党がこの現象に対してどこまで危機感を抱いているのか、今後の情報発信ではっきりすると指摘したい。

 

 <物価高で高まる政府への不満、商品券問題が火に油注ぐ>

 日経とテレビ東京が21-23日に実施した世論調査で、石破茂内閣の支持率は前回2月調査から5ポイント低下の35%だった。日経は石破首相が当選1回の衆院議員15日に対し一人当たり10万円の商品券を配布した問題が影響したと分析したが、筆者は異なった点を指摘したい。

 同じ調査で石破首相に優先的に処理してほしい政策課題を聞いたところ、1位は「物価対策」で40%、次いで「経済全般」が33%、「年金」が28%となり、「政治とカネ」は23%と「雇用・賃金」の24%を下回った。

 つまり、国民の批判の眼は物価高に集まっており、コメ価格の急騰に対して備蓄米の放出が後手に回った政府の対応に苛立ちが高まり、そこに石破首相の10万円の商品券問題が加わって「火に油を注ぐ」ことになったということだろう。

 

 <生活実感に近いほど高い物価上昇率、G7で最も高いCPIに>

 日銀は基調的な物価上昇率が2%に達していないとの説明を繰り返しているが、全国の消費者物価指数(CPI)の中で政府・日銀が重視している生鮮食品を除く総合(コアCPI)は今年2月までの3カ月間に3%台の上昇を記録。総合は同じ期間で3.6%、4.0%、3.7%と高い伸びを続けている。

 より生活実感に近い「持ち家の帰属家賃を除く総合」は今年1月が4.7%、2月が4.3%と高止まりし、年間15回以上購入する「頻繁に購入する品目」は今年1月が6.2%、2月が5.7%とより高い伸びを示している。消費者の物価上昇の実感は、「頻繁に購入する品目」の上昇率に近いと筆者は推定する。

 今年1月の主要7カ国(G7)の物価上昇率をCPI総合で比較すると、日本の上昇率がトップとなっており、2月も米国の2.8%やドイツの2.3%を上回っている。広く国民一般が感じている「物価高」は、国際比較でも突出して高くなっていることがわかる。

 

 <3月で打ち切りの電気・ガス料金補助、4月に食料品値上げが加速>

 ところが、政府は電気・ガス料金への補助を3月分で打ち切ることにしている。4月からエネルギー関連の価格が上昇に転じれば、一段とCPIを押し上げる要因となる。コメの政府備蓄放出も足元で約2倍の高さまで上がっているコメ価格の大幅な下落につながる可能性は小さいと流通業者が予想している。

 さらに帝国データバンクによると、4月の食品価格値上げは4170品目に達し、消費者の物価高の実感をさらに刺激しそうな情勢だ。

 加えて足元ではドル/円が150円に接近する動きを見せており、ドル高・円安が輸入原材料の価格押し上げによるコストプッシュ型の物価高の長期化を招くリスクを高めている。

 これに対して、政府・与党の動きは鈍く、実態としては足元における物価上昇圧力の高まりを傍観していると言っていいだろう。

 

 <参院選比例の投票先、与党惨敗と国民民主・れいわ躍進の兆し>

 冒頭で触れたように、この物価高に対する国民の不満の高まりが今年7月の参院選で「反与党」のうねりとなって表面化する前兆が出てきている。

 産経とフジニュースネットワークが22-23日に実施した調査によると、参院選比例区への投票先で自民党との回答は20%を割り込んで19.3%だった。2位は国民民主党の12.0%、3位は立憲民主党の8.5%、4位はれいわ新選組の5.3%だった。

 6年前の参院選比例で国民民主は3議席だったが、もし、12%の得票率だった場合は倍増の6議席を獲得する一方、立憲民主は9議席から4-5議席に半減することになる。

 自民党は日経の調査で29%だったが、比例で30%前後の得票率にとどまると15議席となり、6年前の19議席から4議席減になる。公明党は世論調査のデータが実際の選挙実績に比べれ低めに出る傾向があるが、6年前の7議席維持は相当に高いハードルという見方が選挙情勢に詳しい関係者の間で浮上している。

 今のところ、比例で自民、公明の与党が苦戦し、国民民主、れいわが大幅に議席を伸ばす可能性があるという予測が多いようだ。

 

 物価高に対する国民各層の不満の高まりは、国政選挙で与党逆風につながる可能性が高く、この傾向は足元までのG7における国政選挙の動向とも一致する。7月の参院選までに石破首相が物価高対策でどのような手を打ってくるのか──。もし、今のままの無策では、手痛い敗北を喫することになると筆者は予想する。


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