
■DVD:「阿修羅城の瞳」
今週末の16日はアンディ・ラウ&トニー・レオンの
「インファナルアフェア・終極無間」とキアヌ・リーブスの最新作
「コンスタンティン」が同時に公開されるため、
映画ファンの方はどちらを観るか迷っていることと思う。
アジア映画のスターとハリウッドのスターが火花を散らす中、
すっかり陰に隠れてしまった感のある作品が「阿修羅城の瞳」だ。
文化文政の江戸には鬼が住んでおり、
その鬼を退治するために鬼御門という討伐隊が結成されている。
「鬼殺し」の異名を持ち、
鬼御門の中でも群を抜いた実力を持つ出門役を市川染五郎、
鬼の一族が復活を待ち詫びている阿修羅王の素質を持ちながら、
今はまだ覚醒していない女、つばきを宮沢りえが演じている。
監督は「陰陽師」「壬生義士伝」の滝田洋二郎。
音楽は菅野よう子が手掛けている。
元々は劇団新感線の舞台だったのだが、
残念ながら私は舞台を観たことがないので
今回は予備知識なしに映画を観た者の感想として捉えて欲しい。
簡単に言ってしまえば、
脇役まで実力派で固めた「陰陽師」である。
主演の野村萬斎が周囲とのバランスを壊すほど
飛び抜けて上手かった「陰陽師」と違い、
今回の市川染五郎は抜きん出て上手くない分、
他のキャストとのバランスが取れている。
原作がこれほど恋愛寄りの話なのかは不明だが、
私は「里見八犬伝」を思い出した。
そう思いながら観てみると、
市川染五郎は真田広之、宮沢りえは薬師丸ひろ子、樋口可南子は夏木マリ、
(と思ったら本作の舞台版は樋口の美惨役を夏木が演じていたらしい)
と、面白い程に置き換えることが出来る。
真田と薬師丸の立場が本作の市川と宮沢では逆になっているものの、
「里見八犬伝」が頭にあって生まれた作品であることは間違いあるまい。
滝田監督の作品は割と特撮が安っぽいのだが、
本作では出門が表向きは役者という設定であり、
劇中劇として歌舞伎も登場したりするためか、あまり気にならない。
書割のような安っぽいセットや吊り糸の見えそうなアクションが、
舞台さながらの演技を見せる市川の演技と上手くはまっている。
が、本作の最大の見所はやはり宮沢りえだ。
阿修羅として覚醒する前の可憐さも、
覚醒した後の荘厳な佇まいも、どちらも圧倒的に美しい。
こういう言い方は失礼かも知れないが、
「名前だけで客が呼べる女優」としての地位を
ますます強固なものにしたのではないか。
「カブく」ということを理解せずに観ると
やたらとオーバーアクションな演技と安っぽい特撮に
「やっぱり邦画は」となる可能性はあるが、私は充分楽しめた。
宮沢りえ目的でもう一度ぐらい観に行くか。
そう言えば薬師丸目的で「里見八犬伝」を何度も観に行ったな。
22年経っても邪なのは相変わらずだ。

■DVD:「阿修羅城の瞳 映画版 & 舞台版 ツインパック」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:阿修羅城の瞳
配給:松竹
公開日:2005年4月16日
監督:滝田洋二郎(「陰陽師」「壬生義士伝」)
出演:市川染五郎、宮沢りえ、渡部篤郎、韓英恵、他
公式サイト:http://www.ashurajo.com/contents.html
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
私も「里見八犬伝」と世界観が似ているなと思います。
宮沢りえが素晴らしかったです。
まだ見てないんですが、
自分も「似てるな~」と思っておりました。
管理人には「攻殻」と「雨狼」のサントラを薦めておこう。一度聞いてみると良いかと。
まさに、父と暮らせばになりそうですね。
うむ、今の宮沢りえが凄いのは
演技力の上達はもちろんだが、
それ以上にトップに君臨しているというオーラだと思う。
ちなみに、「父と暮せば」という邦画を
一度ご覧になっていただきたい。
「夕凪の街」を面白いと思っていただけたならかなりお勧めだ。
映画化は、、、実写化であろうか。
>にんちょう殿
おぉ、これは詳しいご意見を感謝。
舞台にしろ小説にしろ、
別のメディアに「移植」される時は
元との違いを探しても始まらないのかも知れぬと時々思う。
別物として考えることが難しいのも確かなのだが。
舞台版はDVDで出ているのであろうか、
少し調べてみることにしよう。
「阿修羅城の瞳」の原作者である劇団☆新感線の中島さんは、
「髑髏城の七人」(出自の異なる7人が織田信長の影武者に立ち向かう)とか「レッツゴー忍法帖」(お姫様を守る2人の忍者が、途中で出会った仲間たちとともに強大な敵に立ち向かう)がなど
「個性豊かな仲間たちが強大な敵に立ち向かう」といったシチュエーションが好きなんですよね。
あと、「カブく」精神も劇団☆新感線ならではの世界観ですよね。勝新太郎や若山富三郎的なしぶーいイメージです。
映画版「阿修羅城~」は、原作の面白さがSFで損なわれてる気がしますね。舞台版を先に見ると「アレが違う」って思っちゃうんですよね。うーむ。
ぜひ、忍さんに一度舞台版をDVDで観てもらいたいなぁと思ってしまったり。
以上、劇団☆新感線ファンの戯言でした。
話は変わりますが、忍さんに薦められた、夕凪の街のこうの史代さんの原画展があるそうです。(ジュンク堂池袋本店5月11~31日まで)
しかも、2006年には映画化決定。どうなるか、正直不安ですが、少年時代のような感じになればアリかなと思います。主役は、それこそ宮沢りえならはまりそうですね。