
ポニーキャニオン
UDON プレミアム・エディション
「次は故郷の香川を舞台にして、大好きなうどんをテーマに撮ります」と
本広克行監督が仰っていたのが
「サマータイムマシン・ブルース」の公開された去年の夏。
あれから1年、宣言通りに届けられた「UDON」は、
「サマータイムマシン・ブルース」とは似ても似つかない、
監督の狙い通りに仕上がっているのか疑問に感じてしまう作品であった。
香川県でうどん職人の息子として生まれた主人公・香助は
夢に破れニューヨークから帰郷、肩身の狭い中
地元のタウン紙の記者を始める。
香助が最初に手掛けたのは讃岐うどんの特集記事。
これが予想以上の反響を呼び、次第にブームが拡大していくのだが・・・
というのが大まかなストーリー。
何と言っても脚本が酷い。
劇中に登場するうどん屋の客のエピソードは
本広監督が実際に見掛けたエピソードを元にしているというだけあり
確かにリアリティはあるのだが、
前半はこれらのエピソードを単に繋ぎ合わせただけで、それ以上の何もない。
後半に入ると、今度は急に感動作のような方向にシフトしていき、
観客はすっかり置いてけぼり状態になってしまう。
カメオ出演や小細工は満載だが、主題すら定まっていない脚本で
脇道にばかり凝られても「そんなことはいいからまともな本を書け」と思ってしまう。
「サマータイムマシン・ブルース」のメンバーが何度も登場したり
特撮シーンにギンギンの看板が出て来たりするところから察するに、
本広監督としては、「サマータイムマシン・ブルース」のような、
もっとミニマムな映画を撮りたかったのではないかと思う。
讃岐うどんの美味さと、「メディア主導の安易なブーム」に対する
ピリリとした批判だけで90分ほどの映画に仕上げていれば
小粒な良作になったかも知れないが、
東宝の配給×フジテレビ、それも「踊る大捜査線」等で知られる
ヒットメーカーの亀山千広(製作)となれば、
小ヒット程度では許されないという事情もあるのだろう。
だが、大量のスポットCMと、公開前後の出演者のフジテレビジャック、
ロケ地の特集や関連本の出版、大手企業とのタイアップ商品の発売等、
これらは全て、物語の前半で明確に否定されている
「メディア主導の安易なブーム」そのものではないのか。
本場の讃岐うどんを知ってもらいたいという思いと
マルちゃんとのタイアップによるカップ麺の発売が
同時に成立するとはどうしても思えないのだが。

マルちゃんに罪はないが…
素材(テーマ、舞台、キャスト)は上質だったものの、
東宝×フジテレビという名の化学調味料ですっかり味が濁ってしまった讃岐うどん。
それが「UDON」である。
「化学調味料無しにヒットは有り得ない」という
東宝×フジテレビのセオリーから離れたところで撮り直して欲しい気持ちで一杯だ。

■DVD:「サマータイムマシン・ブルース」
■DVD:「サマータイムマシン・ブルース 2005 舞台版」
大作に疲れた本広監督が
「たまには小規模の作品を手掛けたい」と言って軽く撮った作品。
ヨーロッパ企画という若い才能とのタッグが思いの外ぴったりマッチし、
秀逸なSFコメディに仕上がった。未見ならお勧め。
舞台版は映画の原作となったヨーロッパ企画が2005年に再演した物。
詳しくは下記リンク参照。
●新世代作家の誕生「サマータイムマシンブルース」(過去ログ)
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タイトル:UDON
配給:東宝
公開日:2006年8月26日
監督:本広克行
出演:ユースケ・サンタマリア、小西真奈美、トータス松本、他
公式サイト:http://www.udon.vc/movie/
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