イノさんシゲさん

井上出と重松彬の往復メール

オイルサンド(シ)

2008-05-25 12:33:49 | Weblog
「オイルサンドに進出するインド」

「ガソリンの値段が高くなるのは、中国とインドの石油の需要が増えているからだといわれるが、そのインドが今度はアルバータのオイルサンドに進出して、既存企業の資産とプロジェクトをテークオーバーしようとしているそうだ。 インドだけではない、オランダ、中国、韓国、ノルウェーもオイルサンドに食指を動かしている。 カナダ人が神経をとがらすことはないのかな」

「確かにアルバータのオイルサンドはサウディアラビアに次ぐ世界第二の石油の埋蔵量だといわれている。 そしてその生産は向こう300年は大丈夫だというのだから、世界の垂涎の的だ。 それにオイルサンドは私企業の所有するものではなく、国の所有する資源だから、民間企業や海外の国際石油資本が進出してきて生産を進めても、そのロイヤルティや税金は国や州が確保できる。 それに何より探査のリスクがいらないのだから、企業としても魅力が大きい。 それに、ナイジェリア、ベネズエラ、その他アフリカや中東地域の産油国と違って、政治的に安定している。 加えて、オイルサンドの最大の課題だった開発技術も近年進歩が著しい。 また「汚いオイル」としてその生産に大きな問題があった環境上の宿題もこのところ解決に明るい見通しが出てきている」

「たとえ海外資本が進出してきても、カナダとしては、企業と共存共栄の足並みを揃えることができるから、政治家はあまり心配していないようだ。 それに企業側も、地域社会のためになるような良きコーポレートシティズンとしての責任感と意識が高まっている。 政府も必要に応じて課税政策を運用して、カナダ経済のプラスになるようにはかるだろうから、海外資本のオイルサンド進出はおおむね歓迎されるのではないかと思う」

「中国はさきにニッケル生産の大手カナダ企業を買収して、カナダ人の目を剥かせたが、あの場合、カナダで生産された金属を中国に安く持ち帰って中国製品の加工に活用する狙いがあった。 今度のインドの国営企業のアルバータ進出は、石油資源の確保という目的はあっても、中国の国営企業のカナダ企業テークオーバーとは少し趣きが違うようだ。 カナダはエネルギー生産ではスーパーパワーだが、新興の中進国がこうしてグローバル経済の地図を次々に塗り替えていくことに歴史の急テンポなドラムの響きが聞こえるようだ」

(2008/05/24)