「トゥレット友の会」ブログ         ~トゥレット症(チック症)に関する情報発信と活動報告~

「トゥレット友の会」は、トゥレット症(チック症)の啓発と、  患者やその家族への支援を目的としたボランティア団体です。

障害者手帳を利用して働いた方がいいのでしょうか?

2021年09月23日 | Q & A コーナー

Q:数年後に就職を控えています。障害者手帳を取得して、障害者雇用枠で働いた方がいいでしょうか?

A:必ずしも、障害者雇用枠で働くことがベストチョイスではありません。

手帳を保持していても、カミングアウトしないで「クローズ就労」するケースもありますし、手帳を持っていなくても、カミングアウトして職場に理解や配慮を求めて働く「オープン就労」もあります。職場の環境によっても、働き方は大きく変わるでしょう。

<働き方のスタイル>
◎手帳を保持して・・・
①一般雇用でクローズ就労
②一般雇用でオープン就労
③障害者雇用枠で就労
④就労継続支援A型で就労
(B型は雇用形態を結ばないので、ここでは除外します)

◎手帳を持たないで・・・
⑤一般雇用でクローズ就労
⑥一般雇用でオープン就労

オープン就労というのは障害を開示して就労をするという意味であって、

「障害者手帳」の有無に関係ありません。

障害者手帳の利点を生かしながら、個々の特性や状況に合わせて、自分にあった働き方を探していけるといいですね。

「一般雇用」に不安な場合は、自治体の窓口にご相談なさってみてください。

==================

■障害者手帳の種類は「身体」「知的」「精神」の3つがあります。
チックや発達障害の方の場合は、
「精神」=「精神障害保健福祉手帳」を申請することになります。


■障害者手帳の特徴は
大きく分けて2つあります。

1.公的料金や各種サービスの割引や助成が受けられる。

2.「就労」や「住居」等の障害者支援サービスを受けられる。
・障害者雇用への応募。
・就労継続支援A型・B型の利用。
・グループホーム利用の応募。
・その他

注意:就労支援の1つに「就労移行支援」がありますが、

障害者手帳の有無に関係なく、医師の診断書や自治体の判断で就職に困難が認められた人が利用出来ます。

また、雇用形態を結んだものではなく、一般企業への就職を前提とした訓練機関です。

===============
1.公的料金や各種サービスの割引や助成について

その内容は手帳の種類や等級によっても違います。
また、各種サービス内容は自治体によって少しずつ違いますので、

各ホームページ等でご確認ください。

<出典:TRYZE MEDIAより>
https://tryze.biz/media/support-system/service-list/

① 「住居費」の優遇・割引サービス

② 「公共料金・税金」の優遇・割引サービス
(税金)
所得税、相続税の控除、贈与税の免除
住民税の所得控除、自動車税等

(公共料金)
・水道料金の減免
・NHK受信料

③ 「交通・道路」の優遇・割引サービス
・JR東日本
・自治体の運営する交通機関
・航空運賃
・高速道路
・タクシー

④ 「娯楽やエンターテイメント」の優遇・割引サービス

⑤ 「携帯・インターネット」の優遇・割引サービス

各携帯会社の割引内容)
http://www.e-coel.com/channel/gozonji/info/02_mobile_phone.html


===============
2.「就労支援」の視点から、支援サービスについて考えてみましょう。

「一般就労」の中には「一般雇用」と「障害者雇用」とがあります。
「障害者雇用」とは、「一般雇用」とは異なる採用基準により

企業や公的機関などに就職することができる雇用枠のことです。

2018年4月1日から、「身体」「知的」に加え、

精神障害者(発達障害者を含む)も障害者雇用義務の対象となり、

現在、法定雇用率は以下になっています。
・国、地方公共団体    2.6%
・当道府県の教育委員会 2.5%
・民間企業の法定雇用率 2.3%

(厚労省)
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/000753695.pdf


■では、障害者雇用枠で就労する場合のメリット・デメリットはどのようなことが挙げられるでしょうか。

<障害者雇用での就労メリット>
1.職場でチックや障害特性を隠す必要がなくなり、不安を抱かなくて済む。

2.毎月の通院を確保することができ、職場での服薬にも気遣いが不要になる。

3.職場の上司やスタッフに障害特性を理解してもらい、適切な仕事や配慮を得ることで、仕事上の困惑が減る。

4.勤務時間の短縮や、職場の環境改善によって、働きやすくなる。

5.就活の際、面接の練習・アドバイスなど、職場適応援助者(ジョブコーチ)等のサポートを受けることが出来る。

6.職場で業務上の問題や人間関係のトラブルなどがあった際に、職場の人やジョブコーチ等に相談が出来る。

7.職場定着を図るためのサポート体制が整っている。
*「一般枠」より、「障害者枠」で働く方が離職率は低いというデータがあります。

8.税制対策や就労支援などの制度を利用することができる。

<障害者雇用での就労デメリット>
1.障害者雇用枠は一般雇用に比べて、求人数が少なく、職種の幅も狭い。

2.仕事内容は軽作業や単純作業が多いため、本人の能力が生かされなかったり、スキルアップの充実感がない。

3.一般雇用と比較すると、障害者雇用は給与が低く、最低賃金のアップは厳しい。

厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、平均月収は・・・
身体障害者は約21万5000円
知的障害者は約11万7000円
精神障害者は約12万5000円
発達障害者は約12万7000円

(厚労省:地域別最低賃金の全国一覧)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

但し、全ての人の給与が低いということではなく、個人の仕事が評価され、昇格、昇給する人もいますので、仕事とのマッチングが大切でしょう。

4.職場で”障害者”のレッテルが貼られ、差別を感じることがある。

5.特例子会社での就労の場合、職場の同僚が障害者でまとめられることが多く、一般社会との隔たりを感じる場合もある。
*特例子会社は、障害者の全従業員に占める割合が20%以上であること。また、雇用する障害者のうち、重度の身体障害、知的障害、精神障害のある方の占める割合が30%以上あること、といった要件が課せられています。


■では、障害者手帳を保持しながら、クローズ就労した場合のメリット・デメリットはどうでしょうか。
こちらのサイトに分かり易くまとめてありますので、参考になさってみてください。

(出典:障害者雇用バンクより)
https://syogai-koyo-bank.com/contents/guide/20200609/


■働き方のスタイルは人生設計の基盤となりますので、どなたも慎重に選択されるところだと思います。

障害者の中には、素晴らしい才能、高いの技能や知識を持っていらっしゃったり、人格者であったり、コミュニティ能力が高かったりと、魅力あふれる方が沢山いらっしゃいます。しかし、「障害者雇用枠」で働くことで、その人の魅力が埋もれてしまい、適正な対価に結びつかないという現状があり、本当に悔しいとしか言いようがありません。

日本を代表する現代アーティスト・作家・デザイナーの草間彌生氏。
「かぼちゃ」「水玉模様」のモチーフで有名なアーティストと言えば、お分かりでしょうか。彼女は少女時代から統合失調症を患っていたそうです。現在、彼女の才能は世界的に広く認められていますが、それは驚異的な経緯を経ての結果であり、彼女のようなケースは希少です。

願わくば、障害者の方たちの魅力が正しく評価されるよう、

一般雇用におけるサポート体制を強化し、

障害者の方が安心して働ける職場環境を作っていただけると有難いですよね。
そして、私たちも、自分らしく生きるために、

福祉制度を上手く利用して安定したライフスタイルを作っていきたいものです。

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「トゥレット症」という診断を得る必要はあるのでしょうか?

2021年09月18日 | Q & A コーナー

Q : かかりつけの小児科クリニックを受診したところ、「チックです。このまま様子をみてください」と言われました。トゥレット症でないかと思いますが、専門医に診てもらう必要はないのでしょうか?

(小4・男児:2年くらい前から咳払いや目を左右に動かす動きがあり、最近、鼻鳴らしや首振りが顕著になって来ました。)

==============

A :

■お医者様が「このまま様子をみてください」とおっしゃたのには、

2つ意味があると思います。

1つは、トゥレット症の診断基準が、

「複数の運動チックと1つ以上の音声チックが1年以上継続する症状」であるため、

経過観察が必要だと考えられたのかもしれません。 

もう1つは、現在、生活に大きな支障がないのであれば、

治療の緊急性はないと判断され、様子をみたいと思われたのでしょう。

 

■一般的には、チックはピーク期を超えると緩和傾向にあります。

*DSM5によると、

成人期には6~9割の人が緩和、もしくは寛解していくと言われていますので、

生活に大きな支障が出ていないのであれば、自然緩和、自然寛解に期待したいところです。

(*DSM5=米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)

仮に、治療を考えた時、

薬物療法は抗精神病薬や抗うつ薬を使用することになりますので、

子どもへの投与は慎重になる必要があります。

 

■しかしながら、専門医を受診しないで経過観察するのと、

専門医を受診して経過観察するのとでは、

少し意味合いが違って来ます。

保護者様の気持ちとしては、

「チックなんだろうけど、治療の必要性はないのかしら?

「注意して生活することはないのかしら?」と

中途半端な状態で釈然としないのではないでしょうか。

「トゥレット症」と診断がつくことで、

色々なメリットが生まれて来ます。 
 
・子どもの症状について、周囲に医学的説明が出来る。
・個人差はあるものの、チック症状の経過の見通しがつく。
・トゥレット症の特徴を知ることで、息子さんの状態をより理解出来る。
・トゥレット症に併発する症状を知ることで、今後の息子さんの状態に対応しやすくなる。
・必要であれば、薬を処方してもらえる。

■多くの方がそうであったように、診断が下される際、

病気を受け入れなければいけない”辛さ”と同時に、

「ああ、やはりそうだったか・・・」と、

納得と言いましょうか、”安堵”に近い気持ちになられるようです。

それは、病名が判明することによって、

この疾患と向き合う覚悟を、どこかでしているからだと思います。

 

先ずは、

「正しい診断を得る」ところから、始めてみてはいかがでしょうか。

混沌とした気持ちから抜け出し、

一歩前に進んでいくことが出来るように思います。

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