「トゥレット友の会」ブログ         ~トゥレット症(チック症)に関する情報発信と活動報告~

「トゥレット友の会」は、トゥレット症(チック症)の啓発と、  患者やその家族への支援を目的としたボランティア団体です。

“発達障害のある人の「思春期」について考える”に参加して・・・。

2015年03月10日 | 発達障害関連情報

2015年2月28日(土)、発達障害理解のための講演会“発達障害のある人の「思春期」について考える”に参加して来ました。

この日は、トゥレット友の会のメンバー2人で参加しました。
事後報告になりますが、ご参考までにご一読ください。
 
講師の先生は精神科医・医学博士の渡辺慶一郎氏。
東京大学学生相談ネットワーク本部准教授
精神保健支援室/コミュニケーション・サポートルーム室長という肩書の、とっても偉い先生。
柔らかい物腰のトーク。会場からの質問にもあったかいコメントで対応されていました。


印象的だった話は、
子どもに「発達障害」であることを、いつ、どういったタイミングで告知するか?


まず、告知の意義を考えてみよう。
告知は、「あなたは、こんな発達障害であって、そこが弱点なのよ」と、
単に事実を伝えるだけのものではない。
本人が主体を持って生きて行くために、自身の特性を知ってもらい、
それにどう向き合って将来を考えていくかの一助になるためのものでなくてはいけない。

従って、告知のタイミングとしては
本人が自分の違和感で苦しんでいて「自分とはなんぞや?」と思う時、
はじめて、発達障害であることを伝えるのがいいのではないか、
と言う先生のお話だった。
その時期は、子どもが思春期を迎える頃に訪れることが多いので、
保護者は、子どもをよく見て、よく関わって、告知のタイミングを図ることが大事ともおしゃっていた。
*告知前の準備としては、親はきちんとした診断(例えばWISC検査)を受けさせて、
  障害特性を把握しておく必要があるとのことです。

 ≪告知の失敗≫
 ・子どもと医師との間に、信頼関係が築けないうちに障害を伝えた
 ・告知のタイミングが遅れた(過去の苦い経験がトラウマになったまま大人になる)
 ・診断によるダメージ(悪いレッテルを貼られた気持ちになる)


また、この告知に伴う大切な鍵は、親の子どもに対する“子育ての理念”。
言いかえれば、親が自分の子供に
「どう育ってほしいのか」「どういう大人になってほしいのか」
という点を、親自身が整理出来でいないとダメだということである。

例えば、「どこどこの大学の何学部がいいだろう」とか
「あなたは、これは不得手だから、○○の仕事に就きなさい」とか
そういった親の考えを子どもにアドバイスするということではない。

告知は、単に障害を伝えるということではなく、
「社会とどう向きかっていくのか」
「社会の中で自分のアイデンティティーをどう織り交ぜていくのか」
そんなことを、子どもと話し合いながら、
障害特性をプラスに転じれるよう伝えていくことだと思う。

総じて、告知とは親の覚悟である。
親は、誰しも子どもの「幸せ」を願っている。
それは「いい大学に受かること」でもなければ、「いい仕事に就くこと」でもない。
ましてや「金持ちになること」や「思い通りになる人生」でもない。
大事なことは、その子どもの幸福感である。
従って、親は「子どもが、どんなふうに育てば“幸せ“を感じる大人になるか」を考え、
親の“子育て理念”を明確化し、子育ての中で伝えていくことに尽きると思う。

思春期は第2の成長期であり、「自分を見つめる」大事な時期。
この時期に、親は子どもの心に寄り添い、配慮をしてやりたいものである。


「発達障害者の就労を考えるシンポジウム」に参加してきました。

2015年02月16日 | 発達障害関連情報

2月13日(金)18時から世田谷区民会館ホールで
「発達障害者の就労を考えるシンポジウム」が開催されました。
その報告で~す。
UNIのセンター長さんをはじめ、どのパネリストのコメントからも支援者への熱意が感じられました。

(以下はプログラムです)



(1)世田谷若者サポートステーション〔サポステ〕
 〔サポステ〕は 世田谷区以外の若者(15歳~39歳)でも利用出来ます。
 個別相談を中心に体験重視の各種プログラムを組んでくださいます。
 例えば、ビジネスマナー、高齢者介護体験、農業体験、清掃体験等を経て、
 自分の特性を知ることが出来ます。

少し前までひきこもり、不登校、中退、ニート、フリーター、直前まで正社員などなど、
自分が見えなくなってる人、誰かに悩みを聞いてほしい人・・・etc.

    「迷える若者」は気軽な気持ちでドアを叩いてみよう!

(2)発達障害の専門支援機関との連携 → アセスメントや心理検査(WAIS受検)

  〔サポステ〕で、就労や自立につながらず滞留している若者は、
  専門機関を経た後、自己認知促進プログラム〔みつけば〕を紹介されます。


(3)自己認知促進プログラム〔みつけば〕
  〔みつけば〕では、「障害に気づく」とか「障害を見つける」とかではなく、
   ピアサポートによるワークショップ形式(10名程度)で、
  同じ境遇の人や仲間との座談会から、自分探しをしていきます(自分の個性を知る)。

   ①<あるある話>で盛り上がり、人知れず抱えている不安を、皆でシェア!
   
     *言語化が出来なくて、自分の意志を伝え難い
     *時間経過の感覚がなく、時間管理が出来ない
     *感覚が凄く過敏で他人には分からない辛さがある
 
       ・蛍光灯の「ジー」という音が苦手
       ・気圧や温度差が体調にすごく影響する
       ・満員電車がなぜか、苦しい・・・etc.


   ②「なんだ!自分だけじゃなかったのか~(笑)」と思えば、不安も解消。
    「じゃあ、みんなはどんな工夫をしてるの?」とアイデアを出しあって解決しちゃう!

   ③〔みつけば〕では、負の体験をほぐして、何がネックだったのか明確化。
     その上で、HAPPYな体験を積んで、自己肯定できるプログラムを設定してるそうです。

 
   ④そして、〔みつけば〕から「サポステ〕にフィードバックして、就労専門機関の〔ゆに〕に繋げる。


(4)就労支援センター〔UNI〕
    注:世田谷区民で障害者手帳を持っている方のみのが対象です。
  就労支援センターでは、ハローワークでは出来ない支援が期待できます。
   ・フレキシブルできめ細やかな対応と継続的な就労支援
   
   ①自立訓練(生活訓練)
   ②就労移行支援
   ③就労継続支援B型


(5)企業(進路決定)


  **************************************

(ガラ携で撮った超ピンボケの写真ですが、会場の様子です)
 

●今回、発達障害のある当事者Aさんの参加もあり、そのコメントがとても印象的でした。

就労への第一歩は、Aさんのお姉様が、半ば強引にサポステに行かせたことがきっかけだそうです。
最初、Aさん、ご本人が〔みつけば〕に参加した時、
参加した理由を「〔サポステ〕の○○さんに猛プッシュされたから」と、他人任せ的な心理だったようです。
が、最終的には、ご本人は、企業での自分の役割に自信を持つようになり、
「仕事が楽しいと感じている」とおっしゃっていました。
Aさんの生の声を聞いて、より就労支援の大切さを実感しました。

●また、企業の障害者雇用への取り組みも大事な鍵となります。
企業では、障害者らの離職率が高いことが問題になります。
この企業でも、当初は定着率が18%と低かったのですが、
障害者が働き易い環境を整え、職域を開発し、
管理者と現場で協力して業務サポートしていく体制
へと方針転換していきました。
結果として、現在は障害者の雇用率が2.14%、定着率75%へと向上したそうです。


これは、支援スタッフの粘り強いサポートと本人の努力、
そして、企業の障害者雇用への取り組みが、三位一体となっての賜物です!





日本の食品は安全でなかった?環境化学物質が胎児や子どもの発達にどう影響するのか?

2014年08月02日 | 発達障害関連情報

7月7日のブログでご案内した講演会「発達障害の子どもたちの現状と社会の役割」のご報告です。
*2014/07/27、「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議の総会記念講演」が開催されました。
当日は別件で参加できませんでしたが、参加した友人からの報告です。

①先ず、最初の講演は国立精神・神経医療研究センターの神尾陽子氏のお話です。
発達障害の早期発見、早期支援が極めて重要であり、
地域社会で取り組むべき課題であると述べられていました。

発達の偏りがあることによって、様々な困難が慢性化しやすく、
その結果、うつ病や不安障害など精神障害も生じ、ひきこもりになるケースも少なくないと
述べられています。
下記のグラフは合併症として挙げていますが、慢性チックも高率で発症しています。
ちなみに、チック障害は発達障害ですが精神障害ではありませんし、必ずしも自閉症の二次的障害では
ありません。チック障害は発達神経症であり、チック障害のみの単独発症の人もたくさんいます。




②次の講演は環境脳神経科学情報センターの黒田洋一氏です。
発達障害の増加の原因として環境科学物質(農薬、PCB、重金属など)を指摘されていました。
なんと、驚いたことに、日本の農法って「農薬大好き」だったのですね!知らなかった~(恐い)!
 注:無農薬、有機栽培などと謳っていても、その種は農薬に汚染されてないとは限らないようです。



*農薬大国        第1位・・・韓国/第2位・・・日本
*発達障害の発症率  第1位・・・韓国/第2位・・・日本

「農薬大国」と「発達障害の発症率」の第1・2位が一致するところの意味は見過ごすことが
出来ないとありました。


以下は講演のレジュメからの抜粋です。
 「1990年頃から世界的なミツバチの大量死が起こり社会的問題となった。
その原因のひとつとして、ネオニコチドイド系農薬の神経毒性の強さが
無視できなくなり、EUでは使用禁止などの公的規制が始まった。
 日本でも、ミツバチの大量死は各地で起こったが、
日本では規制どころか、「サイエンス」や「ネイチャー」の論文が出た後でも
ミツバチ大量死とネオニコ農薬毒性との因果関係を少なくとも農薬会社は認めていないようだ。
 また、日本の食品安全規制ではネオニコ農薬の日本のADI(1日摂取許容量)はEUや米国と
同じ値であるが、なぜか食品中残留基準は極端に甘く、種類によっては数十から数百倍緩いものもある。

 発達障害のメカニズムは共通で、特定の脳高次機能に対応する機能神経回路発達の異常と
考えられ、どの神経シナプス形成・維持に異常がおこったか、によって症状が決まる。
発症の引き金を引く環境要因も、出産関係のトラブル、脳内化学物質環境(関連遺伝子群も関係)、
養育環境など多様であるが、いずれも神経回路の形成・維持にかかわる遺伝子の発現を
変化させる広義のエピジェネチックな影響による。
 発達障害はこのような特定のシナプスの脆弱性を遺伝的に持った子どもの脳へ
毒性化合物の侵入などによる遺伝子発現変化が引き金となり、
結果としてシナプス形成、維持、脱落など「シナプス異常」をおこす場合がおおいと考えられる。 
 これまでの論文では有機リン系、ネオニコチノイド系などの農薬類、PCB、ダイオキシンなどの
有機塩素化合物、水銀、鉛などの重金属類、サリドマイド、バルプロ酸などの薬品に
発達障害を起こす毒性(発達神経毒性)が知られている。
しかし、これで全てではなく、毒性評価系が確立するようになれば、
未知だった新しい“発達神経毒性化学物質”が次々に報告されるであろう。」
                                (以上、黒田洋一郎氏のレジュメより抜粋)

難しい話は分かりませんが、
発達障害の発症のメカニズムは脳機能の問題とされています。
そういった意味では、脳へ影響を及ぼす環境汚染は抑制してほしいですね。