山形大学庄内地域文化研究会

新たな研究会(会長:農学部渡辺理絵准教授、会員:岩鼻通明山形大学名誉教授・農学部前田直己客員教授)のブログに変更します。

2005年2月の日記

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2005年02月01日

最近の朝鮮半島情勢-韓国映画をとおしてみた(日本科学者会議第15回総合学術研究集会報告)
 11月27日に京都で開催されたJSA15総学での報告内容を予稿集に加筆修正して以下にアップします。
 21世紀に入り、韓国では金大中前大統領の太陽政策を継承したノ・ムヒョン大統領が、弾劾裁判を経験したものの、総選挙での与党ウリ党の過半数獲得によって、安定した政治基盤を確保した。ただ、公約の首都移転が憲法裁判所から違憲判決を受け、国家保安法廃止をめぐる保守派との対立もあって、前途多難ではある。
 さて、昨年末から、韓国映画の世界においては、観客動員記録を更新する映画が、相次いで現れた。ひとつはクリスマスから公開された「シルミド」であり、この映画は韓国から北朝鮮へのスパイ侵入を題材にしたものであり、従来では映画化が困難であったテーマであった。韓国映画史上、初めて観客動員が一千万人を超える大ヒットとなった。
 それに加えて、旧正月を過ぎて公開された「ブラザーフッド」は、朝鮮戦争を本格的に扱った大作映画で、「シルミド」の観客動員記録をことごとく更新するメガヒットを記録した。
 これらのふたつの韓国映画は、対照的な性格を示しているといえよう。前者のテーマは、昨秋の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された、韓国で暮らす北朝鮮のスパイを取材した「送還日記」(来春から東京をはじめ日本各地で劇場公開の予定、韓国民主派の視点の柔軟さがうかがわれる)とともに、南北のスパイ合戦を客観的に公平に把握し、いわば彼らの名誉回復を扱った内容ともいえようか。
 それに対して、後者は、南北分断の原因となった悲劇である朝鮮戦争という、これまた大きすぎる課題ゆえに、映画化が困難であったテーマを描いたもので、あえて韓国軍の支援を受けずに、独力で戦闘シーンの撮影を巨費を投じて行った。この9月にはアメリカで公開され、好評であると伝えられるが、「ブラザーフッド」というタイトルは、アメリカ公開を前提にしたものであるといわれ、北朝鮮の軍人を人間扱いしないという前時代的な表現もまた、アメリカおよび日本での公開を意識したものであったのだろうか。不思議と国連軍も、ほとんど登場しない。
 これらの映画は、「シュリ」や「JSA」の南北分断の悲劇を描いた路線を継承するものであるが、南北首脳会談や釜山アジア大会を経て、北朝鮮の女性と韓国の男性の出会いをテーマとした内容の映画も、いくつか制作されたが、それらは大ヒットにまでは至らなかったけれども、映画を契機にした南北交流は確実に進展しているといえよう。
 2002年W杯の終了とともに、過ぎ去るかにみえた韓国ブームも、これらの映画の日本公開に加えて、いわゆる「冬ソナ」現象で、空前の勢いを呈している。従来は、ある程度、限定された日本人しか関心をもたなかった韓国という国を、多くの日本人が身近に感じるようになった変化は大きい。韓国の文化や言語に関心を広げる傾向は、日韓交流を深める上で、大いに歓迎されよう。この夏、ソウルのホテルは、軒並み、日本人観光客で満杯と伝えられるが、映像上だけでなく、実際に韓国を訪問して、現地で様々な文化などを体験することは、あるがままの韓国を知るという点で、意義は大きい。
 ただ、誤った情報が一人歩きする面がないわけではなく、とりわけネット情報には、その傾向がたぶんに存在する。たとえば、韓国の民法で定められている「同本同姓不婚」は、違憲判決が90年代に出されたものの、今春までは保守派が多数を占めていた国会での改正は進まなかったにもかかわらず、違憲判決をもって解消されたとする誤記が散見している(その後に調べたところ、99年1月1日をもって法律は失効したが、改正も削除もなされないままであるとのことで、それ以降は、8親等以内の婚姻は禁止されているとのことだが、これは改正案の内容であり、それが便法として適用されているようだ)。
 一方、マスコミなどでの北朝鮮バッシングは相変わらずで、南北の鉄道と道路整備や開城での工業団地建設など、着々と進展している韓国との連携を、ほとんど反映していない。従来の閉鎖的な国策を転換しつつある北朝鮮との国交樹立を、日本は一刻も早くめざすべきであり、それなしに戦後補償問題は解決の糸口を見いだせないといえよう。拉致問題との関連で叫ばれる経済制裁は、ロシアなどからの援助を受ければ実効性を持たないことは明白であり、脅し文句に過ぎず、逆効果でしかない。日本が果たすべきは、アメリカと連携した軍事大国化ではなく、東アジアの安定的平和を実現させるリーダーとしての役割であろう。





2005年02月19日


韓国の博物館7 ソウル市立美術館
 今回、紹介するソウル市立美術館もまた、前回に紹介したソウル歴史博物館と同じく、2002年W杯の直前に開館した。もっとも、この美術館のほうは、移転リニューアルであり、以前は確かソウル歴史博物館のある慶熙宮の敷地内にあったような記憶がある。
 2002年5月に移転開館した、この美術館は、正面の部分は、かつての大法院の建物を保存活用して、その後ろ側にメインの建物が新築されている。現代美術のすべてのジャンルを収容した総合的な現代美術
館とのことで、展示面積は広大で、デジタル映像などを活用した超モダンな展示が印象に残っている。
 場所は、ソウルの中心部の徳寿宮の外周の道を少し入ったところに立地しているが、屋根には、巨大なにわとりのとさかの像が飾られており、よく目立つ存在となっている。冬季でも18時まで開館してり、入場料も700ウォン(約70円)と安く、このあたりは、ぜひ日本の博物館・美術館も見習ってほしいものだ。休館日は月曜日となっており、この慣行は日本と同様である。
 折に触れて、企画展や特別展が行われ、目下は、第3回ソウル国際メディア・アート・ビエンナーレが昨年末から2月初旬まで、この美術館を主会場に開催されているそうだ。(「村山民俗学会」会報164号、より)
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