新・ヒット商品の発想&開発方法

ロングセラー商品やヒット商品のアイデア発想と開発方法を探り、未来のヒット商品を生み出す。

ヒット商品①~サントリー「伊右衛門」

2009年05月04日 | ヒット商品
清涼飲料市場で2000年以降最大のヒットを記録したのが04年3月発売の「伊右衛門」である。翌年には清涼飲料史上最速で1000億円を売り上げた。
これまで”宣伝のサントリー”と言われ、消費者の感性に訴えた商品開発と巧みな広告宣伝で話題を振りまき、ヒット商品を生み出してきた。品質よりも話題性を重視した商品開発がお家芸だったが、消費者が本質的な部分に価値を見出していることを重視、商品戦略の練り直しを図ってきた。その成果が「伊右衛門」「プレミアム・モルツ」の大ヒットに結びついたと言っていい。
日本の生活文化、日本人の心に深く根付いている緑茶の本質的な価値を探った。「緑茶飲料に求めているものは何か」を掘り下げていくと日本人の原風景に行き着く。寛政2年(1790年)創業の福寿園と交渉を重ね、両社の壁を一つ一つ乗り越え、ベクトルを合わせ最大のシナジーを発揮したのだ。「家業と事業」の隔たりを開発者の熱き想いが結びつけた。そして同じ目線(対等)で緑茶飲料の共同開発をしたことが大きい。
200種の茶葉から選び抜いたブレンド、非加熱無菌充填方式、福寿園創業者「伊右衛門」のネーミング、容器開発、デザイン、宣伝(CM)が高次元でリンクしたことが強烈なメーセージとなり、メガ・ヒットとなったのである。
商品コンセプトを練り上げたこと(本質を探る)、両社のノウハウと強みを具現化したこと(信頼・価値共有)、開発、宣伝・販促チームの思いを共有したこと(価値共有・組織化)が戦略として根付き、多くの共感を呼ぶ原動力となった。