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箱男とWebの落書

2004-10-21 22:30:07 | 意見
安部工房という小説家に、「箱男」という有名な
作品があります。

「箱男」は段ボール箱に入って生活し、街を徘徊する
男の物語です。

容易に予想される通り、これはかなりシュールな作品です。
とりあえず、話は箱の作りかたから入ります。段ボールの
選び方、外を覗見る窓の加工のしかたから、
箱の中に装備すべき品々など、必要以上に緻密に描写されて
います。僕は絶対安部工房は自分で箱を作ってかぶってみたに
違いないと考えています。

この箱男、段ボールをかぶって街を徘徊しながら、郵便箱の
穴ほどの大きさの覗き窓から外界を覗き見ています。
そして、段ボールの内側に無数の落書を残しています。
作品全体が箱男の手記と言う形で「僕」という一人称で
語られていますが、(そういえば僕の一人称も「僕」です)
時々、書き手である「僕」が偽の箱男
に入れ替わっている形跡を示唆しながら、複数名の匿名の
誰かの点猫的な独白として構成されています。

最近、Web上を徘徊しながら、Blogを書いている自分が、
街を徘徊しながら箱の内側に落書を残す箱男の姿とだぶって、
いいようの無い居心地の悪さを感じることがあります。
他のBlogや、特に2ちゃんねるのような匿名性の高い
掲示版をみても、まるで箱男の箱の裏側をみているような
感覚におちいってしまいます。

箱男のようなシュールな作品を解釈することは
とても難しいので、そこから筋の通った考察を行うことは
できず、ただ微妙なムズ痒い感覚が残るだけであるところが
始末におえません。

ただ、人がネットに何かを書き込まずにはいられない
心境には、箱男が箱の裏側に落書をせずにいられない感覚
に一脈通ずるものがあることが言えるだけです。

箱男は最終的には箱を脱ぎ、かなり屈折した恋心を
寄せていた看護婦と、一つの巨大な箱と化した病院
のなかで、何にも隔てられることなく暮らす日々を
おくります。でも、ラストはあまり幸せな気分には
なれなかった気がする。

僕も含めた現代の箱男たちの落書は
いったいどのようなラストシーンを描き出していくの
でしょうか?

もし安部工房がまだ生きていたら、今日のWebの状況を
みていったい何を思うのか、興味が湧くところです。

#安部工房は僕が大好きな作家のうちの一人です。
#多次元的で動的なイメージが畳み掛けられてきて、読む度に
#違った姿をみせるところが魅力です。
#彼の作品のなかでは、他に「カンガルーノート」
#などがお勧めです。ITとはなんの関係もないですが。

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1 コメント

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はじめまして (砂野)
2007-10-14 17:25:01
箱男はヒッピーやフーテンではなく、
当時はまだ存在しなかったニートなんですよね。
安部公房は未来を予見していたのでしょうか。
なお、箱男は推理小説として完全に解くことが
できます。真相はここ↓
http://homepage1.nifty.com/sunano/hako0.htm
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