今日の一貫

直接戸別補償とはどんな政策か

一見先進国の農業施策としては国際スタンダードにかなった政策のように見えます。
が、低米価誘導策による稲作の農業構造改革や米の自由化やはたまた何年ぐらい続けるかといった基本的な前提に一切言及しない民主党の戸別所得補償政策は、単なるバラマキにしかならないと、私は思います。


①グローバル時代の先進国型の農業政策は、農産物価格の低下とそれを補填する直接支払いが常識となっています。
そうした意味で、民主党の市場価格と生産費の価格を補填するとするのは一見国際基準にかなった方式です。

②日本の場合、わが国は農産物平均関税率(12%、EUは20%)はもとより、関税割当によってかなり開放的な施策を行使しています。
EUは、関税割当率は2-3%に抑え、そのために関税を下げる政策を取っています(日本はコメで7,2%,麦で92%)。
日本の場合には、コメが778%と高額関税であることから、保護主義的な国と見られていますが、これは日本が大いに損をしています。
コメの関税を下げられないのは、自民党の高米価政策がネックとなっています。
その間に、尻から、関税割当拡大で、農産物が国内に入ってきてるのが現状ですから、自民党のコメ政策はかなりいい加減です。

②民主党の施策が一見国際スタンダードにかなってるというのは、低米価を容認してることです。
国際スタンダードとは、、低米価に誘導し、差額を直接支払いで補填し、関税を引き下げ、関税割当率も下げる、というのが今日の国際社会での農業保護政策の常道です。
私は上記を主張しています。自民党は、生産調整をしたり、コメ価格センターで米価維持したり需給動向からした高米価政策を今でも維持しようとしています。

③しかし、民主党政策には、数々の問題があります。
上記施策のためには、国際競争力のある農業構造を作るというのが前提です。
そうしないと、いつまでも農家には直接支払いし続けなければならないことになります。

ですが、民主党案には、構造改革に資する人々に直接支払いするという文言が見えません。
これでは、いつまでも二種兼業農家やサラリーマン農家を保護しつづけ、結局稲作の農業構造改革を遅らせるだけです。
直接支払いは、将来日本の稲作を担う主業的農家によって国際競争力のある稲作を目指すためと言った、大義名分や目標が必要でしょうし、そのための対象の限定が必要です。
そうしないと国民の支持は得られません。

④さらには、米価は自然に下がる、とし、それを補填する、としていますが、直接支払いの目的は生活保護ではありません。競争力のある稲作構造を作るためで、EUでも全て、20から30%価格を下げる、そのために直接支払いをするとしています。
わが国でも、意識的な低米価誘導策と併行した直接支払いであるべきでしょう。

⑤もっと言えば、直接支払いは、日本が国際市場で工業製品を中心とした輸出国であるという実態とバランスを取るものでなければなりません。市場開放、貿易自由化を進めるための手段としてある事によって国内的同意も得られるものです。
市場開放を民主党は言いません。これは直接支払いを国民的に正当化するためのロジックでこれを言わないのは、片手落ちといえましょう。

⑥市場開放や、稲作の構造改革に関して何も言及しない民主党の個別所得支払いは、牙を隠した愚民政策か、あるいは単なるばらまき政策にしかならないというのが私の意見です。

ここは、民主党が争点にした以上、政策の対象となっている「小規模農家」といわれている層がどの様なものであるのか、厳密に検討してみる必要があります。
要はわが国の農業、特に稲作に国際競争力がつき、稲作に従事している人々が産業人として未来を見据えられ、基幹産業として復活できいればいいのではないでしょうか。


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