バンマスの独り言 (igakun-bass)

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寿命に限りがあるわけ

2009年11月08日 | 他の興味や旅行記
伯父の葬儀が終わって、身の回りに以前の平穏さが戻って来た。

人の死に出会うと、人それぞれにいろいろな思いがわき起こるものだろうが、僕は叔父の死を見て「寿命に限りがある」ということをまた再び認識したのだった。

話は変わるが約一か月前に発表されたノーベル賞のことを書くつもりでいて忘れていた。
「平和賞」のオバマ大統領については「あきれて驚いた」と書いておくにとどめよう。
しかしその「医学生理学賞」受賞者の研究成果については書きたいことがあって、それを今から書こうと思う。

僕は高校時代、さまざまな部活動をやったと以前にも書いた。
その中で部長としてがんばった活動に「生物部」があった。当時副担任をされていた生物の先生と妙に波長が合い、多くの教えを受けた。
先生は後に都立高校の校長をされ、退官した。
僕が卒業して成人になっても数十年のお付き合いは続いた。
数年前この先生がアルツハイマーを発症されて、残念ながらそのお付き合いも中断を余儀なくされて現在に至っている。

先生は僕に事あるごとに「DNA」のお話をされた。そのころから音楽好きの僕の頭の一部にはいつも生物学が住んでいた。
最近はあまり生物学の書物を読むことはないが、それでも今年のノーベル医学生理学賞には相当の興味を持ったのだ。

みなさんは我々の寿命に限りがある、ということに不思議を感じたことはないだろうか?
我々の人体を形作る細胞は日々新しいものに生まれ変わっているというのに、なぜ老化が進みついには死に至るのか?

これには「テロメア」(染色体末端部)に関係があるのだ。この「テロメア」をテーマとした研究が今年のノーベル医学生理学賞を受賞したのだ。

ごく簡単に説明を加える。
我々の持つ46本の染色体(細胞の遺伝情報が詰まっている)はそれぞれ1本の「ひも」と例えられる。そして46本の「ひも」をつなげると全長は2mにもなる。さらに人体は約60兆個の細胞からできているので、からだ全体のDNAを合わせると、なんと1200億kmにもなるのだ。これは地球と太陽の距離の約800倍である。
毎日、細胞のほぼ1%が死ぬといわれ、同じ数の細胞分裂が必要なため、我々の体内では毎日、太陽までの距離の8倍のDNAを複製しているわけだ。

長生きして複製ミスが蓄積されてできた「不死細胞」が「ガン細胞」である。

さて、我々のDNAはひも状なので、末端(テロメア)があるのだが、細菌のDNAは、輪ゴムのような環状で端がない。
ひも状のDNAでは、DNAの端の部分がうまく複製できない。これによって分裂後のDNAが短くなってしまう。
一方、輪ゴム状であれば、エンドレスなので細菌は無限に分裂できるのだ。

我々のひも状のDNAは、複製のたびにテロメアが短くなり、50回ほど分裂を繰り返すとそれ以上は分裂できなくなるそうだ。
我々の命に限りがあるのはこのためだ。
例外は生殖細胞とがん細胞で、複製で短くなったテロメアを伸ばすことができるため、寿命がないのだ。つまりは細胞が老化しないということだ。

このテロメアの役割と、テロメアを伸ばす酵素「テロメラーゼ」の発見に対して今年のノーベル医学生理学賞が贈られたというわけだ。

テロメラーゼは染色体を守り細胞の寿命を延ばすといった働きのため、近年「老化」との関連が明らかになりつつある。
また、がん細胞ではテロメラーゼが活発に働き、無限に増殖させていることも分かって来た。なのでこの働きを止めれば、がんの増殖を抑えられるとして、新たな抗がん剤開発が期待されている。

ものの本によると、もともと生き物には寿命はなかったそうだ。
しかし我々の先祖は19億年ほど前に「限りある命」を選択したのだ。
なぜならこれは、ひも状のDNAでなくては、有性生殖に必要な卵や精子を生み出せないためなのだ。
我々は進化の過程で「個体の死」と引き換えに「性」を創造し、「かけがえのない」多様な子孫を残せるようになったのだ。

一般にはあまり興味の対象とならない「平和賞」「文学賞」以外の「自然科学賞」には、今後我々の人生に密接した「健康」「生命」への大きな貢献を見出すことができるという点で、今後も注目していきたいと思っている。

僕は自分のことを「音楽バカ」だと思ってはいるが、昔は全ての現象・事象は「DNA」で説明できる、などと公言してはばからない「DNAマニア」だったことを最近になって思い出した。

僕は学者の道にも教師の道にも進まなかったが、今頃になってそれを悔やんでいるところが少しある。
人があまり考えないことを寝食を忘れて考える、などというちょっと浮世離れした生活に少し憧れている。

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2 コメント

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Unknown (223)
2009-11-09 22:53:34
がん細胞は不死なんですか?!
不死の細胞が、人間に死をもたらすというのは不思議ですね。
じゃあ、がん細胞を改良して、人間の体に悪さをしないようにすれば、不老不死の人間を作りだすことも可能ではないでしょうか?
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久し振り! (igakun@発行人)
2009-11-10 11:55:04
>223 さま

たとえガン細胞を改良して生命体に無害なものにしても、圧倒的多数の正常細胞はコピーを繰り返すうちに「寿命」を迎えてしまうというこの多数決の原理をくつがえすには「正常ガン細胞」の力では無理があるのでしょう。

「ガン細胞」が理論上不死でもそれはテロメラーゼのせいで、本体部分は「悪玉」に変わりはないため「反省」させるのは無理でしょうし、こんなヤンキーなやつがからだ全体を作り上げるなんて世も末じゃないですか!

ところでバンド、やってますか?
便りが聞こえてきませんね。
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