バンマスの独り言 (igakun-bass)

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初ライブと初笑い

2010年01月18日 | 他の興味や旅行記
先週土曜は新年初ライブ、翌日曜は初笑い、と初モノが続きました。

まずはバンドのライブ。
最近のライブでは最も遠い場所でのライブとなった藤沢でのギグ。
今回の対バンさんは「ベンチャーズ系」と「シャドウズ系」の2バンド。ギターなどの音色はクリア・トーンで明るく爽やか。そして毒のない軽いタッチの懐かしい音楽で会場は満たされていました。

僕らは、と言えばどんな場所でもお構いなしのハードロック爆音系。
さすがに事前打ち合わせでは必要以上の音量は慎め、との主催者さんの公式な「お達し」があったこともあり、多少の消化不良は覚悟の上で臨もうと自己抑制をかけていました。

しかし始まってしまえばこっちのもの(などという考えはなかったのですが)アンプや楽器のボリュームを回す指はよく聞こえる方へと自然に動いてしまうものなのです。
最後の方はやっぱり大音量に(けっして爆音ではありません)なっていましたね。

初めての土地(場所)で初めて会うバンドのみなさんとのライブは緊張しますが、そこは結成36年の重み、メンバーの横顔を見れば不思議と気持ちは落ち着き、演奏はリラックスできちゃうものなのです。

なので最初思っていたよりも意外に楽しかったな、という感じでステージをおりました。
観客の反応はステージ上から見てもまずまずで、その点も気を良くしました。

さてライブの具体的なことはバンドのウェブサイトに後日書くことにして、今度はその翌日(日曜)のことを書こうと思います。

いつもの事ですがライブを終えると安堵感と共に、目標を一瞬失ったかのような脱力感にとらわれます。でもこれはごく普通の心情でしょう。

ライブまでは怪我や病気はどんなことをしてでも避けたい、メンバーや主催者に迷惑はかけられない、というプレッシャーからの解放はある意味、精神的にうれしいものです。
おおげさに言えば<日常の精神状態に戻る>とでも言えましょうか。


日曜日の午後、前夜午前0時近くに帰宅した疲れを多少引きづりつつも僕はかねてよりチケットを用意していた「落語独演会」に妻と二人で行きました。

時々は妻と二人だけでコンサートや各種の観賞、買い物などをしたいと日ごろ思っている僕ですが、子供がいたり介護老人がいたりで思うようにはなかなかいかないのもまた現実です。
それでも僕ら夫婦はこの日曜の午後、ほんの少しの時間を二人の時間として楽しみました。

「柳家権太楼(やなぎやごんたろう)独演会」

知っている人には説明不要な有名ベテラン噺家さんですね。
今回は「寄席」ではなくホールでの落語会でした。


演目

1前 座(柳家おじさん):「平林」   
2二つ目(柳家右太楼) :「普段の袴」  
3真打ち(柳家権太楼) :「猫の災難」  

 中入り

4太神楽(鏡味 正二郎)
5真打ち(柳家権太楼) :「火焔太鼓」  


会場は満員。さすがに中高年の客が多いようでしたが、そもそも落語のような古典芸能はある種の知識(言葉・単語・歴史への理解)がないとその軽妙なウィットや<さげ>または<落ち>といわれる最後の締めの笑いを理解するのがやや困難な傾向があるので、若い人などは瞬間に笑える現代のお笑い芸人による漫才・コントに興味が行ってしまうのも無理からぬことと思いますが、噺家のモノや心情を所作で表現する技術は芸術として十分驚嘆に値するものですから、若い人も大いにこの世界を覗かれたらいかがでしょう。

落語の面白さとは、一言で言うと「うがち」であると言う人もいます。
「うがち」とは今の言葉で「それ、言えてる!」でしょうが、噺の中で聴衆はこれでうなずき(同感!)その力で話芸が進行していくわけです。

どうです? なるほど!と思いませんでしたか?


<まくら>とよばれるオープニングから本題に入るまでの導入部の噺(はなし)は噺家さんによって題材は千差万別ですが、今回の権太楼師匠はこの<まくら>が最高に面白い人なのです。
スタートは今風の話題で始まり、客の心をどんどん掴んでいきます。話題には巧みに本題(演目)への伏線が張られ、<さげ>が効果的なものになるようあらかじめ準備を整えてあります。そしてその<まくら>の長さは噺家それぞれなのですが本題へとスムーズに切り替わる(入れ替わる、と言った方が合ってるかもしれません)瞬間の手品のようなすばらしさは落語の名人ならではのゾクっとするような瞬間です。

<まくら>で僕ら二人は涙の出るほど笑いましたがそれがあっという間に本題の古典の世界、熊さん八つぁんの世界になっているのです。
場所は江戸庶民の長屋やお店(たな)。さっきまでこの師匠が豪華客船でスエズ運河を航海し、ラウンジのフィリピン・バンドの歌手から「りくえすと、あったら、ワタシ、うたうよ~」と言われ、しょうがないからテレサ・テンをリクエストした、なんて話題だったのに・・・。 ふと気がつくとすでに場面は変わっているんです。

落語は人情話や怪談、歴史絵巻みたいなものなどその内容はけっこう多彩なのですが、その中から自分の好みに合ったもの、好きな噺家を選んで楽しむわけです。

古典作品はお客が皆その内容と<さげ(落ち)>を先刻承知なわけで、その話の過程での話芸や扇子などだけでモノを表現する技術を楽しむわけです。もちろん同じ題目でも噺家で全く異なる印象をもって楽しめます。
これが伝統芸能のすばらしさです。

僕のブログに来ていただく方々は僕の事を色々なことに興味があって不思議な人だとお思いになるかもしれませんね。

前の晩にハードロックのベースを弾いていた男が、その20時間後には「火焔太鼓」で大笑いをしている・・・。
自分でも興味の方向があっちこっちに向いているな、とは思います。
でもそれで僕の人生は楽しくなっているとすれば、それはとても幸せなことです。
そしてこの拙いブログでそれらのことを話せることの幸せを感じます。


柳家権太楼師匠は僕が今もっとも好きな噺家さんです。
巧みでスカッと笑える話芸に夫婦そろって涙を流しながら笑いました。

そういえば最近こんなに笑ったことはなかったなぁ、こんなに涙を流したことはなかったなぁ(こちらはいい涙ですが)、と思いました。


独演会が終わった後、夫婦で夕食の買い物などをして帰宅しました。

初ライブと初笑い・・・この二日間の充実度は満点でした。

そして週明けの月曜日、僕の部屋のCDプレーヤーの前にはロックのCDに代わって<志ん生>や<文楽><枝雀><馬の助>それに<権太楼>の落語CDが並んだことは言うまでもありません。

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