
昨年末、2夜連続でこのドラマの全編(ディレクターズ・カット)が再放送されました。
実は僕はこのドラマをリアルタイムで見ていなかったのですが、今回の再放送をきっかけにこのドラマのDVDを入手し、楽しんでいました。
本ブログの「このドラマが好き」のカテゴリーは過去の膨大な数のドラマに対して自分が気に入った作品だけを抽出して書いているのですが、正直言って最近のドラマの質の低下、脚本力の弱体化、俳優のジャニーズ化、ベテラン俳優を使いきれていない制作者側の問題、あざとい演出やスポンサーとのタイアップによる独特な臭さ、ご都合主義・きれいごとの氾濫、等々で敬遠したい作品が増えてきて、さすがのドラマ好きの僕もけっこう引いてしまっているのが現状なんです。
でもたまには気に入った作品にも出会えるもので、今回は久しぶりにエントリーします。
ということで・・・2009年10月11日 - 12月20日にTBS「日曜劇場」でオンエアされたTVドラマ「Jin 仁」のことを書きましょうか。

現代の脳外科医がある日突然に江戸時代の江戸の町にタイムスリップしてしまうという奇想天外なドラマなのですがこれにはコミックの原作というものがあって、それがやっと最近完結したのですが、気を付けなければならないのは原作とこのドラマ版とは設定・筋書きが異なる部分が多々あることなんです。またその原作が完結していないという状況の中でドラマは制作されたということをどこか心の隅に置いておかないと原作を知っている人にはちょっと混乱の元なのです。
コミックのファンの方は話の進展としては原作の方がずっと良い、とかの意見もあるでしょうがここは一旦それから離れて、ドラマだけの世界を楽しむ方が得策と思えます。
結論から先に言うと、当然のように最終回に至っても連綿と続く?(謎)が解決されていないという一種の不完全燃焼的な運びとなって第1シリーズが終了したのですが、この春に続編がオンエアされ、ついにドラマ上での<結論>が出るものと期待されています。
ドラマ「Jin 仁」全11話で特筆すべきはキャストの人選でしょう。視聴者はすでに制作された一つのキャスティングでドラマを見るため、他のキャスティングではどんな具合になるのかなんて想像できる立場にないのではありますが、それにしても他を想像する必要もないほどなかなか素晴らしい布陣であることが第一印象でした。(唯一ミスキャストと思われるのは勝海舟役の小日向文世かな?)
綾瀬はるか扮するヒロイン橘咲と並ぶもうひとりのヒロイン、花魁の野風は主人公・南方仁の現代における恋人・友永未来と二役で中谷美紀、重厚な役回りの緒方洪庵に武田鉄矢(正直言ってあまり好きな役者ではないのですが今回は例外!)、そして主人公・大沢たかおを食ってしまったような抜群の存在感を示した内野聖陽の坂本龍馬、子役・喜市の伊澤柾樹、野風の子供時代の子役、火消し「を組」新門辰五郎の中村敦夫、遊郭・鈴屋の主、鈴屋彦三郎の六平直正、咲の母親・橘栄の麻生祐未・・・など思わずう~んと膝を叩いてしまうほどの布陣には感動でした。


ドラマが始まるとすぐ映し出されるタイトルバック、まずこれがいいですね。東京の今昔の写真をだぶらせて流していく手法ですが、お茶の水あたりの順天堂大学病院、増上寺、神田明神、隅田川の渡し、などが映し出されて、大昔からこれらの地で人々が日々の生活を送っていたんだという認識をしっかりと見る者に植え付けてゆく見事な演出にいきなり脱帽でした。
特にこの作品の最重要風景が江戸の街を眼下に見下ろせる、真下が川になっている断崖の原っぱです。
ここは先に書いた順天堂大学病院のある丘で、下の川は神田川という設定でしょう。
昔の東京はこんな風景だったのか~とため息がでるほど美しく物悲しくもある見事なCGですね。
江戸の街も吉原の遊郭もきれいでお金がかかっていますね。
そんな街並みをバックにして破天荒に動きまわる内野・龍馬は、それまでの僕の「龍馬像」をみごとにこなごなに壊してくれました。
龍馬命の武田鉄矢が内野に対しあれやこれや演技上の進言をしていたそうですが、そんな既成観念の龍馬なんてクソくらえっ!とばかりに龍馬史上最高のキャラクターが出現しました。
いや~、この龍馬は見事と言うほかありませんでした。

またこの人が主人公ではないかと思わせるほど出演場面が多く重要な役だった花魁・野風のキャラクターもよかったですね。
仁の恋人・未来の役は平凡でしたが江戸時代の未来(野風のことです)の演技はこの中谷美紀という役者の存在価値を上げ、彼女自身の代表作になったとさえ思えます。

龍馬の土佐弁と花魁・野風の花魁語(?)はいつまでも耳に残っています。
さてドラマ初回の冒頭に出てくる包帯だらけのケガ人が最後の最後まで謎として残されたのですが、ドラマ内で仁が度々言っていた「あの声は龍馬さんだ」にだまされてはいけないんでしょうね。
原作を読めば分かるようにあのケガ人は南方仁そのものなのですよね。
つまりタイムスリップして以後6年間を江戸時代で生活した仁が再び現代にタイムスリップした姿があのケガ人なわけです。
ややこしいのですが仁は6年後の仁の手術をして頭の中から龍馬の分身である胎児のような腫瘍を摘出したということです。

他には例の断崖の草原で見つけた「平成22年の10円玉」も今後どういう伏線になっていくのでしょうか?
(この10円玉の小道具に関しては一部ネット上で通貨偽造にあたるのではないか?との議論が沸きましたが(放映は平成21年秋だから)、制作側はCGで作成したとのコメントを発表しました)

全てのタイムスリップ物がそうであるように、話につじつまの合わない事や「???」と思うことが多いのは仕方のないことで、こういうお話は単純に楽しめばそれでいいのです。
最終話でほんの少し出てくる現代の「未来」(中谷美紀)は医者ではなく学校の先生でしたよね。
つまり仁が江戸時代に花魁・野風の運命を変えたことで現代の未来はその職業が変わったしまったのです。つまりは手術の失敗による植物状態の未来ではないということです。
そんなタイム・パラドックスのお話はこれからの完結シリーズに期待することにして、もう一つこのドラマの優れた点を書き添えます。
それは音楽です。エンドロールでのMISIA『逢いたくていま』のことではありません。
本編における<高見優>の音楽は悲しさと慈しむような優しさを帯びたメロディが悠久の時の流れを感じさせる二胡を使ったアレンジでゆったりと流れ、その趣が秀逸だったという点でした。
本当にすばらしい音楽が付いたものだと感動してしまいました。
あくまで僕の独断ですが今まで民放におけるドラマ付随音楽の最高傑作の一つは(奇しくも今回と同じ綾瀬はるか主演の)TVドラマ版「世界の中心で、愛をさけぶ」の河野 伸の音楽だと思っていました。
「仁」の音楽はこのドラマ版セカチューと双璧をなすほどの傑作であり、上質で優秀な音楽だと確信しています。
映画でもドラマでもバックの音楽、あるいはメインテーマとしての音楽の重要性はもっと多く語られるべきだと思います。セカチューも仁も作曲家は若い人です。
こういう人材が多く育っていることはうれしいことです。
「Jin 仁」の音楽
(参考)
「世界の中心で、愛をさけぶ」(ドラマ版)の音楽
さて本作「JIN 仁」に関しては今回は書きかけといたします。いずれ完結シリーズが終了した時にこの続きを書いてみたいなと思っていますのでよろしくお願いします。
実は僕はこのドラマをリアルタイムで見ていなかったのですが、今回の再放送をきっかけにこのドラマのDVDを入手し、楽しんでいました。
本ブログの「このドラマが好き」のカテゴリーは過去の膨大な数のドラマに対して自分が気に入った作品だけを抽出して書いているのですが、正直言って最近のドラマの質の低下、脚本力の弱体化、俳優のジャニーズ化、ベテラン俳優を使いきれていない制作者側の問題、あざとい演出やスポンサーとのタイアップによる独特な臭さ、ご都合主義・きれいごとの氾濫、等々で敬遠したい作品が増えてきて、さすがのドラマ好きの僕もけっこう引いてしまっているのが現状なんです。
でもたまには気に入った作品にも出会えるもので、今回は久しぶりにエントリーします。
ということで・・・2009年10月11日 - 12月20日にTBS「日曜劇場」でオンエアされたTVドラマ「Jin 仁」のことを書きましょうか。

現代の脳外科医がある日突然に江戸時代の江戸の町にタイムスリップしてしまうという奇想天外なドラマなのですがこれにはコミックの原作というものがあって、それがやっと最近完結したのですが、気を付けなければならないのは原作とこのドラマ版とは設定・筋書きが異なる部分が多々あることなんです。またその原作が完結していないという状況の中でドラマは制作されたということをどこか心の隅に置いておかないと原作を知っている人にはちょっと混乱の元なのです。
コミックのファンの方は話の進展としては原作の方がずっと良い、とかの意見もあるでしょうがここは一旦それから離れて、ドラマだけの世界を楽しむ方が得策と思えます。
結論から先に言うと、当然のように最終回に至っても連綿と続く?(謎)が解決されていないという一種の不完全燃焼的な運びとなって第1シリーズが終了したのですが、この春に続編がオンエアされ、ついにドラマ上での<結論>が出るものと期待されています。
ドラマ「Jin 仁」全11話で特筆すべきはキャストの人選でしょう。視聴者はすでに制作された一つのキャスティングでドラマを見るため、他のキャスティングではどんな具合になるのかなんて想像できる立場にないのではありますが、それにしても他を想像する必要もないほどなかなか素晴らしい布陣であることが第一印象でした。(唯一ミスキャストと思われるのは勝海舟役の小日向文世かな?)
綾瀬はるか扮するヒロイン橘咲と並ぶもうひとりのヒロイン、花魁の野風は主人公・南方仁の現代における恋人・友永未来と二役で中谷美紀、重厚な役回りの緒方洪庵に武田鉄矢(正直言ってあまり好きな役者ではないのですが今回は例外!)、そして主人公・大沢たかおを食ってしまったような抜群の存在感を示した内野聖陽の坂本龍馬、子役・喜市の伊澤柾樹、野風の子供時代の子役、火消し「を組」新門辰五郎の中村敦夫、遊郭・鈴屋の主、鈴屋彦三郎の六平直正、咲の母親・橘栄の麻生祐未・・・など思わずう~んと膝を叩いてしまうほどの布陣には感動でした。



ドラマが始まるとすぐ映し出されるタイトルバック、まずこれがいいですね。東京の今昔の写真をだぶらせて流していく手法ですが、お茶の水あたりの順天堂大学病院、増上寺、神田明神、隅田川の渡し、などが映し出されて、大昔からこれらの地で人々が日々の生活を送っていたんだという認識をしっかりと見る者に植え付けてゆく見事な演出にいきなり脱帽でした。
特にこの作品の最重要風景が江戸の街を眼下に見下ろせる、真下が川になっている断崖の原っぱです。
ここは先に書いた順天堂大学病院のある丘で、下の川は神田川という設定でしょう。
昔の東京はこんな風景だったのか~とため息がでるほど美しく物悲しくもある見事なCGですね。
江戸の街も吉原の遊郭もきれいでお金がかかっていますね。
そんな街並みをバックにして破天荒に動きまわる内野・龍馬は、それまでの僕の「龍馬像」をみごとにこなごなに壊してくれました。
龍馬命の武田鉄矢が内野に対しあれやこれや演技上の進言をしていたそうですが、そんな既成観念の龍馬なんてクソくらえっ!とばかりに龍馬史上最高のキャラクターが出現しました。
いや~、この龍馬は見事と言うほかありませんでした。

またこの人が主人公ではないかと思わせるほど出演場面が多く重要な役だった花魁・野風のキャラクターもよかったですね。
仁の恋人・未来の役は平凡でしたが江戸時代の未来(野風のことです)の演技はこの中谷美紀という役者の存在価値を上げ、彼女自身の代表作になったとさえ思えます。

龍馬の土佐弁と花魁・野風の花魁語(?)はいつまでも耳に残っています。
さてドラマ初回の冒頭に出てくる包帯だらけのケガ人が最後の最後まで謎として残されたのですが、ドラマ内で仁が度々言っていた「あの声は龍馬さんだ」にだまされてはいけないんでしょうね。
原作を読めば分かるようにあのケガ人は南方仁そのものなのですよね。
つまりタイムスリップして以後6年間を江戸時代で生活した仁が再び現代にタイムスリップした姿があのケガ人なわけです。
ややこしいのですが仁は6年後の仁の手術をして頭の中から龍馬の分身である胎児のような腫瘍を摘出したということです。

他には例の断崖の草原で見つけた「平成22年の10円玉」も今後どういう伏線になっていくのでしょうか?
(この10円玉の小道具に関しては一部ネット上で通貨偽造にあたるのではないか?との議論が沸きましたが(放映は平成21年秋だから)、制作側はCGで作成したとのコメントを発表しました)

全てのタイムスリップ物がそうであるように、話につじつまの合わない事や「???」と思うことが多いのは仕方のないことで、こういうお話は単純に楽しめばそれでいいのです。
最終話でほんの少し出てくる現代の「未来」(中谷美紀)は医者ではなく学校の先生でしたよね。
つまり仁が江戸時代に花魁・野風の運命を変えたことで現代の未来はその職業が変わったしまったのです。つまりは手術の失敗による植物状態の未来ではないということです。
そんなタイム・パラドックスのお話はこれからの完結シリーズに期待することにして、もう一つこのドラマの優れた点を書き添えます。
それは音楽です。エンドロールでのMISIA『逢いたくていま』のことではありません。
本編における<高見優>の音楽は悲しさと慈しむような優しさを帯びたメロディが悠久の時の流れを感じさせる二胡を使ったアレンジでゆったりと流れ、その趣が秀逸だったという点でした。
本当にすばらしい音楽が付いたものだと感動してしまいました。
あくまで僕の独断ですが今まで民放におけるドラマ付随音楽の最高傑作の一つは(奇しくも今回と同じ綾瀬はるか主演の)TVドラマ版「世界の中心で、愛をさけぶ」の河野 伸の音楽だと思っていました。
「仁」の音楽はこのドラマ版セカチューと双璧をなすほどの傑作であり、上質で優秀な音楽だと確信しています。
映画でもドラマでもバックの音楽、あるいはメインテーマとしての音楽の重要性はもっと多く語られるべきだと思います。セカチューも仁も作曲家は若い人です。
こういう人材が多く育っていることはうれしいことです。
「Jin 仁」の音楽
(参考)
「世界の中心で、愛をさけぶ」(ドラマ版)の音楽
さて本作「JIN 仁」に関しては今回は書きかけといたします。いずれ完結シリーズが終了した時にこの続きを書いてみたいなと思っていますのでよろしくお願いします。
「書きかけ」だけど,結構結構!4月を楽しみにな!
小日向だけは違うんじゃないかと・・・・ホントそう思うよ。
まずは明日だな!
やっと<仁>のことが書けてほっとしたよ。
小日向のキャスティングについてだけはちょっと???だよね。賛同者がいてうれしい!
「まずは明日だな!」というフレーズは、ちょっと説明の必要があるな。ここにはたくさんの人が訪問してくれるので。
みなさん、これは明日飲み会があるという意味です。リーマンさんと会うわけです。
確かに「内野龍馬」は秀逸でしたね。 中谷美紀の「野風」も・・
中谷美紀の存在を知ったのは以外にも役者じゃなく歌で「砂の果実」でした。 坂本龍一の曲だったかな? ♪生まれてこなければ、よかったのかも知れない・・のフレーズが悲しく心に残ってましたね。
とにかく四月からの続編が楽しみであります
このドラマ、周りにもファンが多くて、内容を語り出せば場が盛り上がるかも、です。
僕だって仕事柄21時台の就寝なので・・・仁はしっかり・・・見てませんでした。
面白いと思ったきっかけは昨年末の2日間にわたる再放送でした。
続編が原作とどう歩み寄るかが興味のあるところです。
セカチュウのスタッフはJINを制作しましたが、もう1つ「白夜行」というドラマもつくっていて、白夜行の音楽も気に入っています。
サントラの中の、「白夜を行く」と「君を照らしていたい」がお気に入りです。これも河野伸作曲です。
コメント、ありがとうございます。
「白夜行」は見るつもりでいて、当時の生活のリズムの関係で見られなかったドラマでした。
さっそくたーさんのお気に入りの曲を聞かせてもらいました。
この作曲家の得意のフレージング(言い回し)が随所に香ってきて、ウンウンと納得しながら聞きました。
もやっとした和声の響きを土台にして、きりっとした上部のメロディが、柔らかな音楽のくせに妙に説得力のある印象が残るいい音楽ですね。
JINとドラマ版セカチュウの音楽を好きとおっしゃる方とお話が出来てうれしかったです。
ありがとうございます!