”事実上の日米FTA” で売国 ”先行する「国内改革」”財界の思惑・構造改革
”事実上の日米FTA” 赤旗日刊紙2011年3月8日(火)
菅直人首相は環太平洋連携協定(TPP)参加を「平成の開国」だと言います。
あたかも、わが国が鎖国状態であるかのような言い方です。しかしそれは事実に反します。
工業製品について言えば関税はほとんどゼロです。農産物も、平均関税率は11,7%と主要国では日本はアメリカに次いで低く、すでに「開かれすぎ」の国家になっています。
これは、歴代政府が農産物の輸入自由化をとめどなく進めてきた結果です。
残っているのは米や乳製品、砂糖原料など食糧安全保障や地域経済に欠かせない基幹作物だけです。
TPP参加でその関税をゼロにするというのは、最後の”砦(とりで)”まで明け渡すことです。
アジアから4カ国
菅首相は「アジアの成長を取り込む」ともいいます。しかし、アジアの主要国である中国、韓国、インドネシア、タイなどはTPP交渉には参加していません。
アジアで参加しているのはシンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシアの4カ国です。
しかも日本は、そのすべてとすでに経済連携協定(EPA)を結んでいます。
したがって、日本がTPPに参加することは実質的には、関税を100%撤廃する自由貿易協定(FTA)をアメリカやオーストラリアと結ぶのと同じことになります。
仮に、日本がTPPに参加して10カ国枠組みになれば、日米だけで国内総生産(GDP)の9割を超えることになります。
TPPは事実上日米自由貿易協定(日米FTA)となるでしょう。
これは、「アジアの活力を取り込む」どころか、アジアのまとまりに水をさすことにもなります。
オバマ政権の狙い
アメリカ政府がTPPに乗り出したのは、21世紀に入り、アジア諸国がアメリカを除いた独自の枠組みで経済統合を進めていることに危機感を抱き、アジア進出への足がかりを得るためでした。
オバマ大統領は、昨年来日した際、「米国の貿易シェアはアジア太平洋地域で低下している。急速に発展しているこの市場で販売の機会を失いたくない。そのため、TPPを追求している」と狙いを率直に語っています。
また、カーク米通商代表は、昨年5月、各国の商慣習、競争政策、労働、環境なども幅広く対象にするTPPを「米国のFTAのモデル」と持ち上げました。
TPPによって各国の制度をアメリカ企業に都合のいいように変えさせることができるというわけです。
アジアの主要国がTPPに一線を画すのは、例外ない関税撤廃という衝撃の大きさに加え、こうしたアメリカの思惑への警戒感があるからといわれています。
開国ではなく売国
1月に日本政府がまとめたTPPに関する報告書には、TPPに新たに参加するには「すべての交渉国との同意」に加えて、アメリカについては「議会の同意が必要」と明記されています。
アメリカ政府は毎年、自国の大企業の参入を阻んでいる各国の「非関税障壁」を列挙し、その市場開放、規制緩和を迫っています。
日本がTPPに参加するには、アメリカのそうした要求を一方的にのむしかなくなり、経済主権をアメリカにゆだねることになります。
これは「開国」ではなく「売国」そのものです。
つづく。 (日本共産党 国民運動委員会・橋本正一)
”先行する「国内改革」” 赤旗日刊紙2011年3月10日(木)
菅政権が環太平洋連携協定(TPP)に突き進む背景には財界の思惑もあります。
昨年6月、日本経団連は、アジア太平洋地域で「ヒト、モノ、資本、サービス」が自由に行き来できる「経済統合」、大企業が域内どこでも生産、販売できる「国境のない市場づくり」を提言しました。
TPPを東南アジアから環太平洋に連なる自由貿易圏の実現に向けた「大きな核」と位置づけました。
昨年1月に東京で開かれた日米財界人会議で日本の代表は、アメリカと歩調を合わせることが多国籍化した日本の大企業の利益になるとしてTPPの実現を政府に迫っています。
その後も財界は「経済成長に欠かせない」「参加しないと世界から取り残される」などと菅政権に迫ってきました。
「構造改革の徹底」
政府は昨年11月、TPPこうしょうについて「関係国との協議の開始」を決定すると共に「国を開く」観点から、「農業」「人の移動」「規制改革」の3分野で「国内改革を先行的に推進する」ことを打ち出しました。
「農業」「人の移動」の分野は、TPP参加を判断する6月までには方針を決定するとしています。
3月中の決定を目指す「規制改革」の分野は、政府の行政刷新会議で検討が進められ、1月末に当面の規制改革の方針案(中間とりまとめ)が示されました。
そこでは社会保障・医療、農業、運輸、金融、住宅・土地など国民の暮らしに関わる8分野、約250項目が見直すべき規制・制度としてあげられています。
この検討は、「EPAを推進するために国内の非関税措置を撤廃・緩和する観点」や、「国内投資を円滑化するために企業立地を阻害する規制を撤廃・緩和する観点」(中間とりまとめ)も加味して行っているといいます。
そこでは、農業や医療、保育などへの営利企業の参入の拡大、食品添加物の承認手続きの簡素化・迅速化、酒類卸免許の要件の緩和など、アメリカから「非関税障壁」と避難されてきた項目が列挙されています。
同時に、TPPとは直接接触のない、財界が新たな儲けの場を広げるために一貫して要求してきた分野もかなり含まれています。
TPP参加に「先行」するこのような国内体制作りは、橋本内閣や小泉内閣が推進した弱肉強食の「構造改革」路線をいっそう徹底するものです。
財界がTPPを声高に迫る狙いは、アジア太平洋地域での利益拡大と共に、TPPをテコに、かねてから主張してきた国内の「構造改革」を一挙に推進しようとすることにあります。
「日米同盟」の一環
前原誠司外相は1月の訪米の際、TPP参加を「日米関係強化の一環」と発言。日本経団連の米倉会長も1月21日、「日本にとって最も重要な同盟国であることから、米国が加盟するTPPに日本も参加すべきである」と述べています。
2009年の総選挙で民主党の菅直人代表代行(当時)は、「米など重要な品目の関税を引き下げ・撤廃するとの考えを採るつもりはない」と言明しました。
行き過ぎた市場原理主義の転換をも訴えました。
その政権公約を捨てて菅政権がTPPに突き進むのは、日米同盟最優先で、アジアに進出したいアメリカとその補完役を買って出た財界に忠誠を誓い、その忠実な執行者になってしまっているからです。
つづく(? この記事の翌日、震災が起きたため、中断した模様・・・)
(日本共産党 国民運動委員会・橋本正一)
”事実上の日米FTA” 赤旗日刊紙2011年3月8日(火)
菅直人首相は環太平洋連携協定(TPP)参加を「平成の開国」だと言います。
あたかも、わが国が鎖国状態であるかのような言い方です。しかしそれは事実に反します。
工業製品について言えば関税はほとんどゼロです。農産物も、平均関税率は11,7%と主要国では日本はアメリカに次いで低く、すでに「開かれすぎ」の国家になっています。
これは、歴代政府が農産物の輸入自由化をとめどなく進めてきた結果です。
残っているのは米や乳製品、砂糖原料など食糧安全保障や地域経済に欠かせない基幹作物だけです。
TPP参加でその関税をゼロにするというのは、最後の”砦(とりで)”まで明け渡すことです。
アジアから4カ国
菅首相は「アジアの成長を取り込む」ともいいます。しかし、アジアの主要国である中国、韓国、インドネシア、タイなどはTPP交渉には参加していません。
アジアで参加しているのはシンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシアの4カ国です。
しかも日本は、そのすべてとすでに経済連携協定(EPA)を結んでいます。
したがって、日本がTPPに参加することは実質的には、関税を100%撤廃する自由貿易協定(FTA)をアメリカやオーストラリアと結ぶのと同じことになります。
仮に、日本がTPPに参加して10カ国枠組みになれば、日米だけで国内総生産(GDP)の9割を超えることになります。
TPPは事実上日米自由貿易協定(日米FTA)となるでしょう。
これは、「アジアの活力を取り込む」どころか、アジアのまとまりに水をさすことにもなります。
オバマ政権の狙い
アメリカ政府がTPPに乗り出したのは、21世紀に入り、アジア諸国がアメリカを除いた独自の枠組みで経済統合を進めていることに危機感を抱き、アジア進出への足がかりを得るためでした。
オバマ大統領は、昨年来日した際、「米国の貿易シェアはアジア太平洋地域で低下している。急速に発展しているこの市場で販売の機会を失いたくない。そのため、TPPを追求している」と狙いを率直に語っています。
また、カーク米通商代表は、昨年5月、各国の商慣習、競争政策、労働、環境なども幅広く対象にするTPPを「米国のFTAのモデル」と持ち上げました。
TPPによって各国の制度をアメリカ企業に都合のいいように変えさせることができるというわけです。
アジアの主要国がTPPに一線を画すのは、例外ない関税撤廃という衝撃の大きさに加え、こうしたアメリカの思惑への警戒感があるからといわれています。
開国ではなく売国
1月に日本政府がまとめたTPPに関する報告書には、TPPに新たに参加するには「すべての交渉国との同意」に加えて、アメリカについては「議会の同意が必要」と明記されています。
アメリカ政府は毎年、自国の大企業の参入を阻んでいる各国の「非関税障壁」を列挙し、その市場開放、規制緩和を迫っています。
日本がTPPに参加するには、アメリカのそうした要求を一方的にのむしかなくなり、経済主権をアメリカにゆだねることになります。
これは「開国」ではなく「売国」そのものです。
つづく。 (日本共産党 国民運動委員会・橋本正一)
”先行する「国内改革」” 赤旗日刊紙2011年3月10日(木)
菅政権が環太平洋連携協定(TPP)に突き進む背景には財界の思惑もあります。
昨年6月、日本経団連は、アジア太平洋地域で「ヒト、モノ、資本、サービス」が自由に行き来できる「経済統合」、大企業が域内どこでも生産、販売できる「国境のない市場づくり」を提言しました。
TPPを東南アジアから環太平洋に連なる自由貿易圏の実現に向けた「大きな核」と位置づけました。
昨年1月に東京で開かれた日米財界人会議で日本の代表は、アメリカと歩調を合わせることが多国籍化した日本の大企業の利益になるとしてTPPの実現を政府に迫っています。
その後も財界は「経済成長に欠かせない」「参加しないと世界から取り残される」などと菅政権に迫ってきました。
「構造改革の徹底」
政府は昨年11月、TPPこうしょうについて「関係国との協議の開始」を決定すると共に「国を開く」観点から、「農業」「人の移動」「規制改革」の3分野で「国内改革を先行的に推進する」ことを打ち出しました。
「農業」「人の移動」の分野は、TPP参加を判断する6月までには方針を決定するとしています。
3月中の決定を目指す「規制改革」の分野は、政府の行政刷新会議で検討が進められ、1月末に当面の規制改革の方針案(中間とりまとめ)が示されました。
そこでは社会保障・医療、農業、運輸、金融、住宅・土地など国民の暮らしに関わる8分野、約250項目が見直すべき規制・制度としてあげられています。
この検討は、「EPAを推進するために国内の非関税措置を撤廃・緩和する観点」や、「国内投資を円滑化するために企業立地を阻害する規制を撤廃・緩和する観点」(中間とりまとめ)も加味して行っているといいます。
そこでは、農業や医療、保育などへの営利企業の参入の拡大、食品添加物の承認手続きの簡素化・迅速化、酒類卸免許の要件の緩和など、アメリカから「非関税障壁」と避難されてきた項目が列挙されています。
同時に、TPPとは直接接触のない、財界が新たな儲けの場を広げるために一貫して要求してきた分野もかなり含まれています。
TPP参加に「先行」するこのような国内体制作りは、橋本内閣や小泉内閣が推進した弱肉強食の「構造改革」路線をいっそう徹底するものです。
財界がTPPを声高に迫る狙いは、アジア太平洋地域での利益拡大と共に、TPPをテコに、かねてから主張してきた国内の「構造改革」を一挙に推進しようとすることにあります。
「日米同盟」の一環
前原誠司外相は1月の訪米の際、TPP参加を「日米関係強化の一環」と発言。日本経団連の米倉会長も1月21日、「日本にとって最も重要な同盟国であることから、米国が加盟するTPPに日本も参加すべきである」と述べています。
2009年の総選挙で民主党の菅直人代表代行(当時)は、「米など重要な品目の関税を引き下げ・撤廃するとの考えを採るつもりはない」と言明しました。
行き過ぎた市場原理主義の転換をも訴えました。
その政権公約を捨てて菅政権がTPPに突き進むのは、日米同盟最優先で、アジアに進出したいアメリカとその補完役を買って出た財界に忠誠を誓い、その忠実な執行者になってしまっているからです。
つづく(? この記事の翌日、震災が起きたため、中断した模様・・・)
(日本共産党 国民運動委員会・橋本正一)