91歳で現役、若い者にはまだまだ負けない
「青春とは心の様相を言うのだ」
「役者に年なし」
役者というものは、どんな年齢の役でも巧みに演じるものであり、またできなければいい役者とはいえない。
役者は年齢とともに芸に磨きがかかるため、老いを感じさせず、常に若々しい。
がまの油売り口上の19代名人の演技は、人間にとって「生きる」とは、単に「存在する」ことでなく、「よく存在する」ことの大切さを教えてくれる。
漫然と生を貪るのは、人間らしい生き方ではない。
自己啓発などにより自分自身を向上させ、存在価値を高めていくことが大切であると、演技を通して後輩に語りかけているようである。
また、がまの油売り口上でも、他の芸能でも同じであるが、他人を感動させようとするならば、まず自分が感動せねばならない。そうでなければ、いかに巧みな演技といえども、「心」や「魂」を感じさせない。
名人の演技には、軽薄さは無い。ゲラゲラ笑いを誘うこともない。
「心が大切である」と語りかけている。
第19代名人は今年91歳であるが、がまの油売り口上を演技しているときは元気一杯、年を感じさせない。
サミュエル・ウルマンの詩「青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言う。」がぴったり当てはまる人である。
保存会の総会で口上を演ずる19代名人
(2013年6月15日)
人は信念と共に若く
人は自信と共に若く
希望ある限り若く
青 春
〈サミュエル・ウルマン作/岡田義夫訳〉
青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯儒(きょうだ)を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こう言う様相を青春というのだ。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。
歳月は皮膚のしわを増すが情熱を失う時に精神はしぼむ。
苦悶や、狐疑や、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰も長年月の如く人を老いさせ、精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。
年は70であろうと、16であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。
日く 驚異への愛慕心、空にきらめく星辰(せいしん)、その輝きにも似たる事物や思想に対する欽仰(きんぎょう)、事に処する剛毅な挑戦、小児の如く求めて止まぬ探究心、人生への歓喜と興味。
人は信念と共に若く疑惑と共に老ゆる。
人は自信と共に若く恐怖と共に老ゆる。
希望ある限り若く失望と共に老い朽ちる。
大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして偉力の霊感を受ける限り人の若さは失われない。
これらの霊感が絶え、悲歎の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至ればこの時にこそ人は全くに老いて神の憐みを乞うる他はなくなる。
宮澤次郎著「『青春』の詩」三笠書房
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