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映画批評etc

映画の感想ではなく批評
その他諸々

シャイニング

2008年12月11日 | 映画(サ行)
★1980年公開

★キャスト
ジャック・ニコルソン
シェリー・デュヴァル
ダニー・ロイド

★スタッフ
監督 スタンリー・キューブリック
原作 スティーヴン・キング
脚本 スタンリー・キューブリック
音楽 ウェンディ・カーロス

★あらすじ
ジャックは失業中で作家志望の男である。彼はコロラド山中に建つ豪華ホテルで冬季休業中の管理人となり、妻子と共に移り住む。雪に閉ざされたホテルの中で三人だけの生活を送る内に、ジャックは次第に異常をきたす。「シャイニング」と呼ばれる超能力を持つ幼い息子ダニーは、ホテルの忌まわしい過去とやがて訪れる危機を感知する。そして同様にシャイニングを持つホテルの料理長にテレパシーで助けを求めるが…。

★寸評
原作スティーブン・キング、監督スタンリー・キューブリックという水と油のような二人の取り合わせである。

結論から言えば、まぁまぁである。
キューブリックのファンであっても許せないような作品ではない。

キューブリック監督作品の中では、映像なり台詞なり世界観にユニークさが少ない。
現代のありふれた空間を舞台に設定している故に、当然である。
しかしながら、それをただ普通に見せているわけでもなく、それなりに美しく撮ってはいる。
恐らく、現代の若い監督が撮ったらエフェクト沢山盛り込んでスタイリッシュに撮りたがるような素材だろう。
そんな場面も、キューブリックは重々しく撮っている。
逆になるほどなぁと感心させられる。

演技について。
ニコルソンの演技は既にこの時代に完成していると言える。
曰く、うるさい演技である。
癖丸出しというか、顔芸全開というか。
アル・パチーノにも言えることだろうが、この時代の役者は個性が強く、自分で自分を演じているかのような、個性がある。
台詞にしても、動きにしてもキレがあり、個性というモノが何かを教えてくれる。
ただ、二枚目でもナンでもないので、嫌いな人は嫌いだろう。
そして、時折あまりにも過剰演技なので、笑ってしまう場面も多々ある。

子役の男の子。
カワイイ。
しかも巧い。
今は何をしているのか全く不明。

女房役。
顔が怖い。
幽霊顔。
ホラーにありがちな無駄な美人ではない。

総論。
グロテスクなスプラッタ描写殆どナシで、恐怖を演出するキューブリックの手法に感心した。
殆どは音響だったりするけど。
欧米人にとっては、日本人よりもっと恐怖が伝わりやすい映画だろう。
ホテルのセットが非常に西洋的日常なので。

シベリヤ超特急

2008年12月11日 | 映画(サ行)
★1996年公開

★キャスト
水野晴郎
かたせ梨乃
菊地孝典

★スタッフ
監督 水野晴郎
原作 水野晴郎
脚本 水野晴郎
作詞 水野晴郎 「シベリア超特急」
撮影 安藤庄平
製作 水野晴郎

★あらすじ
第二次世界大戦開戦前夜。ヒットラーとの会談を終えた山下奉文陸軍大将は、帰国途中に乗ったシベリア超特急で、謎の連続殺人事件に遭遇する。10人の乗客は次々に減っていく・・・はたして犯人は?

★寸評
日本の映画史上に残る作品かもしれない。
あらすじなんかどうでもいい。
マイク水野が全てである。

鑑賞方法を誤るととんでもないことになる。
間違っても普通のカップルで観て楽しい作品ではない。
女性が退屈する可能性は極めて高い。

正しい見方は、男同士数名でどうにもならないくらいにやることがない夜に観る作品である。
観ながら鋭くツッコミを入れていくと、爆笑出来る。
映画が天然でボケまくってくるので、非常にツッコむのは忙しい。
そして、ボケのスタイルも実に多様なので、一本調子のツッコミではダレる。
最後までボケ倒すので、エンドロールまで気を抜けない。

従って、酒は鑑賞後の方がいい。
普通に眠くなるし、疲れる。
どうでもよくなってくる。

ある意味では集中を要する作品である。
ツッコミ体質の人間と観ると、笑いすぎて腹筋を痛める可能性すらある。
が、普通のカップルが観るとこの90分は無駄な時間でしかない。

ジム・キャリーはMr.ダマー

2008年12月11日 | 映画(サ行)
★1994年公開

★キャスト
ジム・キャリー
ジェフ・ダニエルス
ローレン・ホリー

★スタッフ
監督 ピーター・ファレリー
   ボビー・ファレリー
脚本 ファレリー兄弟
音楽 トッド・ラングレン

★あらすじ
ハリーはバカ(dumb)である。その親友ロイドはもっとバカ(dumber)である。ロイドはハリーとペットショップ(ミミズ専門の)を開くためにリムジンの運転手のバイトをしている。ある日、ロイドは大金持ちの美人令嬢を空港に送り、一目惚れする。そして彼女が空港にブリーフケースを「置き忘れた」のを目撃する。彼女の行き先はスキー・リゾート地アスペン。ロイドとハリーは忘れ物を届けようと車でアスペンに向かう。しかしそのブリーフケースには…。脚本・監督はあのファレリー兄弟。下ネタ、危ないネタ炸裂の超くだらない爆笑映画。

★寸評
実に素晴らしいお笑い映画である。
腹を抱えて笑える映画である。

ジム・キャリーの銀河系クラスの顔芸。
ファレリー兄弟の台本。
ポップなBGM。
どれも最強クラスのエンターテインメントである。

ネタは基本的に、天然と顔芸と動きの笑いである。
だから、国籍や言葉、文化の違いで笑えないということはない。
下ネタは多少はあるが、ファレリー兄弟にしては少ない。
その後の「メリーに首ったけ」の方が下ネタはキツイ。
この程度の下ネタで笑えないのなら、ウブ過ぎる。処女童貞である。
私の地元のビデオ屋では「家族で楽しめるコーナー」に置いてあった。

逆にこの映画で笑えない人は、映画ではコメディを避け、シリアスなものだけ観てしかつめらしい顔してればいい。

普通のセンスをしていれば、この作品は笑えるはず。

この作品の直後にノリタケさんはジムキャリーの髪型をパクったが、この前髪がその後の芸人の髪型のスタンダードになった。

芸人はこの作品を見て、髪型だけではなく芸を見習って欲しい。

saw

2008年12月11日 | 映画(サ行)
★2004年公開

★cast/staff
監督・原案:ジェームズ・ワン
原案・脚本・出演:リー・ワネル
出演:ケアリー・エルウェズ
   ダニー・グローヴァー
   モニカ・ポッター
   マイケル・エマーソン
   ケン・リョン

★シナリオ
目が覚めると、長方形の密室。部屋の中央には自殺した死体。対角線上に足を鎖で繋がれた二人。犯人から突如として始められたゲーム。「君たちは死につつある」「6時までに相手を殺すか、自分が死ぬか」。与えられたのは、テープレコーダー、一発の弾、タバコ2本、着信専用携帯電話、2本のノコギリ。二人は犯人が部屋に残したヒントを手掛かりに脱出しなくてはならない。
回想と謎解きを交え、結末を迎える作品。


★寸評
ビジュアルは、マリリン・マンソンのPVなどと似た雰囲気。
グロテスクな描写はかなり多い。
ラストのどんでん返しは鮮やかである。

ホラーやスリラーに付き物の文化的背景の違いは多少感じる。
スリルある遣り取りは確かにあるが、西洋文化の素養の少ない人間にとっては、犯人の台詞にある意図などはあまり理解出来ない。
ただの精神異常者にしては思考が論理的である。
エンターテインメントだけを追求した作品であれば、謎解き以外の部分の描写が念入りである。
特に回想部分。

スカッとしない部分はあるとはいえ、心理劇として観れば非常に好くできている。


ところで、映画を観るときに思うのは、作り手側がシナリオ作りに凝るあまり最初に作りたかったテーマを見失ってることがある。

この作品にもそういう部分は若干感じる。
少ない方ではあるが。

作り手は「観客は馬鹿だから、ここは書いておかないと」と思うことによって冗長なシーンを増やさざるを得ないのである。

「もう分かってるから、はやくそちっちを進めろよ」と思う瞬間である。

しかしながら、この作品は好きな人向けに作ってあるせいか、過不足は少なく、丁度好い方である。

躊躇せずに書くが、私は最初っから犯人は「コイツ」だと思っていた。
(理由はドラマの「LOST」のキャストとキャラがかぶってるからである。いかにもな雰囲気で出てきてるこの役者も大したことない。もっとしっかり騙して頂きたい。少なくとも髪型くらいは変えるとか役作りの上での工夫が無い)
それと、多分、中央に置かれた自殺死体は最後に何かの役割がないと、単なる小道具か舞台美術に過ぎないな、もしそうなら、この作り手は多少変態的なホラーマニアなだけだなと思っていた。

だから、反対にラストはある程度納得した。

けど、読めなかった人は逆に笑っちゃうくらい驚くだろう。
だから台詞は日本人向けには

「そーです。私が変なオジサンです」

で見事オチ。

シティオブゴッド

2008年12月11日 | 映画(サ行)
監督   フェルナンド・メイレレス
キャスト アレクサンドル・ロドリゲス
     レアンドロ・フィルミノ
     ダグラス・シルヴァ
     セウ・ジョルジ
     アリス・ブラガ
     パウロ・リンス
原作   パウロ・リンス
脚本   ブラウリオ・マントヴァーニ

寸評
ストーリーを追うとどうってことないだろう。青春サスペンスとでも言うべきか。
この映画は撮り方が素晴らしい。
カッコいい絵を様々な手法で見せてくれる。
しかも撮ってる絵自身はどうってことない日常の風景である。
これは発想が素晴らしい証拠である。

日常からかけ離れた世界の映像を見せるのは実に骨の折れる作業だ。
金も掛かる。
が、この監督は極めて日常的な風景をスタイリッシュに見せている。
大して金も掛けてないだろう。
制作費は330万ドル。
この額でこの作品を作れるとは驚異である。

演技に関して。
演出が優れているので気にならない。
なにしろ全員素人である。
演技自体が初めての役者ばかりである。
これも驚異である。
しかし、これは仕掛けがある。
どうやらアドリブが主体とのことだ。
日常的に使っている言葉を中心に喋ればリラックスして喋れるし、それほど役に近づく努力も必要ない。
なるほどと思う。
監督の慧眼である。

あらすじに関して。
リオデジャネイロの惨憺たる有様が淡々と描かれている。
実に悲惨である。
子供が無邪気に笑いながら殺しをやる。
大人が子供に命令して子供を撃ち殺す。
なんともやり切れない場面を淡々と描写している。
それなりにショッキングである。

しかしこの映画には暗さがない。
このテーマを暗く描くと本当に最悪である。
本作の空気をカラりとさせているのは音楽であろう。
サンバや70年代ディスコクラシックスが、シーンを極彩色に塗り固め、空気を明るく軽くしている。

しかし恐れ入った。
ブラジル映画と飲んで掛かっていたが、才能溢れる監督はいるものである。