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映画批評etc

映画の感想ではなく批評
その他諸々

明日の記憶

2008年12月11日 | 映画(ア行)
★キャスト
渡辺謙
樋口可南子
吹石一恵
大滝秀治
及川光博
香川照之
渡辺えり子
坂口憲二
木梨憲武

★スタッフ
監督 堤幸彦
原作 荻原浩 「明日の記憶」
脚本 三浦有為子 砂本量
プロデューサー 渡辺謙

★あらすじ
大手広告代理店で働く佐伯は、取引先や部下からの信頼も厚い、現役バリバリの宣伝企画部長。精力的に仕事をこなす彼だが、最近、物忘れが激しい。「あの、えーと、なんだっけ、あの、メガネの…」異変に気づきながらも、彼は仕事に励むのだが…。不治の病・若年性アルツハイマー病に侵されていく、ある働き盛りのサラリーマンと、そんな夫を支え続ける妻の感動のドラマ。萩原浩・原作のベストセラー小説の映画化。

★寸評
重い病気を患った事がある人や周囲にいた人、健康でずっときた人との間で評価が細かく分かれるだろう映画です。
私は前者です。
そして、非常に感情移入しました。
不幸にも病気に遭った人で「こんなもんじゃない」って怒る人もいるでしょうが、患者それぞれによって状況は違うはずです。
私は主人公の心理の描写、会社や家族との関わり、それぞれのクライマックスで全て心を強く動かされました。
そして、映画にラストがきても病気にはラストはなく、現実は厳しく横たわっている事実という描き方にも共感しました。

そしてなにより、メインキャストの熱演は素晴らしいです。
渡辺謙さんはもとより、他のキャストも全員素晴らしいです。

批判めいた意見を言う事が実に難しい映画で、正直参ります。

脚本の甘さだとか、現実はこんなもんじゃないとか、娘との関係が希薄とか、散見致しましたが、全てお門違いな批判です。

真正面からこの映画の言わんとしている事を受け止めれば、そういう批判は出てこないはず。

この映画は主人公のキャラに起こる病気を描いている訳です。

だから、架空の出来事というよりも、近い将来、自分に起こりうる自体を描いていると考えるべきです。
病気は誰にでも起こることです。
それも荒唐無稽な病気や奇病でもなく、非常に身近な病気のことです。
周囲にもあるだろうし、自分にも起こる。

だからその上で、今の健康に対する感謝を持つ。

これがこの映画を観る上で当然持つであろう姿勢だと思います。

8mile

2008年12月11日 | 映画(ア行)
★2002年公開

★キャスト
エミネム
キム・ベイシンガー
メキー・ファイファー
ブリタニー・マーフィ
オマー・ベンソン・ミラー

★スタッフ
監督 カーティス・ハンソン
音楽  エミネム
主題歌 エミネム "Lose Yourself"

★あらすじ
デトロイトのヒップホップ・クラブで、毎週末に行われるラップ・バトル。白人のラビット(エミネム)は、その才能を発揮できずにいた。現在バトルを制する「フリーワールド」は、ラビットを目の敵にしている。ある日ラビットは、モデル志望のアレックス(ブリタニー・マーフィ)と出会い、恋に落ちた。だが、甘い時は長くは続かない。

★寸評
Hiphopをテーマにした作品。
カリスマであるエミネムを起用したのはいい。
が、エミネムのプロモーションヴィデオと化してしまった感がある。
貧乏、家庭の不仲、仲間との不和などが現代的な不健康さの中で、描かれる。
これを青春映画などとジャンル分けするべきではない。
実に不健康な現状である。

彼の母親は醜く下品。
仲間は馬鹿とかデブ。
恋人はビッチ。

それらの災難を乗越えてクラブでのフリースタイルバトルにぶつける。
結局、何も解決しない。
にも関わらずメデタシメデタシ的な雰囲気になっている。
憂鬱な現実を見せられても憂鬱になるだけである。

この手の不健康さがエンターテインメントとして成立しているんだろうか。
想定している対象年齢が10代から20代前半なんだろう。
自分が何者でどこに行こうとしているのか、ぶつける場のないエネルギー、鬱屈したエネルギーの爆発、などのテーマは、その昔Nirvanaのカート・コバーンのそれのようなものなんだろう。
その当時はリアルタイムに共感した。
が、それも既に10年以上前。
そこからそろそろ新しい提案をして欲しいと思ったが、一歩も前には行ってない。
それがアメリカの現状という事なのかもしれない。

俺は、君のためにこそ死ににいく

2008年12月11日 | 映画(ア行)
2006年公開

監督 新城卓
キャスト
岸恵子
徳重聡
窪塚洋介
筒井道隆

あらすじ
昭和19年秋。太平洋戦争で不利な戦況の日本軍は、最後の手段として特別攻撃隊を編成。鹿児島県の知覧飛行場はその特攻基地となった。軍指定の食堂を構え、飛行兵たちから慕われていた鳥濱トメは、別れを幾度も経験する。やがて終戦を迎えた日本で、特攻隊員の生き残りと遺族は思いがけない過酷な試練を経験する事になる。

寸評
例の如く、映画は映画として講評する。
歴史考証の細かい違いや、認識に関する差異、イデオロギーに関する論議には与しない。
映画そのものの良し悪しに絞って議論する。

誠に散漫な映画である。
資料的な価値も無い。
戦争を賛美もしていない。
特攻を賛美しているわけでもない。

主役は鳥浜トメさんという、実在の特攻の母である。
この方の生き様を通してこの時代や特攻隊を見ていくって事だと思っていたら、そうでもない。

具体的には、バラバラのオムニバスを溶接したような荒さがある。
確かに、一つ一つのストーリーは、話が話だけに心に迫るものはある。
それは同じ日本人としての共感であり、映画に対する共感ではない。
これはアメリカ人にとってのベトナムの敗戦に関する暗い記憶のようなものだろう。

言ってみれば、特攻隊という題材におんぶに抱っこの映画である。
イデオロギー云々が無ければそれほど注目に値する映画でもないし、面白い映画でもない。
同じ様なテーマでもっと重いメッセージを伝える映画はある。

反戦というテーマであれば、「硫黄島からの手紙」が勝っている。
日本の軍人を描くことにかけても、アメリカ人に負けているとは実に皮肉である。

オーメン

2008年12月11日 | 映画(ア行)
監督  リチャード・ドナー
製作  ハーヴェイ・バーンハード
脚本  デヴィッド・セルツァー
出演者 グレゴリー・ペック
    ハーヴェイ・スティーヴンス
音楽  ジェリー・ゴールドスミス
撮影  ギルバート・テイラー
公開  1976年


寸評
ホラーの元祖であると言われるが、その実はサイコロジカルスリラーの類であろう。
スプラッターな要素は少なく、心理劇的な描写が多い。

キリスト教的な素養の少ない日本人にはこの映画の本当の怖さは判らないのかもしれない。
風景や舞台設定は、我々からはあまりにも遠い西洋的な風景であり、キレイとは感じつつも、自分の日常とのオーバーラップは感じられない。
基本は心理劇ゆえに、ここが日本人には痛いところだろう。

ただ、怖いか怖くないかがこの映画の評価の分かれ目ではない。
実に丹念に作られた作品であり、本作にインスパイアされたフォロワーも多数いるに違いない。

この手の映画の先駆けである点、実に意義深いものだが、現在の目線にも耐えうる点はやはり音楽だろう。
シーンの怖さを決定付けている音楽は、SE含め時に美しく時に不快である。

ところで中年になったグレゴリーペックは山崎努に見えて仕方ない。
巧い役者ではないが、おっさんでもセクシーなのは見事。


技術だけではなく、アイデアと情熱に溢れた作品である。