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映画批評etc

映画の感想ではなく批評
その他諸々

ダンサー・イン・ザ・ダーク(デンマーク)

2008年12月11日 | 映画(タ行)
★2000年公開

★キャスト
ビョーク
デヴィッド・モース
ピーター・ストーメア
カトリーヌ・ドヌーヴ

★スタッフ
監督    ラース・フォン・トリアー
製作総指揮 ペーター・オールベック・ヤンセン
製作    ヴィベク・ウィンドレフ
脚本    ラース・フォン・トリアー
音楽   ビョ-ク

★あらすじ
舞台はアメリカのある町。主人公のチェコからの移民セルマ(ビョーク)は一人息子と二人暮しをしていた。女工としての生活は楽しいものだったが、彼女は遺伝病のために、視力が失われつつあり、息子もまた高額の医療費のかかる手術をしなければ失明してしまうことになるのだった。ある日、工場でおかした失態のせいで突然解雇が告げられ、さらに、自宅で蓄えていた息子の医療費が盗まれていることに気づくことになる。セルマに住む家を提供してくれていた隣人ビル(デヴィッド・モース)が妻の浪費に耐えかねて彼女の金に手を出したのだった。真相を知った彼女が彼の家を訪ねていくと、自暴自棄になった相手を殺してしまう。彼女は逮捕されるが・・・。

★背景
2000年の第53回カンヌ国際映画祭では最高賞であるパルム・ドールを受賞し、ビョークは映画初出演にして主演女優賞を獲得した。音楽もビョークが担当し、特にトム・ヨーク(レディオヘッド)とデュエットした主題歌『I've seen it all』はゴールデングローブ賞およびアカデミー賞の歌曲部門にノミネートされるなど高く評価された。

★寸評
アンチ・ミュージカル的な姿勢らしい。
ミュージカルは私は嫌いではない。
ただし、インド映画にあるような馬鹿馬鹿しさは欲しくて、第三者的な引いた目でしか楽しんではいません。
しかしこの作品は歌とダンスのシーンは映画から遊離せずに巧く見せてくれます。
だから、気にはならない。
同じ手法を北野武の「座頭市」でも観ましたが、ちょっと違いますけど。
この作品で、歌とダンスのせいでツマラン、と思うんであれば、今後、映画を観る際にミュージカル作品じゃない事を厳しくチェックすることをお勧めします。

私が言いたいのは、この作品の真価が問われるのは歌とダンスではなく、メインのストーリーです。
このラスト、子供が見たらトラウマでしょう。

曰く、救いがたいと。
でもそうでもない気がする。
彼女は一種の狂人ですから、望む終幕を得ているように私には見えました。
生死観に関する考えが浅い人は色々突っ込みたくなるんですかね。
生きてりゃなんとかなる、みたいな。
この人は多分どうにもならない感じだから、これでいい気がします。
従って、美しいラストに思えました。


そして独特の撮影手法。

幻想と現実が交錯し、あたかも浮遊しているような錯覚を覚えます。
これらジャンプカットという手法で、最低限のストーリーの繋がりを残しておいて、それ以外をカットしてしまうという撮り方です。
加えて、ハンディカメラによる手ブレを取り入れ、主人公の視点を特徴的に捉えています。
別に目新しいとは思いませんが。
酔いやすい人は、はなれて観たほうがいいです。


さて、演技ですが、ビョークはセンスの塊のような人間ですから、この位はやるだろうと思っていましたが、さすがです。
歌のシーンでの弾けるような躍動感と、現実のシーンでの凛とした佇まいはすばらしいです。
小劇場系の役者なんかは見習った方がいい。
他の役者はまぁどうということはないです。

というわけで、賛否がはっきり分かれる映画です。
これほど分かれる映画もないかと思います。
が、私はなかなか考えられた好作品と思いました。

ただ、君を愛してる

2008年12月11日 | 映画(タ行)
★2006年公開

★キャスト
玉木宏
宮あおい
黒木メイサ
小出恵介

★スタッフ
監督 新城毅彦
製作 樫野孝人
主題歌 「恋愛写真」大塚愛

★あらすじ
大学の入学式の日、誠人は幼い容姿の個性的な女の子、静流と出会う。自分が薬臭いという思い込みのコンプレックスのために、人とうまく付き合えない誠人だったが、彼女とは自然に打ち解ける。
静流も、誠人といつもいっしょにいたい気持ちから、カメラを手にするようになる。
そんな二人は毎日のように森へ写真撮影に出掛けていく。しかし、誠人は同級生のみゆきに想いを寄せていた。
いつも一緒にいるのに静流のことは女の子として見ていない誠人。誠人のために静流は大人の女性になろうと決心する。

★寸評
私は劇中の教会で結婚式を挙げたりします。
だから、画面に出てきた時は「ぐぉ」と興奮気味の馬みたいな声を出してしまいました。

さて、宮崎あおいについて。
演技は下手ウマってところでしょうか。
現代的な可愛い女の子を演じるには十分なルックスです。
眼鏡を外して息を呑むのには説得力があるといえるでしょう。

んで、彼女、病気なんですよね。
かなり訳の分からない奇病。
ラストの鍵になる奇病です。
そこの説明が薄いためにラスト付近はバタバタした印象を受けました。
かなり納得のいかない、リアリティの欠けた説明を滔々と。
それも台詞で説明させているんです。
しかもメインキャストの中で一番台詞の読み方に難のある黒木メイサが語るのもドンドン冷めていく。

台詞で説明するんであれば、それまでのシーンの中に色々な伏線を仕込んで「なるほど」と思わせて欲しかったですね。
そもそも台詞で説明するには無理のある設定でしょう。

ここら辺にこの映画の評価の分れ目がある気がします。
気になったら冷め、気にならなければ惹きこまれる。

なにしろ前半部はどーってことない恋愛群像劇なので。
でも、それはそれでいいんです。
誰しもあの手の恋愛模様は記憶の中にあるか、妄想の中に在るものなので、共感は得やすいでしょう。
あんなんねーよっていうのは、少しひねくれ過ぎ。
だったらそもそもパッケージを手にした時点で観る作品のチョイスを間違ってます。


こんな恋愛が昔あればよかったのになぁと思えるか、こんな恋愛がしたいーと思えれば、成功なんじゃないでしょうか。

私はラブストーリーは大好きですが、後半の展開のバタバタぶりに涙できず、
「ないなぁ」
と嘆息してしまいました。