人生には予期せぬことが起こるものだが、誰も予想できないことが突如として幸運な巡り会わせで起きて、周りが興奮しワールドレベルでブレイクする瞬間があるものなんだ。こんなことはNBA史上においても、記録上においても超珍しい出来事だったみたいだ。
まず、現地時間2月4日のネッツ戦から11日のウルブズ戦までの5ゲーム、リンの個人成績を振り返ってみる。
<ニックスH.C.マイク・ダントーニ>
ネッツ戦 92-99 ニックス(9勝15敗) Benchスタート36分 25得点 FG:10/19 3Pt:0/4 7Ast
ジャズ戦 88-99 ニックス(10勝15敗) NBA初スタメン45分 28得点 FG:10/17 3Pt:1/3 8Ast
ウィザーズ戦 93-107 ニックス(11勝15敗) スタメン36分 23得点 FG:9/14 3Pt:0/3 10Ast
レイカーズ戦 85-92 ニックス(12勝15敗) スタメン39分 38得点 FG:13/23 3Pt:2/4 7Ast
ウルブズ戦 98-100 ニックス(13勝15敗) スタメン39分 20得点 FG:8/24 3Pt:0/3 8Ast
(平均) 39分出場 26.8得点 FG:50/97(52%) 3Pt:3/17 8Ast
この5試合の個人スタッツ見ただけでどれだけ飛びぬけた結果残したかよくわかる。NBA現30チームのスターターPGでどこか5ゲーム連続のアベレージを取り上げても、これほどの数字はなかなかでない。まさしくトップレベルの個人スタッツだ。
お家の事情ということが作用してることもある。本来得点力あるオールスター級のカーメロやアマレが不在であり、故障者が多く8人で戦わざるを得ないチーム事情がリンを出ざるを得ない状況を作ってくれた。また、開幕からPGらしい仕事の出来る選手をチームとして作れず、ご承知通りの不安定なゲーム運びになっていた。
『NBA日本語ニュース』が初スタメンとなったジャズ戦からニックスの快進撃をうまく捕らえている。
『PG不足が最大の弱点だったニューヨーク・ニックスだが、ようやく問題解消の鍵となれるかもしれない選手を探し当てた。現地時間6日(月)にホームでユタ・ジャズと対戦したニックスは、キャリア初の先発出場を果たしたジェレミー・リンが、キャリアハイとなる28得点、8アシストを記録し、ニックスが99-88で勝利した。
ニックスはアマレ・スターダマイヤーが家族の不幸で欠場。そして、試合開始直後にカーメロ・アンソニーがそけい部の負傷で退場するなど、早々に1試合平均42得点を決めているスーパーデュオを失うことに。しかし、NBA史上初となるアジア系2世選手であるリンがチームを牽引。そしてスティーブ・ノバックもシーズンベストの19得点を記録。ニックスは、リンが第4Q残り1分58秒にショットクロックと同時に放った3Pを決め、95-86とリードを広げて勝利した。
4日(土)のニュージャージー・ネッツ戦でも25得点を記録したリンは、「バスケットボールは難しい状況にいる時ほど楽しい。チームが一丸となって困難に立ち向かう時ほどね。主力が何人かいなかったけれど、このチームには勝ちたいと願う選手が多く揃っているから」と、笑顔を見せた。
ノバックは、「これがNBAの試合だよ。たとえ先発が何人かいなくても、コート上にいる5人であれば、どんな5人と対峙しても勝つ可能性がある。本来であれば、主力が抜けたチームは厳しい状況に追い込まれるし、負けることも多い。でも今日は全員がチームをプッシュして勝利出来た」と、興奮した様子で語った。
マイク・ダントーニHCは、「(リンのPG起用は)上手くいくかもしれない。非常に良いプレイだった」と、リンを称えた。
一方のジャズは、オールスター選手2名が抜けたことで、アドバンテージがあると思ったかもしれない。しかし、タイロン・コービンHCが試合後に語ったように、気の緩みが敗因になったと言える。
「相手の実力を軽視するとこういう結果になる。彼らはNBA選手で、プライドもある。それに実力のある選手ばかりだ。チャンスがあれば、何が何でも生かそうとする選手なんだ」、アル・ジェファーソンは、「自分達で招いた結果。彼らもプロで、スター選手がいてもいなくても関係ない。相手は非常にリズムに乗っていたし、ショットを何本も決められてしまったよ」と、敗因を分析した。』
『この1週間は、ハーバード大出身のジェレミー・リンにとって最高の週となった。ニューヨークで行われた前の2試合で先発し、それぞれ25得点、28得点を挙げてニックスを勝利に導いたリンが、現地時間8日、ロードのワシントン・ウィザーズ戦でも23得点、10アシストを記録。107-93でニューヨーク・ニックスの勝利に導いた。NBAのニュースターとなり、鮮烈なプレイを続けるリンは、ホームとアウェイ両方でファンのお気に入りとなり、わずか5日間で6万人以上のツイッターフォロワーを獲得した。この試合では第3Q終盤、ニックスが4点リードした場面で、リーはリーグ入りして初となるダンクを披露。3人のディフェンダーを抜き去ったリンは、リング下でフリーとなり、右手で豪快なダンクを叩き込んだ。
「一瞬のうちに起ったことのひとつだ。向こうはカバーで混乱したんだと思う。だから自分がフリーになった」と、リンは説明した。 リーの奮起でホーム2連勝を飾ったニックスは、今度は敵地のファンの前でプレイしなくてはいけなかった。だがウィザーズのホームのファンは、選手紹介の際に誰よりもリーを歓迎。台湾の旗を振り、リーを称えるボードを掲げるファンも見られた。試合が終了しても、コートから下がるリンに対して、名前を呼び続けた。
「この前の試合後にも話したが、このようなことは想像もしていなかった。ニックスを応援してくれるファンのおかげで、我々は多くのエネルギーをもらえた」と、笑顔を見せるリン。
リンは2010年にドラフト外でリーグ入りし、ルーキーシーズンはゴールデンステイト・ウォリアーズでプレイしていた。カーメロ・アンソニーが右そけい部損傷で1-2週間離脱、アマレ・スターダマイヤーも兄弟の死で不在の中、ニックスはこの試合でリンの得点力を絶対的に必要としたが、リンは見事にその期待に応えた。ニックスでは他に、タイソン・チャンドラーが25得点、11リバウンド、スティーブ・ノバックが19得点を記録。対ウィザーズ戦8連勝を飾り、今シーズン2度目の3連勝を飾った。』
『つい1週間前までは控えの控えとして見られていたジェレミー・リンは今、アジア系選手の希望として、NBAで着実に成功への階段を昇っている。現地時間10日(金)のロサンゼルス・レイカーズ対ニューヨーク・ニックス戦は、リンが今季のチームハイであり、自身のキャリアハイともなる38得点をマークし、ニックスが92-85で勝利した。
初先発で28得点、そして続けてスターターとして出場した試合でも23得点を記録したリンは、2003年にレブロン・ジェイムス(マイアミ・ヒート)が達成して以来となる、初先発から2試合続けて20得点以上を記録するという偉業を達成。同記録を達成したのは、1970年以降リンを含めて僅かに6人しかいない。リンは第4Q中盤に試合の流れを大きく引き寄せる3Pを決めると、残り52秒にもフリースロー2本を確実に沈め、追い上げるレイカーズの猛攻を止めた。
ニックスはこれで今季最長となる4連勝を記録。リーは涼しげな表情のまま、「連勝を4に伸ばすことしか考えていなかった。明日も試合があるし、5連勝を狙うだけ。今はチームも勢いに乗っているからね」とコメント。
ニックスではリンの他に、イマン・シャンパートが12得点、ジャレッド・ジェフリーズが11得点を記録。カーメロ・アンソニー、そしてアマレ・スターダマイヤーが復帰していない中、リンという救世主により悪い流れを断ち切りつつある。
マイク・ダントーニHCは、「(リンは)非常によくやってくれている。今日の試合で周りが疑問に思っていたことの答えを出せたと思う。アウトサイドショットを決められるのか、大事な場面でビッグショットを決められるのかなど、彼の功績は大きい」と語った。
リンの活躍は、コート外にも影響を及ぼしている。
マディソン・スクエア・ガーデンでは、Tシャツがソールドアウト。それに加えて、アジア地域でNBAとパートナーシップを結んでいるテレビ局が、放映するニックスの試合数を急遽増やした。
この日対戦したレイカーズのコービー・ブライアントは、リンの活躍について、「凄いストーリーだと思う。諦めず一生懸命に努力をすることで成功出来るという例だよね。世界中の子供達にとって希望になる」とコメント。
好調を続けるリン、そしてニックスについて質問されると、「今をエンジョイすれば良い。来季に審判が下されるよ」と話した。
敗れたレイカーズでは、ブライアントが34得点、10リバウンド、パウ・ガソルが16得点、10リバウンドを記録。
前日ボストン・セルティックスとの延長戦に勝利したものの、疲れが抜けない状態では、勢いで勝るニックスを止める手立てが見つからなかった。
ガソルは、「38点も取らせないことは可能。俺達は彼(リン)がどれだけ活躍しようが知ったことではないよ。チームとして、相手に立ち向かっていけなかった結果だと思う。ひょっとしたら、彼のことを見下していたかもしれない。ビッグショットを決めていたし、素晴らしい選手だと思う」と、リンを高く評価した。』
<少し大げさだが、『世界を変える2人のPG』と評したニュース>
『試合後に「夢を見ているような気分」と語ったリンは、後半こそFG1本(13本中)に終わったものの、試合を通して20得点、8アシスト、6リバウンドを記録。第4Q残り4.9秒にはフリースロー1本(2本中)を沈め、接戦をものにした。
第4Q残り6分41秒の時点で7点を追っていたニックスは、リン、イマン・シャンパート、スティーブ・ノバックらを中心に反撃を開始。残り36.2秒にはノバックが98-98と同点に追いつく3Pを決め、その後リンがスピードを生かして相手からファウルをもらい、フリースローを決めた。
それに最近のスケジュールの影響で皆疲れていた。それでもチーム全員が諦めずにプレイしたおかげで勝てた。これがバスケットボールの魅力さ」とコメント。また、「明日は休みだ。待ち遠しいよ」と笑顔で続けた。
タイソン・チャンドラーは、「彼(リン)がチームの全てを変えた。試合に対する気持ちの持ち方、それに強い精神力を与えてくれたんだ。本当に信じられないくらいの活躍さ」と、リンを絶賛した。
一方のウルブズでは、ケビン・ラブが32得点、21リバウンド、ルビオが12得点、8アシストを記録したが、ホームでの接戦をものに出来なかった。終盤に2回もファウルを犯してしまったルビオは、「重大なミスを犯してしまった。この経験から学習しないと」と、唇を噛んだ。』
『14歳でプロ入りし、世界が注目したリッキー・ルビオ。NBAからドラフト指名を受け、それから2年という期間を経て、遂にミネソタ・ティンバーウルブズの一員として活躍する場を与えられた。そして今、ルビオと共に新世代のPGとして一躍注目の的となっているのは、ニューヨーク・ニックスのジェレミー・リン。バーバード大出身で、台湾系アメリカ人2世であるリンは、ドラフト外でゴールデンステート・ウォリアーズに入団後、ウォリアーズそしてヒューストン・ロケッツからウェイブされ、ニックスと契約した。PG不足に悩むチーム事情、そしてマイク・ダントーニHCが思わぬ形で先発というチャンスを与えた途端、水を得た魚のように躍動。先発4試合で合計109得点を記録するという大活躍で、チームも5連勝を記録。リンの登場まで8勝15敗と低迷していたニックスは、5割復帰目前の13勝15敗にまで持ち直してきた。また、前述した初先発から4試合で109点という数字は、NBA-ABA時代を通しても最高記録。あのアレン・アイバーソン、マイケル・ジョーダン、シャキール・オニールをも上回る大記録となった。
ウルブズのケビン・ラブは、スターダムに乗る2人のPGについて、次のように形容している。
「2人とも試合をコントロールする技術に優れているし、プレイはもちろんだけれど、彼らの性格はチームを変えるだけの影響を持っていると思う。リッキーはNBAに来るまでに実績を残してきて、彼の未来は明るいものになると言われてきた。それに比べてリンは、突然現れた超新星っていう感じだよね」
両者の台頭により、今後もNBAは北米だけではなく、欧州、そして特にリンの出現によりアジアでも一層の人気を得るのではないだろうか。
リンに対する熱は増すばかりで、この1週間足らずでツイッターのフォロワー数が10,000から200,000へと激増。今ではレブロン・ジェイムスについて投稿する人数より、リンについて投稿する人数の方が増えた。そして背番号17のジャージーは、ここ8日間でリーグトップセールスを記録しているという。
リンは、「毎朝起きて、その日をエンジョイすることだけを考えている。もちろんプレイにも集中して、チームの勝利に貢献することもね。今の生活をエンジョイすることだね」と、世界から注目されているにも関わらず冷静さを失っていない。
チーム内外からもリンを称賛する声は多く、ロサンゼルス・レイカーズのメッタ・ワールドピースは、「ジェレミー・リンは皆の模範的存在。俺の息子は黒人とフィリピン人の血が入っているアジア系アメリカ人。彼には今後もがんばってもらいたい!」とツイッターで激励している。
NBA1年目からチームに順応しているルビオは、現在アシスト数でリーグ5位、そしてスティール数でも1位と、期待以上の成績を収めている。ウルブズも2004年以降初となるプレイオフ進出に向け、好位置をキープ。
代名詞になりつつあるビハインド・ザ・バック、そしてノールックパスがラブに通るたび、ルビオの人気も上昇しているようだ。そんなルビオも、リンについて高く評価している。
「僕らはチームも違うけれど、彼は本当に素晴らしいプレイをしているね。シーズン開幕時期には誰も話題にしていなかったけれど、今ではニューヨーク全体が彼のことでもちきりになっている。良いシーズンを送れると良いね」
両チームの今後を担うであろう2人の若きPG。彼らの栄光は、まだ始まったばかりだ。』
現地時間2月13日のニュースで、Player Of The Week にJ.リンとR.ウェストブルックが選出されたみたいだ。この一週間の数字を見れば当然なんだけど、2月に入りブルズ、セルティックスに競り負け「8勝15敗」となったチームが5連勝して「13勝15敗」に復活。このあと、2月のスケジュールをみるとニックスPOの目があるかもと思わせる。当分この話題は続いてもらいたい。
これからの8試合どうなるのだろうか?
エース2人が復帰?してどう噛み合うのか、H.C.とリンの腕の見せ所だ。
2月14日 VSラプターズ 15日 VSキングス 17日 VSホーネッツ 19日 VSマーベリックス
20日 VSネッツ 22日 VSホークス 23日 VSヒート 29日 VSキャバリアーズ