小児科耳学問

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喘息のパラドックス

2011年06月04日 | Weblog
 先日校医として小学校5年生の春の検診に行ってきました。対象は120名程でした。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などのアレルギー疾患罹患率は7割ほどありました。聴診上呼吸音が荒い場合も気管支喘息に含めると男子の7割ほど、女子の2割ほどが気管支喘息でした。
 喘息の自覚があり治療を受けている子供たちの聴診所見は結構良かったです。一方困ったことに聴診上エアー入りが悪く、見るからに陥没呼吸で胸郭変形のある子供が2人いましたが、喘息と言われたことも無ければ治療も受けていませんでした。このような子供たちは治療しないと大人になっても呼吸機能が子供並みに低いままで、インフルエンザに罹患すると重症化が予測されます。しかしこのような慢性化した中等症以上のケースでさえ咳をしない、安静時は息苦しがらないため保護者も本人も喘息と考えません。ピークフローメーターを吹かせて呼吸機能低下を数値で証明しても左記の理由で通院が長続きしません。
 程度の差はあれ、小学校5年生男子の大半の子供たちは気管支に慢性炎症を抱えているのでどの程度から治療を勧めるかは難しい問題です。しかし私は気管支のリモデリング化を防ぐ為には軽症から治療すべきと考えています。
 喘息の自覚があり治療を受けている子供たちの呼吸機能が良くて、自分は喘息と思っていない信じない(保護者の)子供たちの呼吸機能が悪いというパラドックスが子供たちの間で起きています。