小児科耳学問

小児診療の手の内を公開。ブログ内検索で日常診療に役立てて下さい。

感冒性胃腸炎の鑑別

2006年12月31日 | Weblog
 感冒性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルス等)との鑑別に細菌性腸炎、虫垂炎、腸重積はいつも頭の隅に置いておく必要があります。
 まず感冒性胃腸炎では嘔気、嘔吐が主要症状で、下痢、発熱をしばしば伴います。便の色が白~薄黄色になることが多く、酸っぱいような臭いも特徴的です。
 細菌性腸炎では下痢、特に血便と発熱が特徴的です。嘔気は無いか軽度です。熱が無くても血便があればO157などにも注意が必要です。焼き鳥や唐揚げを3日以内に食べていればキャンピロ、焼肉を食べていればサルモネラの可能性大です。便培養をとることは言うまでもありません。時間外の検体は雑菌の繁殖を抑えるため培地に入れて冷蔵庫に保管します。しばしば子供だけ下痢で大人は軽症のこともあり個人差があります。貝や唐揚げは火の通り具合が違うので、あっちの貝は当たりでこっちはハズレなんてことも起こり得ます。
 虫垂炎は嘔吐をしばしば伴うので、嘔吐のある場合腹部の触診は欠かせません。
 腸重積は乳幼児の疾患ですが、嘔吐と顔色不良だけの場合もしばしばあるので要注意です。ショック状態の場合は間欠的に泣くとは限りませんし、典型的な苺ゼリー状の血便が観られるのはおそらく発症後6時間以上経ってからです。

細気管支炎

2006年12月28日 | Weblog
秋から冬にかけてRSウイルスによる細気管支炎が流行します。発熱、喘鳴が特徴です。もともと喘息気味の乳幼児が罹患すると重篤になる傾向があるようです。治療には細気管支を広げる必要があります。小児喘息に吸入ステロイドが推奨される前は私も入院させてプロタノール持続吸入で治療していました。しかし吸入ステロイドが推奨されてからは入院の上アルデシンを吸入させ著効しました。最近は外来でキュバールを処方しています。キュバールで改善が不十分な時はリンデロンシロップを約7日内服させることでほとんど入院せずに済んでしまいます。

ロタウイルス

2006年12月28日 | Weblog
ノロウイルスの流行もピークを過ぎた感を受けます。マスコミで取りざたされるのは大人や老人も罹患するからでしょう。乳幼児にとって厄介なのはノロウイルスよりロタウイルスです。ノロウイルスは2日ほどで回復しますが、ロタウイルスは症状も強く下痢も1週間以上続くこともよくあります。マスコミが取り上げないのは大人は罹患しにくいためでしょう。大人でもお腹が緩くなることはよくあります。新生児室やNICUの新生児からロタウイルスが検出された経験もありますが、空調やお腹の緩い医療従事者が持ち込んでしまうのでしょう。ロタウイルスは通常冬に流行しますが、平成5年頃でしたか夏に流行し抗原検出キットが品薄になったことがありました。ウイルスは油断すると人の裏をかいて流行します。

ノロウイルス

2006年12月21日 | Weblog
ノロウイルスが猛威を振るっています。腸の中で増え嘔気、嘔吐、下痢を引き起こします。嘔吐物、下痢の処理時にもウイルスが空気感染すると言われています。ウイルスが嘔吐物や下痢の中に含まれているとなると、患者のゲップとかオナラにもウイルスがいることになります。そうなると手洗い、うがいだけでは予防し切れません。窓を開けて常時換気する必要もありそうです。

結節性紅斑

2006年12月16日 | Weblog
結節性紅斑という少しマイナーな病気があります。知ってる人はすぐ診断できますが、知らない人にはなかなか診断できません。前脛骨部、いわゆる向うズネに対称的に紅~紫色のウズラの卵のような皮疹(正確には結節)が出現します。他の部位にも結節ができることもあるそうです。結節だけなら病名を知らなくても皮膚科に対診を依頼しすぐに診断がつくかもしれません。しかし発熱、関節痛、CRP上昇などを伴うので病名を知らない皮疹を軽視し、感染症や膠原病の検査に突っ走ってしまいがちです。そうなるとなかなか診断できません。私は17年以上臨床をやっていますが3例しか見たことがありませんし、最後に診たのは平成8年頃です。特発性~基礎疾患のあるものまでありますが、基礎疾患を除外できれば消炎剤やステロイドを投与するだけで治ります。

川崎病と血液培養

2006年12月16日 | Weblog
溶連菌感染症などの細菌感染症との鑑別目的で、川崎病の治療前に血液培養を取ることは一つのセオリーです。H10年頃のことですが、紹介入院の1歳の男児、発熱、結膜充血、口唇紅潮、体幹の発疹、CRPの上昇を認め9割方川崎病と考えました。しかしセオリー通り血液培養を取り、発熱してから日数も浅かったのでフルマリン点滴を開始しました。すると翌日細菌検査室から血液から黄色ブドウ球菌が検出されたとの連絡がありました。予想外の結果でしたが細菌検査結果は動かぬ証拠ですからシンチを撮ってみました。すると更に予想外なことに仙骨に集積を認め、仙骨骨髄炎ということが判明しました。感染経路は不明ですが、黄色ブドウ球菌の毒素で結膜充血、口唇紅潮、体幹の発疹等の川崎病と紛らわしい症状が起きていたということです。患児は抗生剤を4週間点滴し治癒退院しました。川崎病疑いや熱源不明の場合は必ず血液培養を採りましょうというお話です。

ウイルス抗原検査の意義

2006年12月14日 | Weblog
ウイルス抗原検査の第一の目的は不必要な抗生剤の投与を減らすことにあります。たとえばロタウイルス抗原検査陽性なら通常は抗生剤を投与すべきではありません。インフルエンザ抗原陽性ならやはり二次感染の疑いがない限り抗生剤は投与すべきではありません。

必要水分量

2006年12月09日 | Weblog
ボストン小児病院のマニュアルに載っていますが、1日の必要水分量は最初の10kgには100ml/kgを掛け、次の10kgには50ml/kgを掛け、20kg以上には20ml/kgを掛け合計します。たとえば25kgの場合、100ml×10kg+50ml/kg×10kg+20ml/kg×5kg=1600mlとなります。基本中の基本ですが知らないと困りますのでご存知ない方は覚えておいて下さい。

下痢の評価

2006年12月09日 | Weblog
下痢便の程度の評価にクリニスティクス、クリニテストという検査があります。小児科医は知っておくべき検査だと思いますが、実のところ私も最近は実施していません。クリニスティクスは検尿テープのようなもので下痢便に直接つけて、色が変わればブドウ糖が含まれていることを示します。クリニテストは試験管に便と試薬を入れアルコールランプで煮沸し色が変われば乳糖が含まれることを示します。クリニスティクス陽性はブドウ糖吸収障害を示し低血糖が起きる可能性があります。クリニテスト陽性は乳糖不耐症を示し、乳児であればミルラクトやガランターゼの投与の適応になります。言うまでもなくクリニスティクス陽性のほうがより重症です。